第三章 イケメンは千歳の死人だけど、それでも欲しいの?
私は外出が嫌いです。
仕事なら仕方ないけど、外出や買い物は大嫌い。デパートにあるものはとても高価で、私の低い給料では買えるわけがないし、店に入ることすら怖くてできない。
何?冥府で心理カウンセラーのアルバイトをしているじゃない?副業の給料があるって?本当にお金を払ってくれたら逆に恐ろしいよ!冥府で唯一の通用貨幣は冥銭なので、冥銭でバッグを買うことができる?
しかも、私は物質的な豊かさには全く興味がない。冥府と長い間にやり取りしていると、人間はね、まじめにコツコツ着実に生きることは最も重要だ。
それでは、私が一番嫌いなことについて話しましょう。それは夜の買い物で知り合いに会った時だ。
宋昱軒の手のせいで、私の冷蔵庫は正式に廃棄された。新しい冷蔵庫を探すためデパートに出かけなければならなかった。どうして電器屋やショッピングモールではなくデパートに行くのか?ただ単に年末の忘年会で某デパートの一万元商品券が当たったから。
この点に関して、私は冥府の心理カウンセリングを担当するようになってから、冥官たちはきっと私の善行値を密かに増やしてくれるに違いないと微かに感じていた。私は正式に請け負うことになったのは大学に入って家から出た時だった。大学に入る前、たまに
彼らは間違いなく密かに手伝ってくれていた!前もって知っていたら中学生の頃から冥府のカウンセリングをやろうと思った。そうすれば、第一志望に合格して希望の学部に行けたかもしれない。残念だが、後悔先に立たず。幸いなことに今の仕事は嫌いではない。
自分の若い頃の無知を感嘆している時に、後ろから突然に声をかけられた。
「佳芬先輩」
誰かに名前を呼ばれたり、後ろから肩を叩かれたりした時は、絶対に振り向いてはいけないという都市伝説があることを知っている。しかし、元々霊視ができて、ついでに冥府の無免許心理カウンセラーのアルバイトしている人には、この伝説はまったくノンセンスだ。
それに、亡霊または冥官は私を「先輩」と呼ばない。
「あ……えっと……お名前は……」くそ、新人後輩だ!名前を早く思い出せ!失顔症の私へのいじめなの?
「
「あ、そうだ!育玟さん、今日はお休みですか?」後輩はもはや天使で、すぐに私の難しさを理解してくれた。
「私は遅番です。あとで出勤します。デパート閉店時間の前に、婚約者の誕生日プレゼントを買いに来た。彼は電気カミソリが欲しいとほのめかしたので」
ああ……私の前にイチャつかないで!眩しすぎて目が潰れそう!育玟さんが無意識に婚約指輪を回しているのを見て、その指輪にダイヤモンドがついていないのに、眩しさを防ぐためにサングラスをかけたいと思わされた。
「先輩は?」
「私は一万元の商品券を使うためにここに来ました」彼氏はおろか指輪も持っていないので、「冷蔵庫が壊れたので、ちょうど使えます」と商品券の入った封筒を見せた。
「おお、一万元があれば大分お得になりますね!」
後輩はとても明るくて物分かりが良く、この話題がますます気まずい方向になる前に手を振ってくれた。「先輩、私がその辺に行きますね!良い冷蔵庫を見つけるように!」
良い冷蔵庫を選ぶより、すべての冥官を私の激狭い家に立入禁止したほうが早い。きっと彼らは不運だから。
さて、百貨店はもうすぐ閉店だ。さっさと選んで帰ろう! 一列に並んでいる冷蔵庫を見つめ、冷蔵庫に対する需求を考え、わずか二分でどれを買うかを決めた。
この時、頭上の蛍光灯が点滅し、しばらくすると正常に戻り、私のそばにも一「人」が増えた。
「これにする?」と聞き慣れた男性の声が言った。「後ろの方がいいよ。大きいし、五千元しか違わない」
「私は一人暮らしている、そんな大きなものを買ってどうするの?それに私は背が低いから、二層がちょうどいい。あと、隣に立ちなさい。首のほうが気持ち悪いから」
宋昱軒は冥官であり、本質的に幽鬼なので、彼が私に話しかけると、首の後ろが冷たい空気に吹かれる。宋昱軒も私の命令口調に慣れていて、私の視界の端に移動した。でも、私は彼を「見」ながら喋ってはいけない。そうしないと、他の人は私が幻聴や幻覚を持っている精神病患者のように見えるでしょう。
「ついでにアイロンも買ったほうがいいじゃないか?佳芬の制服は全然アイロンがけをしていないよね?」ストライプのシャツを着た手が私の視界を横切り、反対側のアイロン売り場を指した。
「いいえ、私の制服は戦闘用なので、便や尿や血液などで汚れていないだけでありがたい……」
ちょっと待って、シャツ?
この時になって、私は真剣な顔で真っ直ぐに宋昱軒を上から下まで見た。
「なんでこんな格好しているの?」スーツパンツにタックインしたワイン色で飾っている黒のストライプシャツや、同じような色のスニーカーを合わせて、いつものお団子ヘアも爽やかなショートヘアに変え、一見、普通のサラリーマンに見え、じっくり見てもサラリーマンに見える。
「ここにはさまよえる亡霊が人間に嫌がらせをしていると通報があって、あいつを回収するためにきた」
私は低い声で言った。「それでもローブを着たほうがいいでしょ!普通人間の格好では役に立てる?」
「ただ単にあの亡霊の警戒心を緩めるだけだよ。冥官のローブを着ていたら彼に見られると隠れちゃうからね」宋昱軒は自然に手を挙げ、声をかけた。「すみません、これを買います」
「おい、まさか今は一般人に見える状態にしている?」
「僕は見える状態にしているから手伝ってあげるよ!感謝しなくていい」宋昱軒は何事もなかったかのように言った。「とうぜ手を挙げても店員さんが見えないだろ」
確かに二列の冷蔵庫に挟まれて一五〇センチは不利だが……背が低い事実を思い出させなくてもいい!
