第九章 一目盛以上の愛(3)

 陸子涼は首を傾げ、不思議そうに近づいてガラスの箱を見て、また階段のほうに視線を送った。

 そして、彼は思わず手を伸ばして、慎重にロックを外し、数多のコレクションと一緒に置いてある箱の中には、一体何が隠されているのか見てみたい。

「まさか本物の人骨とか……」

 箱のふたを開けたら、陸子涼は少し固まった。

 中には古い金メダルが入っていた。

 ×××年全国水泳大会中学組……

 陸子涼はゆっくりと瞬きをした。金メダルを手に取って、彼の心の中から何か奇妙な感覚が浮かび上がった。指の腹は裏にある凸凹の感触に触れ、まるで何か彫られているようだった。

 彼は金メダルを裏返して見た。上には曲がりくねった字が彫られていた。

 ──陸子涼。

 陸子涼の瞳孔は少し収縮した。

 記憶はそよ風のように軽く吹き出し、無数の歳月を撫で、最も初々しくて熱情的な頃、告白の日に突然終わりを告げざるを得なかった長年の片思いに止まった。

 ──先輩、あなたは私の初恋です……

 その瞬間に、陸子涼は全てを思い出した。

 告白。

 プレゼント。

 アパートのソファ。

 刺してきたナイフ……

 そして、間一髪でナイフを握ったその手。

 胸元の制服に鮮血が溢れた焼けるほどの熱い感覚は、急に彼の頭を占めた。

 陸子涼は誰かを徹底的に忘れることは滅多にない。

 王銘勝に惨めに殺された時でさえ、犯人という存在を覚えていた。

 しかし彼は白清夙を徹底的に忘れて、ほんの少しのスペースでさえも彼に残さなかった。

 陸子涼はその金メダルをこすっていた。

「それでも、あなたはずっとこれを保存していた」

 彼は軽く笑って、少し呆れた。

 そのことが起きた翌日に、彼は勇気を出して白清夙の家のドアにノックして、自分のカバンを取り戻すことを理由に、もう一度白清夙に会いたがっていた。

 彼はカバンを取り戻し、鬼神には近づかないようにという忠告を受けたが、白清夙には会わなかった。

 白清夙は彼に会うことを拒否していた。

 顔合わせないことを選んだ人が、金メダルをこれほど完璧な状態で保管した。これのために精美な箱を選んで、一番目立つ位置に保管するなんて。

 陸子涼は金メダルにそっとキスをした。

「二度もあなたを好きになるなんて」



 白清夙が戻った時、陸子涼がベッドに横たわっているのを見た。

 ナイトテーブルの上には一つの常夜灯が増えた。

 この前に、彼が陸子涼の寝室に持って行った古い常夜灯と同じデザインだ。曲がった金属製のステム、カラフルなガラスのランプシェード、ただランプシェードは花のデザインになっていた。陸子涼がどこから見つけたのかわからないが、既にコンセントに挿した。

 部屋のライトはつけており、常夜灯も付いていた。

 ガラスのランプシェードから照らし出した彩な斑は壁に映り、淡く希釈されていたが、より恋しく感じさせた。

 白清夙はまたそのライトを見た。彼は近づき、陸子涼の頭を撫でた。

「頭はくらくらしますか?」

「大丈夫です」陸子涼は鼻を動かした。「食べ物を買いに行きました?」

「はい。もう時間が遅いから、市区の所しか店が開いていませんでした」白清夙は救急箱を開けて、側頭部の傷口の薬を取り換えた。「後で少し食べてから寝てください」

「ピータンと豚肉入りのお粥のような匂いがします」

「そうです」

「でも別のが食べたいです」

「何が食べたいのですか?」

 陸子涼は元々大人しく横たわって手当てをさせていたが、それを聞いて、彼は白清夙の腰に手を回した。

 白清夙は明らかに少し固まった。

「あなたは、俺を切り裂きたいと言っていましたよね?」と陸子涼はそっと言った。

 白清夙の腰あたりの筋肉が引き締まった。

 陸子涼の手が落ち着きがなく、下へ進み続けていたせいだ。

「このことを相談してくれたことを嬉しく思います。あなたが離れた間に、俺は少し考えたが、ナイフやペンチで切り裂かれるのは無理です。しかし、ここを使うのはいいですよ」

 陸子涼の手のひらは白清夙の股部分に当てていた。

「俺を繰り返して切り裂いてもいいです。何回も切り裂いてもいいです……」

 白清夙の呼吸はすぐに荒くなった。

 白清夙の目は非常に深くて静かになり、目を落としながら陸子涼を見つめていた。

 陸子涼は口角を上げて、何も恐れる物がないように白清夙に向けて笑って、胸元を押し上げ、彼の唇にキスをした。

 濡れた感触は猫に舐められたようだった。白清夙は陸子涼の後頚部を押さえ、抑えられずにキスし返した。二つの唇が開けた途端、陸子涼は堪らず舌を入れて、柔らかくて熱い温度がどこまでも広まり、白清夙の歯の間に巻き、からかって、やりたい放題だった。

 陸子涼のキスが上手すぎて、白清夙はすぐにはまり込んでしまった。

 服は脱がれて、ズボンのボタンも外され、白清夙は瞬時に半裸になった。一方、陸子涼は元の様子を保っており、情熱的なキスしながらも笑い声が頭の中に響いていて、とても生き生きとしていた。

 白清夙の鼓動はあり得ないくらいに速かった。

 陸子涼の手は彼の体を撫で、もう一度彼の股部分に押さえた。手のひらはその太くて勃起したチンコを握って、弄んでいた。白清夙はキスを止めて、息を呑んだ。

 陸子涼は視線を送り、「おっ」と言った。「誰かさんが凶器を用意できたみたいですね。こんなに凄まじいタイプ、ねぇ、俺はすぐに刺殺されるのでしょうか……」

 白清夙は陸子涼の手を取っ払って、彼を押し倒し、片手で彼のズボンのウエストを掴み、パンツも一緒に全部剥がした!

 陸子涼は驚かされた。下半身が冷たくなり、からかう口調は一瞬止まり、少し不安になった。「まさか……まさか本当に直接いれるつもりじゃないですよね?」

 白清夙は身を乗り出して、彼の唇にキスをした。立ち上がって多宝格の後ろに行き、低いキャビネットから一つの茶色の小瓶を取り出した。

 陸子涼は気になっていた。「それは何ですか?」

「潤滑できるものです」

「それは標本を浸すための溶液じゃないですよね?」

「……まさか」

 白清夙は救急箱から手袋を取り出し、あっさりと付けて、茶色の小瓶に入っていた液体を手に取り、そして陸子涼の両足を引き離した。

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