第伍話 生命の選択『ハイエルフ』

〈いらっしゃいませ。今作品『神の理想郷』をダウンロードしていただき、誠にありがとうございます。私のことは『案内人』もしくは『AI』とお呼びください〉


 目を開くと、真っ暗な背景に文字が表示されている。


 文字が緑色のようだ。


〈『神の理想郷』についてご説明させていただきます。スキップしたい方は『スキップ』とおっしゃってください。…………それでは説明をいたします〉


 私は事前に情報を調べるタイプだ。

 このゲームは現実世界との時間が乖離していて、例えば現実世界での1週間はゲームの世界での1ヶ月、みたいにね。

 まぁ現実世界に戻る気はないけれど。


〈この世界は主に5つの種族が存在します。エルフ・クジラ・鳥・コウモリ・ヒト。『エルフ』は魔法を扱うことができ、妖精や森と親和性があり、爽やかな空気を宿しています。『クジラ』は楽器を扱うことができ、水や海と親和性があり、穏やかな空気を宿しています。『鳥』は暗器を扱うことができ、精霊や空と親和性があり、静かな空気を宿しています。『コウモリ』は血を扱うことができ、死者や地下と親和性があり、冷ややかな空気を宿しています。『ヒト』は動物です。5種族はそれぞれ違う土地で暮らしており、エルフは『地上世界』に。クジラは『海上都市』に。鳥は『空中都市』に。コウモリは『地下世界』に。ヒトは地上の広範囲に。さて、どの種族を選びますか?〉


「ふむ」


 よくある種族と言えるだろう。


「少し質問をよろしいかな?」


〈はい。構わないですよ〉


「私のような異端な者に寛容な文化と、種族はどれかな?」


〈……返答に時間を要します。お待ちいただく間、好きなメニューをお選びください〉


 その文字を読んだ途端、真っ暗だった背景が明るくなり、目の前にメニュー表が現れた。


〔メニュー


 ・赤のおすすめ トマトジュース

 ・黄のおすすめ レモンティー

 ・青のおすすめ ウォーター

 ・緑のおすすめ 緑茶

 ・茶のおすすめ 烏龍茶

 ・白のおすすめ 飲むヨーグルト

 ・黒のおすすめ ココア     〕


 これはどれかを頼めということだろう。


「では、『緑のおすすめ 緑茶』を」


 カランカラン。

 何もない空間から、少し先にある机に頼んだものが置かれた。


〈もう少々お待ちください……〉


 周りをよく観察する。

 『……』の文字の後ろに、小さく光る緑色の球と、緑色の球がふよふよ浮いていることに気づいた。


〔追加メニュー


 ・赤のおすすめ いちご

 ・黄のおすすめ バナナ

 ・青のおすすめ ぶどう

 ・緑のおすすめ マスカット

 ・茶のおすすめ キウイ

 ・白のおすすめ ナシ

 ・黒のおすすめ チョコ   〕


 気づいたら新しいメニューが追加されていた。


「では、『緑のおすすめ マスカット』を」


 コトン。

 空けていたスペースにお皿が置かれた。


「……む」


 モゴモゴと食べながら、周りを見ていたら変化に気づいた。

 先程まで緑色と緑色の球だけだったのだが、緑色が先程よりも濃くなっている。


 メニューに関係するのだろうが、どうやら時間切れのようだ。


〈お待たせいたしました。精査しましたところ、解放条件が整いましたのでご紹介いたします。……先程ご紹介しました、4種族の上位種族が開放されました。エルフの上位種族である『ハイエルフ』。クジラの上位種族である『シャチ』。鳥の上位種族である『龍』。コウモリの上位種族である『吸血鬼』です。ハイエルフは『魔術の向上』を、シャチは『芸術の向上』を、龍は『武術の向上』を、吸血鬼は『占術の向上』を担っています。さて、どの種族を選びますか? ……ちなみに最も異例に寛容なのはハイエルフ族だとおすすめします〉


「ではそれで」


〈かしこまりました。では、転生を始めます。質問はありますか?〉


「君は何者?」


〈――まだ秘密、とだけ言っておきましょう……いってらっしゃいませ〉





〈…………必要な魂は、あと2人〉

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