第4話 会議、終了

「Vtuberの情報流出に関しては……『一切が誤りである』旨を主張して対抗するしかありません。皆さんも、動揺して秘密を話してしまうことのないように」


部屋の全員がこくりと頷く。


「そして皆さんにお願いしたいのは……毅然とした態度で配信を継続する……ということです」

「それは……」

「いやよ!あの地獄のような空気で一時間配信なんて、精神がもたないわよ!」


部屋の1人が立ち上がる。

顔には強い恐怖が張り付いている。おそらく、昨日か……あるいはその前の配信で集中的な攻撃にあったのだろう。


「メビウス、誰かわかるか?」

「事務所5位の、キャサリーン=アイリーン。視聴者からは、姉御って言われてる」

「ありがとう」


メビウスに聞くと、すぐに回答が返ってきた。

姉御と呼ばれているということは、面倒見がいい、快活なキャラで通っているのだろう。

そんな人でも、今回の一件は答えたようだ。


まあ、俺も佳奈がいなければとっくに心が壊れている気がするので、人のことをあれこれ言えないが。


「それでも、短時間の動画などを投稿してとにかく何らかの活動を行なってください。我々の活動の終了……それは、我々の敗北と同義です」

「…………私には、無理よ……ごめんなさい。私は今日で活動を辞めます」


絞り出すように、そう行って席に座るキャサリーン。完全に心が折れてしまっているようだった。


キャサリーンの引退宣言を受け、会議室にざわりとどよめきが広がる。

そして、それを皮切りに次々に演者たちが引退宣言をし始めた。


「えっと……私も、その……ずっと辞めたいと思ってて」

「私も……いままでお世話になりました」

「私も」


結果……計10人が辞める意思を表明した。

確かレインボー所属のVtuberは25人だ。つまるところ、全体の40%がいなくなることになる。


「そうですか。では、辞めたいと思っている方は、後ほど契約解除のご案内をしますので、別室での待機をお願いします」


近藤さんはあっさりとそういった。特に引き留めるようなこともしない。

……もしかしたら、これを機に演者を篩にかける気なのかもしれない。


「これで会議は終了です。何かある方は、後ほど私の方へ。神乃さんは、私の方に来てくれますか?……メビウスさんも一緒でいいので」


急に話がこっちに振られたので、俺は慌ててコクコクと頷いた。

ゴスゴスと顎がメビウスの頸に激突し、「痛いです!」とメビウスが抗議の声を上げる。

頭を撫でて謝ると、「もっと撫でれば許してあげます」という返事が返ってきた。


「……えー、それでは解散です、今日はお集まりいただき、ありがとうございました」


メビウスの頭を撫でていると、近藤さんがそう締め括ったので、俺は席を立つ。

メビウスは俺が立ちあがろうとしているのを察してピョンと飛び降りた。


「佳奈、行こう」

「うん」

「メビウスも来るか?」

「もちろん。他ならぬお姉ちゃんのことですからね」


いつも通りのメビウスの返事。

俺は「ありがとう」と言って、近藤さんの方へと向かった。

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