第5話 進化の技法
ゴブリンというものは本来知性が低く、自らの欲望をもって生きるだけの凶悪な魔物であるという認識ではあるが、言い換えれば繁殖力も高く鍛え方次第では役にたつ事もきっとあるだろう。
「喰らう者は他者にも能力を分け与えられるという特性もあるらしい」
自分の能力である喰らう者は原初の悪魔特有の能力で、レベルが上がる度に能力の拡張、いわゆる封印されていた力が解放されるという現象が起きるらしい。
レベル10までに得た力は経験値貯蔵と、経験値分配、そして進化促進という三つの能力が解放された。
経験値貯蔵というのは文字通り、経験を貯蔵できる能力で、今まで手に入れた経験値をすぐさま使うのではなく、任意で使えるという能力。
そして経験値分配は自らの認めたものに経験値を分け与えるというもの。
レベリングするにはもってこいだろう。
そして進化促進、こちらも自分の選択した生物にたいしての生物の進化を促せる、そんな能力。
簡単にはいうがこれはこれで破格の能力である。
「下手したら凶悪な魔物の軍隊を生み出せる可能性があるわけだからね」
そう一人呟きながら、一匹のゴブリンを無造作に捕まえてきて拘束している。
「さて君はどのくらいのレベルかな?」
そういうと捕まえてきたゴブリンのステータスを鑑定する。
ステータス
レベル10
名前なし
種族
ゴブリン
HP1000
MP200
攻撃力200
防御力300
力99
魔力9
器用さ40
抵抗力150
知力3
運10
装備
こん棒
こしみの
技能
棒術レベル2
応急処置レベル1
「まあ、基本的にはこんな感じだよね」
テンマは頷きながらゴブリンを観察しながら頷く。
「とりあえず進化させてみようか」
この世界では基本的に超常の生物でないかぎりレベル10から進化ができるような仕組みになっているというのが通説らしいし、とりあえずひたすら倒して貯蓄した経験値をゴブリンに分配することにした。
「君はこれから強くなる」
「ギャ!ギャ!!」
「ふむ、なんだかんだ君も強さに渇望してたようだね、本能で求めるか」
「ギャ!!!」
「経験の分配も終わったし、これから君を進化させるよ、名前が必要だね」
同族殺しをした自分を恨むというような感情はどうやらないようにも感じたし、煩わしいことはなさそうだと判断したテンマはまた頷きにこりと微笑む。
「渇望する、弱き獣よ・・・知性宿しさらなる深淵へと誘わん、進化せよ、魂を揺るがせて」
あえて詠唱をふまえて魔力を乗せる、これはなんてことのない気分だ。
テンマもはじめての進化を目の前に少し興奮をしていたみたいだ。
黒い光に包まれて目の前のゴブリンは変化していく。
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