ジョナサンの恋愛シナリオ／非逆

第13章

　舞台劇の正式なショーの時間は一週間ほど延期した。

　アダムが病院に残って一日くらい観察した後で家に戻った。彼とアンソニーは、うっかりと階段から落ち、だから足首を傷ついてしまったと彼の両親に教え、そして彼の両親はただ百ドルをあげて、今後階段を降りる時にしっかりと目を開けて見るようにと言った。

　あの日授業をサボった後、ジョナサンと慶浩は三日間の放課後に学校に残って観察される処分を受けた。彼らが練習に参加できるように、劇団の練習も一緒に一時間後に伸ばした。

　アンソニーは再び劇団に戻り、元の台本通りに最後のリハーサルを行っていた。アダムは冒頭のモノローグにちょっとした語りを加え、ギプスで固定している自分の右足と杖をついている姿に少しの合理性を加わった。

　そして慶浩と付き合い始めたことで、一晩中ジョナサンはハイリーにからかわれていた。彼はハイリーと一緒にメイシーカフェへ行き、ハイリーがこのことを知った途端に出した笑い声で、店にいる全員に振り向かせて彼らを見つめていた。彼女は何とかして彼らがキスした詳細を聞いたが、ジョナサンは死んでも口を割らなかった。メイシーカフェには多くの人が居て、彼は自分と慶浩がキスした話がカフェのゴシップになることを望んでいなかった。

　ジョナサンはもう少しでハイリーにこのことを教えたのを後悔しそうな時、ハイリーは急に手を伸ばして彼をぎゅっと抱き締め、彼女は彼を誇りに思っていると教えた。少し恥ずかしいけど、ジョナサンも彼女の肩に手を回した。彼は本気で彼女がずっと傍にいてくれたことを嬉しく思っていると言った。

　少し遠回りをしたが、最後に全てのことはようやく軌道に乗ることができた。

　正式な演出の日、彼らの劇場は殆ど満席だった。この劇団の中には、何名の役者はここでショーを行うのが最後だから、殆ど全ての学生がここに集まった。何間かカリフォルニア州の大学演劇学院から来た教授たちは一列目の席に手配しており、その席の上には黄色い紙で「保留席」と書かれていた。

　ショーの入場時間は午後の三時十分から、四時から正式に始まる。劇団のメンバーとウェスは朝の九時で劇場に着き、全ての物を再度確認した。道具、照明と布製の帷幕の引き紐。これはジョナサンの初めての舞台劇、セリフは少ないが、彼は腹の中に千匹の蝶が羽を羽ばたいて、うじゃうじゃいるような感覚を抑えきれなかった。

　彼が思ったよりも時間は早く過ぎる。みんながもう一度セリフを確認した後、チャドはステージ前から楽屋に戻り、そろそろ観客を入場させる準備をすると教えた。

　観客席の照明が暗くなった時、ジョナサンは自分の手のひらが冷たくなったのを感じた。彼は楽屋のある鉄の椅子の上に座り、焦りながら両手をこすっていた。彼は自分の両親とハイリーが観客席にいることを知り、より背筋が冷たくなるのを感じた。

「心配するな、ジョナサン」慶浩は何時しか彼の傍に現れて、彼の手首を掴んだ。「何事でも初めてがある。君は大丈夫だ」

「わかった」とジョナサンは答えた。しかし彼は自分の腸が結びつき続けるのを止められなかった。

「へい、へい」慶浩は彼に近づき、彼に向けて微笑んだ。「俺らの劇団は素晴らしい、ね？俺らを信じて、自分にも自信を持って」

「わかった」

　慶浩は彼の手首をつねって、そしてウェスはみんなに開場の準備をするようにと叫んだ。

　慶浩の言う通りだと事実が証明していた。彼らの劇団は素晴らしかった。各アクトが終わった時の観客の拍手、歓声と口笛がそれを証明していた。

　ジョナサンが登場した時、彼は全く底にいる観客席の顔が見れないと気づいた。観客席の暗い照明とステージの照明はギャップを形成し、下の顔が似たような影に見えた。彼は自分の両親とハイリーがどこに座っているのかわからない。急に息苦しさを感じるほどのストレスは、こじ開けられた炭酸飲料の缶のように抜けていった、彼は順調に彼のパートを終わらせ、そして楽屋に戻った。

　慶浩は楽屋で彼を待っていた。

「よくやったじゃん、ジョナサン」と慶浩は言った。「心配すようなことはないと言ったはずだ」

　慶浩が彼の手を握った時、ジョナサンは自分の腕が震えているのに意識した。彼は慶浩を強く握り返し、自分の腕がコントロール下に戻そうとした。

　この劇はもうすぐで最後のクライマックスになる。ステージ上の役者以外、他の人は楽屋の布製の帷幕の傍に集まり、狭い通路からステージのショーをこっそりと見ていた。

　彼らが立っている位置から見ると、ジョナサンはアンソニーとアダムの後ろ姿しか眺められなかった。アダムの右足はギプスで固定されており、腕の下は杖をついていた。彼が立っている姿を見ると、ジョナサンの心に熱意が湧きあがり、涙が眼窩から溢れないように、彼は急いで瞬きをした。

「俺らは藻掻いて、傷ついて、怒りに飲まれた。しかし最後に俺はお前を見つけた。漆黒の迷宮で一筋の光を見つけたように、絡み合ったジャングルから離れた道を見つけたようだった」ジョナサンはアダムがそう言ったのを聞いた。

　今回のアダムの口調はリハーサルの時よりも真剣で、懇誠だった。劇団の中には誰もこのことを知らず、ジョナサンと慶浩だけが知っていた。だってその全てはアダムの嘘偽りのない心からの言葉だった。

　慶浩はジョナサンの傍に立ち、未だに彼の手を繋いでいた。全ての人が彼らの傍に集まり、彼らの腕はお互いにくっついていたから、誰も彼らが手を繋いでいることに気づかなかった。

「アダムのやつ」慶浩は小声で言った。「最後のアクトはよく演じていた。もちろん、それは最初から演技じゃなかった」

　ジョナサンはアンソニーが返事のセリフを言ったのを見た。彼の錯覚かどうかはわからないが、ジョナサンはアンソニーもよく演じていたと思っていた。つまり、アンソニーもただ演じているわけではないのか？これを経験した後、アンソニーはアダムの気持ちを受け入れてほしいとジョナサンは密かに願っていた。

　この劇はもうすぐ終わる。上級生たちの卒業前の最後のショーが終えようとしている。ジョナサンはこの劇が終わった時、同時に彼らの高校生活の終わりを告げていると急に意識した。彼は思わず慶浩の手を握り締めた。

「お前が言ったように」アンソニーは彼の最後のセリフを言った。「俺もお前を見つけた」

　アダムは杖を押しのけて、アンソニーに手を伸ばした。

　アンソニーが彼の手を取れば照明が暗くなる。ステージ前の帷幕が下ろされ、そして観客席の照明がつく。

　しかしアンソニーは台本通りに演じなかった。彼がアダムの手を握った時、彼は物語を止めなかった。彼は勢いに任せて引っ張り、片足で立つことしかできなかったアダムはバランスを崩して彼のほうに倒れた。そして劇団全員の錯愕の眼差しの中で、アンソニーはアダムの唇にキスをした。

「何をやっている──」ジョナサンの後ろに誰かが息を呑んで、小声で叫んだ。

「これは台本にないものだろう？」ある女の子が尋ねた。

「くそ、アンソニー」慶浩はニヤリと笑い出した。「神よ、このくそ野郎。くそ」

　ジョナサンは振り返って、後ろに立っているウェスは何がどうなっているかわからない顔をしていた。そしてジョナサンは微笑んだ。

「もう二度とそのようなことをするな」アンソニーの声は彼の襟に挟んでいるマイクから伝わってきた。「俺は永遠にそれを起こさせない」

　どうやら、アンソニーも単なる演技じゃなかった。

　慶浩は頭を振り返って、照明を担当しているチャドに向けてシューという音を出した。「早くライトを消せ、バカ！」

「おう！」チャドは夢から醒めたように我に返り、すぐにステージのライトを調整した。

　帷幕はライトが弱くなるにつれて下ろされた。アンソニーはアダムの代わりに杖を拾い上げた。暗い光線の中、ジョナサンはアダムとアンソニーがステージの上で何をしたのか見えなかった。しかし観客席から伝わる、轟くような拍手と喝采は、アンソニーが勝手に追加したシーンはポジティブな効果をもたらしたと証明していた。

「カーテンコールを行う時間だ」ウェスは後ろで促して言った。「みんな、早くステージに戻って」

　全員は通路を通り抜け、ステージに駆け込んだ。慶浩はジョナサンの手をぎゅっと握っていた。彼らは決められた順番に一列に並び、そして照明が再び明るくなり、帷幕がゆっくりと上げられた。役者たちはお互いの手を繋ぎ合わせ、帷幕が完全に上げられた後に観客に向けてお辞儀をした。

　観客席の照明も明るくなり、そしてジョナサンはようやく人混みの中にハイリーと両親の顔が見えた。ハイリーは彼に向けて両手の親指を立てた。ジョナサンは思わず彼と慶浩が繋いでいる手を上げて振った。ハイリーは燦然とした笑顔を見せた。

　観客席の拍手と歓声はまだ続いている。ジョナサンはこっそりと慶浩を一目見て、照明に照らされて彼の目尻には何かがキラキラと輝いていた。慶浩と他の役者は観客席に向けて大声でありがとうと叫んで、そしてジョナサンは自分の胸がある暖かい感覚に占められているのを感じた。

　帷幕が再び下ろされた時、慶浩はジョナサンを引っ張って、彼の肩に腕をしっかりと回して、彼のこめかみにキスを落とした。ジョナサンは彼の両親が慶浩の動きを見たかどうかわからないし、彼と慶浩の関係をどうやって両親に教えるのもわからなかった。しかし今回、ジョナサンは誰の目にも気にしないことに決めた。