ゲ一ムの序盤で「クソ雑魚」扱いされて死ぬ最弱キャラに転生したので、鍛えまくって生き残ろうと思います~やり込めば実は『裏ボス』だと判明する最強キャラにもかかわらず、過剰に努力し過ぎてました~
第5話 こんな化物の相手、やってられるか……!
第5話 こんな化物の相手、やってられるか……!
【side:指南役】
俺はかつてはこの国で一番とも言われた名高い剣士だった。
しかし、今では隠居して静かに暮らしていた。
そんな俺を呼びもどしたのは、シモーレ伯爵だった。
シモーレ伯爵は、息子のエスタに剣を教えてやってほしいというのだ。
最初は俺も、引退した身だから遠慮した。
だが、そのエスタという子供がとんでもない才能の持ち主だっていうんで、オーケーしたのだ。
きくところによると、そのエスタというボウズは国内でもはや誰も剣を教えるものがいないほどの猛者なのだという。
なら、俺の出番だな。
俺はかつて剣聖とまで呼ばれた男だ。
おもしれえ。そのボウズを俺がさらなる高みへ連れていってやろうじゃないか。
エスタのことを一目見て、わかった。
こいつはやべえ……。才能が服を着て歩いてやがる。
見るからに剣の才能にあふれていた。
それどころじゃない。彼はなににおいても天才なのだろう。
もしかしたらすでに俺以上……いや……それはないか。
「よろしくお願いいたします。俺に剣を教えてください! 俺はもっと強くなる必要があるんです!」
エスタは満面の笑みでそう抜かす。
はは……おもしれえ。
これほどまでに剣を極めておいて、まだ強くなる必要があるとか言いやがるのか。
10歳のくせして、とんでもねえ野心家だ。
いったいなにがこいつをそこまでさせるのだろうか。
これは、俺もやりがいがあるってもんだ。
だがまだこいつはほんの10歳ほどのガキだ。
自分の強すぎる力におぼれてしまいかねない。
「おう、お前がエスタか。よろしくな、俺にかかれば一人前の戦士にしてやる。戦士はなにも剣の腕だけがすべてじゃないからな。それよりも、戦士に大事なのは
「はい……!」
いくら腕っぷしが強くても、心がダメなら剣士としては失格だ。
俺はこいつに、それを教えていこうと思う。
剣の腕は十分だ。
俺が叩き込むのは精神だ。
「ようし、まずは素振りを見せてみろ」
「はい……!」
俺はまず、エスタに素振りをさせてみることにした。
エスタはいわれるがままに、剣を振る。
――ビュン!
「な…………」
見えなかった。
正直、俺は一切剣を見ることさえできなかったのだ。
これが……全力の素振りなのか……?
はは……もしかしたら、俺よりもはやいかもしれねえ。
末恐ろしいぜ……。
「ほ、ほう……なかなかやるな……」
「そうでしょうか……? 俺の素振りなんて全然だめですよね……。まだまだこんなんじゃ。こんな素振り、止まって見えますよね。遅すぎですよね……」
「そ、そうだな……まあ、頑張れよ!」
は……? こいつは何をいっていやがるんだ……?
今の高速素振りが止まって見えるだと……?
こいつの基準はどうなっていやがるんだ……。
まだこの先があるというのか?
まだ早く振れるというのか……?
はは……おそろしい子だ。
次は俺と模擬戦をやることにした。
こいつの天狗になった鼻をへし折ってやるぜ。
素振りのほうはなかなかだったが、実戦となるとまた違うからな。
「どこからでもかかってこい!」
――キン!
エスタの攻撃を、俺はすんでのところで受け止める。
「っぐ……なかなかやるな……!」
正直、これが俺のギリギリだった。
今の攻撃、見えなかった。
身体がなんとか反応してついていけたものの……これ以上は限界だ。
受け止めたはいいものの、腕がいまにも折れそうだった。
こいつ……マジで強いぞ……。
それからしばらく数回の剣撃を応酬する。
しかし、どんどんと俺のほうがついていけなくなる。
腕に疲労もたまり、これ以上は正直限界だ。
だがとうのエスタのほうは、余裕の表情だ。
くそ……。
「先生、もっと本気でかかってきてくださいよ! お願いします!」
「お、おう……!」
挙句の果てに、そんなことを言いやがる。
くそ、俺はさっきからこれ以上ないくらい本気でやっているのに……!
もはや、こいつに教えることなどなにもないだろう。
完全に俺の手には負えない。
化物だ……。
「ぐあ……!?」
しまいには、俺の剣が弾かれて地に堕ちてしまった。
くそ……完全に俺を凌駕していやがる。
これは……俺にはどうしようもない。
いったい誰がこの化け物に剣を指南できるっていうんだ……?
これじゃあ、こっちの身が持たない。
命がいくらあっても足りないってもんだぜ。
「や、やるな……今日は疲れただろう。続きは明日だ……」
「は、はい……! ありがとうございました!」
もうおしまいだ。
俺はその日で、仕事を降りた。
こんな化物の相手、やってられるか……!
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