第5話 面談
「こんにちは。愛さん。今日は来てくださり、ありがとうございます」
近藤さんは俺たちを小さな会議室に案内し、開口一番そう言ってぺこりと頭を下げる。
「いえ。それで、お話というのは?」
「はい。以前から提案していた、レインボー所属の件。それから、この緊急事態をふまえ、私たちにもチャット監視のお手伝いをさせていただけないか……ということです」
「……それは、
「はい。ルーナさんの登録者を大きく伸ばすきっかけになったのは、愛さんのおかげですからね」
確かに、ルーナはあの配信以降、続々と登録者数を伸ばして、今や30万人を越えようとする大物Vtuberだ。
ちなみに俺の現在の登録者数は15万人。だいぶ水をあけられてしまった。
「佳奈、どうする?」
「そうね…………」
俺は少し迷って、佳奈に判断を委ねることにした。
「いえ、せっかくのお申し出ですが、今回は」
佳奈はそう、断りの文句を口にした。
多分、情報流出していることを気にしているのと……あとは、これをいうのはちょっと気恥ずかしいが、二人でやってきたのに今更他の人を配信に関わらせるのが嫌だったのだろう。
メビウスにはモデレーター権限をあげているが……メビウスは俺たち二人両方と仲がいいので、例外というやつだろう。
「……そうですか。ですが、大丈夫ですか?今回の一件、下手すれば1万人規模で動いていそうですが」
「ええ。大丈夫です」
「妹である私も動きますからね」
と、膝の上から自己主張するメビウス。
「ありがとう。ともかく、俺たちは大丈夫です。……ただ、やめた人の中に何人か俺が男であることを知っている人がいるのは気がかりですね」
もし漏らされたりしたら……考えるのも嫌になるレベルで俺の配信が荒れることになるだろう。
「一応、証拠となるようなものは握っていないはずですが……」
「そうですね……一応、業務上知り得たことについては秘密を守ることを契約させてはいますが……今一度、周知しておくことにします。では、本日は来てくださりありがとうございました」
用事はそれだけだったらしい。俺は席をたってぺこりとお礼をした。
「それじゃ、佳奈……いこうか」
今日は、せっかく東京都まで来たので、高いご飯を食べようという約束をしたのだ。お金は、視聴者にもらったクーポンと商品券でカバーする予定だ。
「ええ」
「では、私はもうしばらくここにいることにしましょう。公式チャンネルの企画を考えねばなりませんので。……愛さん、佳奈さん、限界だったら、すぐに妹たる私に相談してくださいね」
「……わかってる。ありがとうな、メビウス」
俺たちはメビウスに手を振って事務所をあとにした。
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