都々逸・春の夜のタイムカプセル

髙 文緒

第1話

 こぼれた星が 沈む濁醪どぶろく 飲み干すおんな 二つ口

 テンジクダツと 酔いどれ絡む どぶから覗く 出歯亀の

 亀蔵の目が うろうろ泳ぎ おんなのうなじに ダツ刺さる

 宵宵よいよい迷う ダツの口先 臍のくぼみは 浅すぎた

 腰巻き赤く 膝裏白く ソッチの窪みは 臭すぎた

 トリモチ穴は 出られやしない 出してくれよと のたうった

 女陰ほとかき混ぜて 奥かき分けて 粘り増々ますます ますばかり

 ますの親方 その名はサーモン ダツの切っ先 柳刃やまぎば

 二口ふたくちおんなの 女陰ほと主様ぬしさま いまや切り身や 握り寿司

 回転寿司は 半透明の 半球はんきゅう乗せて AI監視

 看板消えぬ 深夜の営業 入り口に立つ 阿吽あうん

 は体温を 計るべし うんは消毒 吹き付ける

 目にはセンサー 貴様は果たして 醤油を如何いかに 扱うか

 マイナンバーを 示して見せよ Tik tokは やってるか?

 二口おんなは 深夜の散歩 兼ねて飛び込み 営業す

 このサーモンを 幾らで買わん? 買わん買わんよ 無茶言うな

 保健所怖い マスコミ怖い まんじゅう旨し あんの時代

 出してくれよと ダツが泣くので ずるり抜き取り どぶどぶん

 出歯亀していた 亀蔵の目に ダツ突き刺さり メザシかな

 メザシが何だと おんなが吐くつば 出っ歯の亀蔵 飲み込んだ

 ダツマスク鱒苦の春 咳エチケット 亀蔵の手は 魔羅まらにあり

 あな恐ろしや 手淫の功罪 咳エチケット 守られず

 唾飲み込んだ 亀蔵せて 春の夜の夢 エアロゾル

 それより時代は 餡だと言って 二口おんなは 歩きだす

 インボイス制度 反対署名 ついでに小豆を 仕入れせん

 餡をくるむは おんなの羽二重 羽二重餅が 回転す

 評判博して 大回転の 羽二重ショウは 夜開く

 二口おんなが うなじの口の 抜けた乳歯を 屋根に投げ

 またあるときは カプセルに入れ 十年後にまた 会いましょう

 この桜の樹の 根元にうめた 手紙を一緒に 読みましょう

 ケイコの夢は 夜開くとは ケイコの歌った 歌かしら

 うなじの口で 歌うおんなの 羽二重ショウを 見る夜よ

 花に酔ったか 星に酔ったか 濁醪どぶろく交わす 二十歳はたちだし

 十八歳の 亀蔵だけは シラフのままに 投票す

 二十歳はたちの夜の 散歩はたのし タイムカプセル 掘り返し

 おんなの夢は うなじの口の 整形手術と 神7かみせぶん

 なるほどおんなの 商いごとの 熱心なのは 手術費か

 二口おんなの うなじの口と なぽりたんをば すすりあい

 うぉると・でぃずにー 名作映画の 犬のつがいを 真似たいと

 おれの手紙に あったそうだよ

 

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都々逸・春の夜のタイムカプセル 髙 文緒 @tkfmio_ikura

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