第一章 命をかけたとんでもない恋(4)
陸子涼が仰ぐと、目の前に奇妙な赤い服を着た一人の少年が空中に立っていた。
その少年は柔らかな黒髪を持ち、性別が不明で、青白い頬は血に染った。血を流した左腕を押していて、嫌々な表情を浮かべて陸子涼を見つめていた。
陸子涼は飛んでいる少年の体を見て、そしてその血を見て、驚いた表情を見せた。丁度その時、性別不明の声で少年が彼の名前を呼んだ。「おっと、陸子涼か?こっちの非を鳴らすために来ているんだろう。……トラブルが次々とやってきているのか。入りなさい」
すぐに突風が吹き、空中で止められていた陸子涼は一枚の紙のように廟の扉の中に吸い込まれた。
薄い扉が陸子涼の後ろでバタンと閉まり、荒々しい力で彼はバランスを崩して地面に倒れた。
「ああ、こういうあいさつはけっこうだ」
「……」
陸子涼は驚いて見上げると、周りの様子に見覚えがあると気づいた。ここは赤い糸をもらった場所だった。
――月下老人を祀る左殿だ。
ほのかなお線香の香りが漂い、
「まあ座れ。お話をしょう」
赤い服を着た少年は腕の傷を簡単に手当をしてから、立ち上がっている陸子涼に目を向けて、信者がひざまずくに使う赤い四角い膝当てを何気なく指をさし、そこに座るように指示した。
「……」
立ったままで陸子涼は視線を少年に向けて、また神龕にある白髪の神像の方に移して、そう聞いた。
「それはあなたなの?」
「そうだけど」
「似ていない」
アホを見るかのような目で陸子涼を見つめて少年が言った。「その神像は単なるそのポストを象徴するもので、本当にそんな顔を持つ人はいないよ。話が変わるが、この廟が変だと知っていて、あえてここに来て叫んだりするあなたはとても大胆だね。あなたのような死んだばかりの幽霊は簡単に倒せるものだよ。身の程を知らないね」
陸子涼は確かにそこまでは考えていなかった。彼の考え方は出会った人が皆『普通の人間』に留まっている。体格が立派で若い男性として、廟を管理する老廟公は自分にどうしようもないと思っていた。
二秒間かけてこの一連の不思議なことを考えて理解したつもりで、陸子涼は穏やかな声で言った。「あなたは俺を殺人者に縁を繋いでくれた月下老人なのか?」
月下老人は軽くふんを発してこう言った。「私はこの二日間ここにいなかった。論理的に言えば、赤い糸を人に渡すことは不可能だったが、ある悪者がその隙に乗じて、密かに私の
老廟公の怖ろしい老いた顔を思い出すと、陸子涼は心の底にぞっとした。その時、引き返して赤い糸を求めるように勧めたのは人間の皮を被った悪鬼だったのか?
「廟公も年だし、心が悪鬼に取られたことは彼のせいじゃない。責めるのはやめてほしい」
「被害者は他にもいるか?」
「あなただけだよ」
「どうして悪鬼が俺だけを選んだのか?」
淡い色の瞳を持つ月下老人は目を少し細めて、静かに彼を見つめた。
暫く時間がたってから月下老人は微笑んで言った。「それは単なるいたずらだった。その悪鬼は先ほど私に逮捕されて、冥府に連れられた。もう心配はいらない。けれども、あなたは確かに罪のない被害者だ。理由もなく、赤い糸のせいで死の道に導かれた。本当に申し訳ない」
最初に話をしようと言ったのに、結局、月下老人一人がしゃべって、勝手にすべてのことが決められた。自分は告げ知らせられただけだ。「後ほど迎えに来る
陸子涼はいきなりこう言った。「来世?」軽く笑って、そのひざまずくに使う赤い膝当てに、腰を下ろした。
きれいな顔つきをしている陸子涼は、口もとが少しゆるむだけで日差しのような温かい微笑みを見せ、優しい人に見える。しかし、今彼はこのような暖かい微笑みを人に見せながら、冷たい声を発している。「来世?欲しくないよ。今すぐ俺の命を返してほしい」
「嫌でも、死んだ人には命を取り戻すことはできない。賠償を言えば、来世まで待たないと無理だよ」
「来世にならないと償えないって、意味ない話だよ。俺はまだ二十四歳だよ。あなたを拝みに来ただけで、今まですべての努力が水の泡になってしまったんだ。このままあの世へ行くなんか、とても悔しい。償い償いと言って、くれるものは命ではないだろう。ただの冤罪を晴らす手紙だよね!」
「それは無数の幽霊が夢見るものだよ。」
陸子涼はせせら笑いをして言った。「ふん、人殺しじゃない限りなんか、寛大な裁判なんか、どういう話?月下老人様、あなたが職務を怠ったせいで、俺が殺人者に命を奪われたのだ。「人殺し」という罪を償えない一通の手紙で賠償をしようという考えは甘い。俺をバカにしているのかい。そんなに人をバカにすることが好んでいるのかい?」
月下老人の若い顔に、興味津々の笑顔がした。
陸子涼の顔を見つめて、笑ってそう言った。「やはり優秀なアスリートは頭がいいね。じゃ、どうしたらいいのか?教えて」
「生き返りたい。悔しいままで死にたくない」と陸子涼が答えた。
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