08、相思相愛
好きじゃないなら、どうしてそう言ってくれなかったんだ?方既明は自分がそんなに弱くなく、告白の断りを受け止められると思った。
しかし、方既明は、人間の心の複雑さと不可解さは受け入れられなかった。
「……方既明?どうしたの……人の話聞いてないの?」方既明はしばらく何も答えなかったから、マドンナは訝し気に言った。
何とか言って!
自分はもう大人なんだから、緊張して自分の殻に閉じこもってる場合じゃない……早く何か言って!」
頑張って口を開こうとしたが、喉が詰まったような感じで声が出てこなかった。
そして、彼が更に慌てたその時――
「ここにいたのね!ダーリン、やっと見つけた」純白のワンピースに身を包んだ羅秀雅は、人ごみをかき分けてまっすぐ彼の方へ向かった。
彼女の顔には、先ほど方既明によってナチュラルメイクが施されており、とても若々しく美しく見えた。
美しい羅秀雅の姿は、すぐに周りの人の注目を集めた。
彼女が甘い声で言った「ダーリン」という言葉は、方既明の同級生たちをあっと驚かせた。
……方既明に奥さんがいるのか?しかもこんな美人だって?
羅秀雅はあたかも方既明以外誰もいないように、周りの視線を無視して、彼だけを見つめていた。
「もうっ、なんでそんなに飲みまくったの?……帰ったらまた頭が痛くなるよ」彼女は身をかがめ、心配そうに方既明に近づいてきた。
そして、まるで近くにもう一人いることに初めて気がついたかのように、彼女はマドンナを見上げました。
「すいませんね、お姉さん……私はやきもちを焼くから、いつも夫が他の女性と話すことを禁止していますぅ」
この甘ったるい声をした小さな妖精を初めて見たとき、マドンナは固まったまま返事した。
……何いきなり、ムカつく。どういうことなの?
「行こう!ダーリン、もう十分飲んだんだし、そろそろ帰ろう」周りの人の驚きぶりを一顧だにせず、羅秀雅は状況が飲み込めない方既明を連れて同窓会の会場を後にした。
彼女は方既明の片方の腕を自分の肩にかけ、体重の一部を支え、二人で帰っていった。
端から見たら、ラブラブでちょっとイタいカップルにしか見えなかった。
……これが、今晩の最高の瞬間だった。
「ねえ、方既明、そんなに酔ってないじゃん!肩が壊れちゃうよ」
「……」
「本気で言ってるの!冗談じゃないの……接着部が裂けそうなの!」
その口調は、既明が驚いて棒のように背筋が伸びるほど必死に聞こえただろう。
「ふふっ、よかった、酔いが醒めてきたみたいね」
方既明は確かにあまり酔っていなかった。
店の外に出ると、冷たい風が残っていたアルコールを吹き飛ばしてくれたようだった。
「……君は何でここに来のか?」先ほどの失態を思い出して、少し恥ずかしくなった。
「もちろん、愛するダーリンを迎えに来たに決まってるじゃないの!」とからかっても方既明は全く反応がなかったので、言い直した「……ちょっと心配だったから、こっそり見に来たんだ」
先日、同級生からのメッセージを見て、方既明はなんでためらっていたか、羅秀雅は知らなかった。
しかし、彼女は知っていた。目の前にいるこの人は、生きた人間が少し苦手なコミュ障の人であり、今日のような社交の場では、きっと大変なことになっただろう、と。
見に来てよかったと、彼女はそう思った。まるで無力な子羊のように、自分の席で黙っていた無口な方既明を思い出していた。
「……心配かけて、ごめんね」方既明が優しい声で言った。「僕、全然変わってなかったみたいね」
あの頃、クラスのマドンナとその親友の会話を聞いて、ただでさえ物静かな方既明が、さらに無口になった。
……今、自分の目の前にこの人はこう言っているけれど、内心違うことを考えていないだろうか?人と話していると、そんな疑念を抱くようになった。
人に声をかけるのが怖くなった。
自分は不器用な人間なんだ、下手なことを言ったらまた嫌われるんじゃないか……だったら、いっそのこと何も言わないほうがいい。
この性格は、社会人になってから徐々に改善されていった。社会に溶け込もうと思ったら、ずっと逃げたらダメだと気づいたのだ。
泣いているときでも、笑顔の仮面をつけなければならないことも多々あった。
だんだんと自分がうまくいっていることを実感できるようになった。職場の同僚ともうまく付き合っているし、遺族の家族にもきちんとした態度で接している。
人ごみの中に入ると緊張していた自分が変わったことを実感した。
同窓会に来たのは、それを証明するためだった。
「でも、本当に難しいんだ……僕、一生変われないかもしれないな」と、方既明は諦めを帯びた口調でそう言った。
彼が羅秀雅に話したのは、単に自分のことを聞いてほしかったからだ。
相手から答えが返ってくることは期待していなかった。
しかし、しばらく無言だった羅秀雅から聞こえた言葉は予想外だった……。
「ダーリンは今のままでいいんじゃない!何も変える必要はないんだよ」
これに対して、方既明は口癖のように「わかってるよ――ハゲても素敵なんだろ!」と答えた。
「本当だよ、前にも好きって言ったじゃん!」なぜ、方既明はこのことをまだ信じていないのか?
まあ……彼女自身も認めているのだが、自分の態度は冗談と受け取られやすいことが多いのだ。
しかし彼女は、この発言は冗談ではないと信じてほしかった。
彼女の言葉を聞いた方既明は一瞬固まった後、手を伸ばして彼女の頭をポンポンして、「わかったよ。こんなおじさんを好きになってくれてありがとう……」と言った。
「違う――全くわかってないじゃん」羅秀雅はやや不機嫌に言った。
方既明のまだ喋っている口元を見かねたのか、羅秀雅は手を伸ばして彼の首に腕を引っ掛け、自分に寄せて唇を重ねた――
「……!!!」
この瞬間、方既明の話が止まった。
「……これで、私のこと信じてくれるよね?」キスの後、羅秀雅は魚を盗んだ猫のように微笑みながら後ずさりした。
「君、君、君、僕…… ♨○※□㊣……」方既明が緊張して口ごもる様子に、羅秀雅はなじみの感覚を取り戻した。
ああ……悲しい顔をしてどうするんだ。この人は自分にからかわれて、慌てたほうが自然でいい。
「どうしたの、そんなに緊張しちゃって、ファーストキスでは?あら……ファーストキスは紙人形と?ひどいね!でも、世界で一番美しい紙人形とのキスだから、悪くないよね!」。
羅秀雅の軽やかな言葉に、方既明はますます胸の鼓動が高鳴るのを感じた。
そして、幸せと温かさを感じた。
安置所にある遺体は冷たい。命のない紙も、体温など持つはずがなかった――しかし、今目の前にいるこの人は、今まで見たこともないほど生き生きとしていて、熱かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます