第7話 寝不足と炎上
翌日。俺は寝不足のまま朝を迎えた。
昨日は慌てて荷物を移し、佳奈にも手伝ってもらいつつ佳奈の部屋に荷物を運び込んだ。さすがに視聴者から送られてきた大量のプレゼントはおいておくことになるだろう。
いい加減、あの大量のプレゼントを整理した方がいいとは思うのだが……プレゼントを捨てるのもどうなのか……と悩み中である。
いずれ倉庫がついたマンションとかに引っ越した方がいいかもしれないが……そんなことはともかく。
荷物を運び込み、自分の生活空間(と、配信のスペース)の確保を終えた俺はひとまずチェックを兼ねた配信をした。
初配信と同じ環境だったためか、謎の緊張を覚えたもののいつも通りに配信をした(コメント欄は相変わらずの惨状だったが)。
その後、お風呂に入ってすっきりしたところでベッドでうとうととまどろんでいると、ごそごそと佳奈が布団に入ってきてむぎゅっと抱きついてきた。
佳奈は憎らしいほどにすぐ、すやすやと心地良さそうな眠りについたものの、俺は覚醒状態でそこからの3時間ほどを過ごす羽目になった。
「おはよ」
寝不足の俺に反して、佳奈はすっきりとした面持ちである。こころなしか、いつもよりつやつやとしているような気さえする。
「おはよう」
「……寝不足?大丈夫?」
「大丈夫」
「そう。じゃあ、今日は私が朝ご飯用意したから、早く食べてね」
佳奈はそういうとぺたぺたと寝室を出て行った。
俺は出て行ったのを確認してから制服に着替え始める。
服を脱いだところで、ばあんと寝室のドアが開いた。もちろん、犯人は佳奈だ。
パンツ一枚の俺に向かって、佳奈は
「大変だよ!」
といった。
––––今のこの状況の方が大変だ。
というツッコミを口にしそうになったが、そんな暇を与えず俺は佳奈に引きずられて行った。
連れて行かれたのは、リビング。テレビのニュースがやっていた。
『本日未明、レインボー株式会社の事務所が放火される事件が発生しました。迅速な避難が功を奏し、死傷者はいなかった模様です。犯人はすでに逮捕されたとのことです。ネット掲示板に本人と思われるユーザーの犯行予告があったとのことです。では次のニュース……』
……燃やされた?
「……一応、怪我した人もいなかったみたい。メビウスからの連絡」
「よかった」
「それはそれとして……その、今現在芸能人全般のSNSが炎上中だね」
「あー……」
俺はなんとなく理由を察した。
「その、ね。ネット掲示板に投稿された犯行予告が、Vtuberは死ね的なことを言ってるものだったらしくて。さらに、この前のツイート騒動。そして、犯人が芸能人の熱狂的なファンだったことも影響して……」
「炎上中、というわけか」
「うん。ちなみにこれ、とある芸能人のツイッターなんだけど」
佳奈はひょいっと見せてきた。朝ご飯おいしいな的な、炎上する要素が全く感じられない、至って平和なツイートだ。
そのリツイート、いいねが……十万超え!?
すごいな……などと思っていると、ついっと佳奈がスクロールしてリプライ欄を見せてきた。
hesnohtsa@cuehosan
こんなときによくそんなツイートできますね
|
ウマテガ@yummi
そうかそうか、つまり君はそんな奴なんだな
うておさ@etneoa
人の気持ち考えたことないんですか?
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ておらうか@tenosa
自分に言えよ
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うておさ@etneoa
はいはいwwwでたよ、芸能カス
|
ウマテガ@yummi
そうかそうか、つまり君はそんな奴なんだな
よくわからない指摘をする人、身勝手な正義を振りかざす人、なぜかそれにいちいち反論しに行く人、関係ないツイートを貼り付ける人、売名をしに行く人、したり顔で何か語っている人、ミームを貼り付ける人………
多種多様なツイートが溢れかえり、まさに地獄絵図といった様子だった。
「……やばいな」
「ちなみに、一時期の愛のSNSもこんな感じだったけどね」
これの相手をしてたのか……そりゃ、倒れるまで疲れる。
「一応、報復とかを絶対にしないように警告しておいたけど……」
「効果はあるかは疑問だな……」
先が思いやられる。俺と佳奈は深々とため息をついた。
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