「お客様は……」
「あとは彼女に任せます」宋昱軒はこう言い残して冷蔵庫の売り場から出て行った。
幸い、店員さんは余計な質問や横目もせず、カウンターに連れて行ってもらい会計と配達日の予約を済ませて買い物が終わった。
「先輩、もう買い物終わりましたか?」
楊育玟は再び隣に現れ、親しげな笑みを浮かべた。紙袋を手に持ち、買い物を終えたようだった。
「ええ、私は買い物が速いですよ」
「そういえば、さっき隣に黒色のシャツを着ている男性がいましたよね、あの人は誰ですか?横顔しか見てなかったけど、横顔もめっちゃイケメンですね!」
後輩にそう言われると、店員さんも期待したような顔でこっちを見た。
……宋昱軒!拳を握りしめ、あいつが去った方向を睨みつけた。しかし、目の前に好奇心旺盛な二人がいて、どうしようもない!
「久しぶりに会った友達です」会計を済ませ、なるべく自然にカウンターから離れ、一人だけ解決したが、もう一人面倒くさいやつは私と一緒にエスカレーターを乗った。
「本当にただの友達ですか?」
「そうですよ」この時、絶対否定しなければならない!女の噂話は世界一怖い!
楊育玟は明らかに信じていないが、仕方なく話題を変えて仕事の話について私に聞き始めた。ほっとした。オフなのに仕事の話をするのは悲しいが、彼女の注意をそらしたいため、過去数年間の経験を彼女に全部伝えて、再び現代の服を着る冥官を思い出してほしくない。
一階の化粧品売場に着くと、人を追い払うおやすみソングが流れ始めた。私たちは二人とも次の階の地下鉄駅に行くが、後ろにある下りエスカレーターに顔を向けた瞬間、強烈な腐敗したような悪臭が鼻に入り、香水のかおりが漂っているテナントの横にいるとさらに違和感が出てきた……
「楊育玟……」
「ん?誰――先輩?どうしましたか?」
どうしたって、あなたを救ったよ!振り向かないように急いで顔を押さえたんだから、背後の悪霊に脅嚇させなかったよ。
「なんか唇が少し青白く見えますけど……もしかして生理ですか?」
「いいえ……本当に白いですか?」
「結膜をちょっと見せてくださいね、動かないで。ほら、上を見て……」さっきから後ろでじろじろ見ていた悪霊を無視しようと努力していた。ボサボサの髪がさまよう亡霊たちの特徴だが、不気味な白い顔に幽かな赤みが見え、二つの眼球は突き出た。まるで私が彼を殺した犯人かのように、悪霊は怒った目つきで私を睨んだ。
これは何のさまよえる亡霊?明らかに超凶悪な怨霊だろ!宋昱軒早くに助けに来いよ!私は心の中で叫びながら、後輩の注意をそらし続けた。「うーん……少し白っぽいですね。帰ったらビタミンB群でも飲んだ方がいいと思います……」
「カン!」長剣が鞘から抜かれる音がして、私の横から黒い人影が飛び出し、真っ直ぐに怨霊へ向かって走った。ピカピカな剣が鎖骨を貫き、怨霊が二歩後退して痛みで苦痛に咆哮したが、宋昱軒の動きが止まらなかった。死人はそう簡単に鎮圧することができないので、彼は勢いよく下に斬ったが、怨霊は横に一歩移動し、折れかけの腕で宋昱軒を押し飛ばした。宋昱軒は空中できれいにひっくり返って軽く着地し、再び劍を持ち上げて悪霊を刺した。
「ん?なんか急に寒くなってきてましたね?」
当たり前だろ、たった今宋昱軒があなたの体を直接通過したよ!この反応から見ると、おそらく明日から軽い風邪を引いちゃうね。
「デパートのエアコンが寒すぎますよね?」私は何気無く適当に答えた。話が終わった時、いくつかの化粧品売場テナントの電球がちらつき、もはや破裂寸前だった。
この時、宋昱軒はまだ悪霊と戦っている。今の戦況は、悪霊が彼の首を掴み、高価な化粧品でいっぱいの陳列台に彼を激しくぶつけたというところだった。
「え?なんで落ちたんですか?」
幽鬼と悪霊の戦いは実物にほとんどダメージを与えないため、先ほど悪霊の強そうな攻撃は底部が少し安定していなかったマスカラを揺らして陳列台から落下させるだけだった。
「育玟さん、行きましょうか!」
悪霊は気づかない後輩の後ろに美しい放物線を描くように飛び出した。
「ああ、行きましょう!」
宋昱軒はグッと沈み込んで、黒影になって急いで悪霊に向かい、一息つく機会を与えなかった。
彼は多分大丈夫だろう!ただの冥府処刑人だけど、一応千年近くも冥府処刑人をやっている。しかも、亡霊は二度と死なない。
私は安心して地下鉄に乗るため下の階へ向かった。
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