神の理想郷

俺TUEEEEEがしたい①

　俺は人が大嫌いだ。

　どこが嫌いか教えてやろう。

　あいつらは立場を状況によって、掌返しするんだ。

　それが大っ嫌いだった。

　エゴばっかの操り人形ばっかり。

　つまんねぇ世界だなと毎日過ごしていたら、面白いCMを見つけた。

　プレイヤーキル、つまりPKができる完全没入型MMORPG『神の理想郷』ってやつをな。

　魔法を行使する映像、動物を手入れする映像、NPCと会話する映像。

　そして何より、悪側の映像もあった。カルト宗教みたいな集団や、女子供を監禁する国。

　そしてそいつらを殺してる正義の味方気取りの、まさにPKする側の集団の映像。

　PKに惹かれた俺はまず情報収集だと、調べまくった。

　だがおかしい。

　誰一人として実体験を書いた人がいなかった。

　夢が叶う！　とネットで言ってるやつも、ただCMから見た情報を元に発信してるだけだった。

　結局、CM以上の情報はなく、テスターも俺の知る限りではいなかった。

「集まったのはこんだけかよ……」

　①『神の理想郷』はMMORPG

　②種族は公開されていないが、選択可能

　③遊ぶには専用のゲーム機が必要で、それは2種類存在する

　　③‐①1つは棺桶みたいな箱型に専用の水を入れて、その中に潜りプレイする『送付型』

　　③‐②もう1つはライダースーツみたいな、身体のサイズが分かる服を着て、専用のマットに横になりプレイする『付与型』

　　③‐③この2つの違いは、連続プレイ時間及び親密度に違いが出る。『送付型』は無限にでき、『付与型』は2日

　④現実世界での1週間は『神の理想郷』の1ヶ月

　⑤NPCに個々のAIが搭載されている

　⑥チュートリアルは無く、容姿も自分では設定不可。

　⑦ゲーム内では『転生』したと見做された状態から始まる

　⑧案内人との会話で『スキップ』を選ぶと成人した状態から始めることができる

　とりあえずまとめてみたが、最後の⑧は苦労して見つかった。

　CMの映像を1フレームずつ見ていき、拡大してやっとこの文章が見つかったのだ。

　傍から見たらただの絵にしか見えなかったからな。

　よく見つけたと自分を褒めてあげたいくらいだ。

「巧妙な技を見せてきやがって……。運営が驚くくらいさっさと人を殺してやる！」

　そうして、案内人の説明をスキップした男は気づかなかった。

　更に小さな文字で『なお、このスキップ機能を使った場合、種族は女神に導かれます』と書かれていたことに。

　それが何を意味するかも知らぬまま――。