第11話 溶けるように
結局会議は平行線のまま終わり、話し合いは翌日まで続くこととなった。
俺たちはホテルに泊まることになった。
どうせこんなことになるだろうと考えた近藤社長が用意してくてていたらしい。
……ただ、なぜか用意されていた部屋はダブルだった。
なんでだろうと佳奈に聞いたら、
「私がそう頼んだからじゃない?」
という回答が返ってきた。
––––なるほど。ならそうなるわけだ。
そんなこんなで会議が終わった後、俺たちはホテルで夜ご飯を軽く摂り(あの重苦しい会議の後に重いご飯を食べる気にはなれなかった)、明日に備えて早く寝ようということになった。
そして今現在、俺の後に佳奈がシャワーを浴びている最中である。
俺の脳裏に視聴者から送りつけられてきた数々のラブコメやラノベの展開がフラッシュバックする。
この状況で大体の男女は……
と、キュッとシャワーの栓が閉まる音が聞こえた。
そして5分ほどして、バスローブ姿の佳奈が出てきた。
濡れた髪が大変に艶かしい。
俺は視線のやり場に困り、とりあえず持ってきたライトノベルを読む。
がぁーっとドライヤーがかかる音がしばらく響き、やがて収まった。
そして、「どーん」という声と共に背中に佳奈が飛び乗ってきた。
お風呂上がりということもあり、佳奈の体はとてもあったかくて心地よかった。
俺はラノベを傍のデスクに置き、くるりと寝返りを打って正面からハグする形にする。
キスしてから、このぐらいの距離感は普通になってしまった。ハグしたり、くっついたり、手を握り合ったり。
キス自体は、あれから一回もしてないが。
そんなことを考えていたせいか、俺は視線が佳奈の唇に吸い寄せられる。
「キスしたいの?」
と、俺の視線に気づいた佳奈が蠱惑的な笑みを浮かべてそういった。
「……ん」
俺はこくりと頷く。
「んー、どうしよっかなー」
この前は自分からキスしてきたくせに、佳奈はそんなことを言って焦らしてくる。
「でもなー……」
そういえば以前、「高校生のうちは彼氏を作る気はない」とか「私は、結婚する相手としかキスもセックスもしたくないから」みたいなことを言っていた……ような気がする。
でも、ここでプロポーズしたらキスしたさでプロポーズするやべえ奴になる気がする。
もちろん、佳奈と結婚したくないかと言われたら当然「したい」というのが回答になるが……
いや待て。
前述のセリフの裏を返せば、俺を結婚する相手とみなしているということにならないか?
であれば、あとは俺が決意を固めるだけだ。
俺は、佳奈の瞳を見つめてその名を呼ぶ。
「佳奈……」
「なあに?」
甘く問い返してくる佳奈に、俺は答えた。
「18になったら俺と結婚してくれ」
「んー…………いいよ」
承諾の返事をすると、佳奈は顔を寄せてキスしてくれる。
この前より随分と長いキスが終わると、佳奈ひょいっと全身のバネを使って、俺に押し倒されているような体勢になった。
そして…………
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