第二話 名もなき悪魔の魂

創造神は語る。

かつての名もなき悪魔の話を。


巨大かつ優しい慈愛に満ちたその悪魔の話を。

魔を司り大いなる力を宿し神をも殺した偉大な悪魔の話を、

共に戦い、抜け殻となっても残る大いなる悪魔の力。



「かつての友の力を君に与えようとおもう」


「それは何故?」


目の前にある夜空の色のような黒い光を見ながら天魔は語る。

創造神はにこりと微笑む。


「それは私の世界に変革が必要だからさ、使命なんてだいそれたものは願わない、ただ、私の世界は停滞し怒りや悲しみに満ちている」


創造神は語る。


「私の祈りは私の生み出した子らの安寧を願うこと、私の部下達の生み出した世界を尊ぶこと、神は神の事柄でしか物事をできない」


「巨大な力過ぎるから?」


「そう生み出した世界に加護としての恩恵は渡せるが、神そのものの力は巨大すぎるのだよ」


天魔に淡々と創造神は語る。


「友は私の世界が好きだった、友との語らいが好きだった、異界の神との闘いで肉体は朽ち果てようとも友はその亡骸に宿る力すら遺して逝った、天魔、おそらく君の願いと彼の願いは一致するものだ」


「まだ願いをいっていないよ?」


「何、君が望む未来がきっと私の世界の混沌を秩序に変えるものだと私はそう考えるよ、だから受け取りなさい、この友の力を」


「・・・もらえるなら」


天魔はなんとなくその黒い光に手をかざす。

かざした瞬間体に溶けるような感覚に陥った。


この感覚は喜びと安らかな母の慈愛にも似た優しさ。


本来の170センチほどの体が少し大きく変わり190センチほど、黒髪黒目の容姿が黒髪赤目に、細く弱かった体が細く強い筋肉質な体になり、服装も患者服から、黒い着物のような不思議な和服へと変化した。


「天魔という青年の魂と友の力は無事に定着したようだね」


創造神はにこりと笑う。


「創造神さん・・・ノアさん」


「ノア・・・私の名前かな?」


「ええ、安直ですけどね、創造神に名がないのは少し寂しいから」


「君は優しい子だな、たしかノアはそちらの世界での箱舟の意味があったね、実にいい、新たな場所へと紡ぐ私にとって実によい名前だ、創造神である私に名前をつける猛者がいるとは」


創造神ノアと呼ばれた神は愉快そうに笑う。


「さて名残惜しいが、そろそろ天魔、転生しようか、君の望む希望は村を作るというか生産することであっていたかな?」


「すごいな、そんなことまでわかっているんですか?」


「そうだね、ここは魂が触れあう場所だからね、望みくらいはきちんとわかるさ」


ノアはにこりと笑いながら


「これから転生する世界は剣と魔法の世界バルドワ、過去に色々と戦いが勃発し、転生者が入り乱れて、様々な世界の文化や知恵が入り混沌としてしまった世界だ、様々な種族が覇権を得ようと日夜戦いを続けている、私の思惑とはまた違った形でな、だが滅ぼすというのは私はしたくない」


天魔はノアに瞳を向けながら頷く。


「神が全面に出る事が叶わぬならば、神如き力を持つ者を導こうと、そう思ったわけだ。それにはその力にふさわしい優しき心の者に渡さなければいけない、天魔、君の心は閉ざされた病室の中でも諦めはありはしたがそれ以上に未来を感じていた」


ノアは言葉を紡ぐ。


「君は君のしたいことをしなさい、それが私の世界に波紋を広げよくしていく」


「わかった、ならば僕は僕のできることをしよう」


そういった瞬間天魔は姿をけした

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