第9話 悪魔と冒険者

関わり方として概ね良好。大体悪魔ってのは超常種もしくは超越者と同義とされ、この世界の事象すら変えるとされる特異点とされる。最重要危険指定対象とされるのだが、目の前のテンマと名乗った悪魔の男は害意はないどころか人間と変わらない対応をしてくれるので俺は驚いている。


悪魔とされる奴らは「七罪」の悪魔達以外は大体傲慢で我儘なわけなんだが・・・。



「ジョイナス君は嫌いなものはないかい?」


「あ、ないっす」


目の前で料理をごちそうになっている。


組み立てられたログハウスに基本的に上流階級の人間が使う風呂やら高機能なキッチン。食材はすべてA級以上の食材。


まあ簡単にいえば俺クラスの冒険者がパーティーを組んで手にいれるくらいの食材がゴロゴロあるって事をいや、目の前の男の実力は底なしというのは理解できるはずだ。


しかも昼飯に紅竜、赤竜の進化した個体のステーキが出るなんて卒倒もんだろ。



「まあ大したものではないけど、食事しながら話そうか」


「あんたこの世界の常識もってる?」


「??一応ある程度は、まあ知ってるくらいの話だけどね」


「・・・そこらへんは悪魔か」


「まあ腹が減っては何もできないじゃないか、野菜も肉も沢山あるから、じっくり食べよう、緑火、ジョイナス君に水を入れてあげて」


「わかりました、我が主よ」


「いやいや失礼かもしれませんが、ちょっとゴブリンにしたら洗練されすぎじゃないすか」


「ありがとうございます」


目の前の紳士的なゴブリンにも自分の常識に目を回しながら水を受け取る。




結論、紅竜の竜肉のステーキはすげえうまかった、身が引き締まり脂身もほどよくとけて、あとなんか色々な見た事のない野菜のスープとか白米とか色々でてすげえうまかった。


にこにこしながら嬉しそうにおかわりをしてくれるテンマさんを見ながら、俺的にはもうこの人はシロ、本来ならもっと警戒するべきなんだろうが、俺の勘では無害という感覚にシフトした。


悪魔とは生態系の頂点に君臨する絶対者の一人という認識が世の中にあるんだが、この男はなんだかんだ、同じ目線で話してくれる。


最初の出会いで信頼するのは危険かもしれないが、俺はこの悪魔は信頼していいと感じていた。



「さて、食事を終えてちょっとしたお願いがあるんだけど、大丈夫かな?


「願い事?」


俺は少し身構える。


「何、身構えなくていいよ、ただ人間の街に連れていってほしいだけだから、知識と実感というは違うからね」


「マジですか」


テンマさんの言葉に俺は少し冷や汗をかいた。

何故ならば新種の悪魔というだけで世界、とりわけこの世界の悪魔祓いの組織全体が動くわけだ。


善なる悪魔かそれとも悪たる悪魔か、悪魔を連れて歩くという事はランクオーバーに属する超常依頼に該当する。俺の一存では決められないのだ。


「何か問題でもあるのかな?僕の種族は結構問題ありそうだねえ、魔物自体を連れていくのも問題あるのかな?」


「いやテイマーという職業もいるから魔物自体は問題ないんだ、ただ悪魔という種族は、基本的に人類にとっての悪とされるのが通常だ、はじめからテンマさんみたいに友好的な悪魔ってのは希少なんだよ」


「なるほど、要は凶悪な力をもった人類においたする同族のせいで僕も警戒されてるというわけか」


「おいたレベルではなく存続レベルだけどね」


「ふむふむ、じゃあ悪いがこちらに御足労してもらうということでいいのかな?」


「まあ、多分そうなるかなあ?」


「なるほど」


そういうと同時に俺の頭に指先を触れる。


「ふむ、ごめんね、ジョイナス君、君の記憶をたどった」


「へ?」


「緑火、挨拶してくるよ、留守番頼むよ」


「了解しました」


「ほ?」


その瞬間俺とテンマさんの姿が消えた。



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