第9話 神乃愛・Another
「地上のみなさんに、永遠の愛を!天より舞い降りた愛の天使、神乃愛です!」
“天使来たー”
“いつもの”
“来たー”
俺はいつも通りに両手でハートを作るモーションを再生する……と見せかけて、ぽちっと一つのアニメーション再生ボタンを押す。
これが、佳奈のいう『秘策』である。
画面が闇に染まり、ぐるぐると渦巻く。
“うん?”
“あれ?”
“なんだ?”
それに合わせて、俺は事前に用意していたセリフを読む。
「地上の者どもに
“ださっ”
“……もうちょっと名前どうにかならん?”
“Fallenじゃダメだったの?”
コメント欄では主に名前に関して不評のようである。
……一応言い訳しておくと、俺は全く違う名前にしようと主張した。
俺は画面の闇を解いて、Another衣装がお披露目する。
金髪に、同じく金色の瞳はそのまま。しかし、背中から生えている一対の羽は真っ黒に染まり、各種衣装はゴスロリ風に仕上がっている。
もちろん、モチーフは堕天使だ。
“うおおおお”
“この荒れてる時期に新衣装は嬉しい”
“なかなかいいね”
「我は裁きを下す。まずは我のファンを名乗ってSNSでレスバしている連中……恥を知れ」
“あ、裁きってそう言う感じなのね”
“天使の方で言えないことを言う感じか”
“……でも、あいつが悪いんだ”
「誰かに反応してほしいからSNSで暴言を吐いているんだ。そこに反応して相手の術中にはまってどうする。素直にブロックせよ」
“はい”
“おい、わかったか?”
“すみませんでした……”
“っていうか、堕天使もれすばとかいう言葉使うんだな”
コメント欄に謝罪の言葉が並ぶ。多分、結構身に覚えのある人間が多いのだろう。
「それから、私の配信にわざわざ悪口を言いにきている連中……恥を知れ。誰かを好きなら、そいつを直接支えよ。誰かを貶めることで相対評価をあげようとするでない」
コメント欄に謝罪の言葉は……並ばなかった。まあ、とうに暴言を吐いてモデレーター権を持つ人にBanされているし……言っても聞く耳を持たなそうである。
「それから、犯罪や、誰かのプライベートを暴く計画を立てている者……今すぐやめよ。誰かの権利を侵害することは何者にも許されぬ」
“あー、今朝のあれか”
“まあ、あれは……ね。例のツイートも消してないんでしょ?”
“↑そう言う思考がダメだって話だぞ”
“あ、そういうこと……俺も反省します”
「今日の裁きはここまでにしておこう。では、今日は初めてと言うことで、雑談配信をしよう。ほれ、皆のもの。我に話題を提供することをゆるそう」
“初めて?”
“そういうことにしておこう”
“話題……最近のゲームとか?”
俺は少し荒れがおさまったコメント欄と、久々の雑談配信をはじめた。
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