第六章 命で償う(5)
白清夙は携帯電話を取って見てみると、また四番目の兄からかかってきた電話だった。
家族の中に、四兄だけは彼と親しい関係を保てられるほどの度胸があった。しかし四兄は特にしつこい性格なわけじゃないから、こんな風に電話をかけてきたのは、もしかしたら本当に何か急用があるかもしれない。
白清夙は仕方なく電話に出た。
通話の向こう側から懐かしい笑い声が伝わり、『もしもし、末っ子、ご飯を食べた?』
「要点を言え」と白清夙は冷たく言った。
『本題から入るなんて、まるで真面目な話をするためだけに、俺ら兄弟がせっかく話したようで、人情味に欠けている』と四兄が笑って言った。『兄にも気にかけてくれる?ご飯を食べたのかと聞いてみて?』
白清夙は電話を切ろうとした。
『電話を切ろうとしているだろう?ならせっかく聞き込んできた情報を聞けなくなるだぞ』
「お願いした覚えはない」
『うん、でも俺は君の好みを覚えている。君が好きなあの……知りたくないのか?』
白清夙の目は煌めいて、携帯電話を握っている指は急に力を込めて、関節の所は微かに白くなった。
『陸家のかわいい子ちゃん、はぁ、そういえばいい知らせとは言えない。先にごめんと言っておく、ここ数日間の気分を悪くさせるかもしれない』
白清夙は冷たい声で、「言いたいことがあるなら早く言え」と言った。
『ほら、まだ言っていないのに、もう君の気分が悪くなった。君の機嫌が悪くなると、俺は自分の身の安全が心配だ。はぁ、全世界で多分俺しか君に教えられないだろう』四兄は少し止まって、声に含まれる笑みは消えた。『この二日間で、陸家は人身供儀を行うつもりだ』
白清夙は一瞬、啞然としていた。
陸家は神秘的な世族、神の意志に従い、代々幼い神々が凡人の身として陸家に誕生し、陸家は新たな城隍を育てる責任があった。
しかし前の代では陸家に過ちを犯した。育ちあげた新たな城隍は二十四歳になる前に悪しき神に殺され、魂さえも散り散りになってしまった。陸家のこれまでの努力が全て無駄になり、その同時に神罰を受け、城隍を育てようという神の命令までも撤回された。陸家もその後に没落した。
「人身供儀」は育ちあげた城隍を神に捧げる儀式だ。しかしもう神々が誕生しない没落の家族はなぜ、そのような儀式を行うのか?
白清夙の瞳孔は少し縮んでいた。「まさか陸子涼は……でも彼は城隍じゃないと言ったはずだ。もし彼が城隍なら、外に漂泊しているはずがない」
四兄は苦笑いをした。『そうだな。陸子涼が陸家から追い出された時、多分どの家族も尋ねたことがあるかも、みんなは彼が城隍じゃないと思ったから、みんなは陸家が新しい神を育てる資格を失い、神の恵みを失ったと思った。ところが先月の時、陸家がもう一人の子供をずっと隠していたことが発覚した。』
四兄は少し間を置いて、『陸子涼は双子だ』と言った。
「何?」と白清夙は言った。
四兄はため息をついて、これから話すことを嫌がっているようだ。『陸家の神旨は撤回されていないらしく、彼らは二十四年前の祭天年で相変わらずに神々の化身の子供を貰い、しかも双子だ。双子は俺らのような家族では……はぁ、命を償う呪いって知っている?』
白清夙は何も話さなかった。
『そうだ、君は鬼神のことには触れなかった。とにかく、城隍は必ず二人の中のどちらだ。どっちかを決めた次第、陸家の家主の老いた変態は、今回の育神がばっちりであることを確保するために、二人の命数を乱れて、全ての災害や災難を一人の子供に集中させ、そして全ての幸運を城隍になる子供に残した。双子の中でどちらが傷ついたとしても、傷口はいつも陸子涼の身に現れる。陸子涼の命はまるで消耗品のように、同時に二人分の痛みを耐えなければならない。彼を殺さない限り、誰も彼の兄弟を傷つくことができない』
「……」
白清夙はそれを知らなかった。彼は陸子涼の困難な成長過程を観察していたところ、不可解にも彼の身に誘き寄せられた悪意を発見しただけだった。
だってそれらの巨大な悪意の中に、「邪悪なもの」と分類させている自分も含まれていた。
『当時は陸子涼の母が家族の禁忌を犯したせいで、子供を含めて一緒に陸家から追い出されたと思ったが、はっ、実のところ、彼らはわざと陸子涼を追い出したのさ。彼を外で苦難を経験させ、彼の兄弟の災いも一緒に受けさせたことで、家に隠れている
四兄はこのようなやり方を明らかに軽蔑した。『彼らは陸子秋をしっかりと保護して、一人の使者だけを派遣して密かに陸子涼を監視して、彼を傷つく勢力を観察し、事前に対策を練るつもりだ。もし陸子涼が不幸にも陸家を恨んでいる悪鬼と悪しき神に殺されたら、もっといい。陸子涼が犠牲したことによって、陸子秋の災難は殆ど消えてしまった。陸子涼が自力で成長できたのは、天が彼を死なせたくないとしか言いようがない』
白清夙の細長い黒い瞳は怖いほどに暗い。
『残念なことに、人身供儀が近づき、情報が漏れてしまって、陸子秋の存在がバレて、命を償う呪いのことも自然と表に出てしまった。新しい城隍を誕生させたくない悪鬼と悪しき神たちは、また可哀そうな陸子涼を狙い始めた。何せ陸子涼が死なない限り、誰も陸子秋を傷つけない』と四兄は言葉を続けた。
さっき交通信号を待っていたバスが近づき、バス停の所で止まった。
白清夙は陸子涼が軽快にバスから飛び降りたのを見た。
通話の向こう側の声はまだ続いている。『元々人身供儀は陸子秋が二十五歳になる前の日に行うべきだが、今は半月も早めた。陸家がこんなに慌てるのは、死体がまだ神性を保てられる時に、素早く陸子秋を捧げるつもりと聞いた。わかるか?つまり、陸子秋は時間が迫って自然と目を閉じたわけじゃない。彼は殺されたんだ』
バス停の傍で陸子涼が顔を上げると、彼は警察署のドアの前で彼を待っている白清夙をすぐに見つけた。
陸子涼は燦然とした笑顔を見せて、まるで日の光のように、こっちに向けて笑って手を振った。
しかし白清夙はまるで冷たい水をかけられたように、珍しく全身が冷えた。
『陸子秋が殺されたのなら、陸子涼は必ず先に被害に遭った』四番目の兄はそっとため息をついた。『ごめん、末っ子。君が殺せないほどに大好きなあのかわいい子ちゃんは、恐らくもうこの世にはいなかった』
白清夙の頭が真っ白になることはめったになかった。
でもこの瞬間、彼は本当に思考が回らなかった。
通話の向こうから、四兄の心配そうな声が伝わってきた。『……もしもし?末っ子?何か話して、でないと俺が怖い、もしもし?大丈夫なのか?抑えられるのか?俺が見に行って、君を閉じ込める必要はあるのか……』
通話は切られた。
白清夙は携帯電話を置き、陸子涼が暖かい風のように自分の前にやってくるのを見た。
陸子涼は満面の笑みで彼を見つめ、かっこいい顔には満ち溢れる嬉しさ。「イケメン、迎えに来ました」と彼に向けてそう言った。
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