第7話 初・コラボ配信

そんなこんなで事務所訪問も終了し、いよいよコラボの日である。今回のコラボは、俺がルーナのチャンネルに訪問する形で、日曜日に行われる。

一応、時間は4時間という大ボリュームを予定している。


「月の世界よりこんルナ〜。月宮ルーナですわ。そして?」

「地上のみなさんに、永遠の愛を!天より舞い降りた愛の天使、神乃愛です!」

「はい、というわけで今回は、神乃愛ちゃんをお招きしていますわ!」


“こんルナ〜”

“この組み合わせ……どうなるんだ?”

“待ってた”

“まさか、推しの二人がコラボすることになるとは……”


コメントを見る感じ、今のところは好評のようだ。


「今日は何をしていくかというと?」


事前の打ち合わせ通りに、ルーナに水をむける。


「まずはお互いを知ろう……ということで、挨拶がわりの世界遊び大全ですわ!」


世界遊び大全……というのは、将棋やチェスからトランプの大富豪まで、様々なテーブルゲームが収録されているゲームである。


「三人以上で遊ぶモードの時は、視聴者さんの参加も予定されておりますわ」


“まじか!?”

“ゲーム機本体を持っていない……”

“ソフトが……仕方ない、買うか”

“おいおい……買ったとしても、参加できる可能性はかなり低いぞ”

“ふん、確率なんて関係ねえよ。参加するしかしないかだ”

“いいこと言っているようにみえてただの意味不明なセリフだ”


「それでは、まずは将棋からやりましょう」

「将棋……」


ルールくらいは知っているが、あまり得意ではない。……なんか嫌な予感がするぞ?

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……惨敗だった。まず将棋で五戦五敗。そして、続く囲碁でも同じように五戦五敗した。


「つ、強い……」


最後には、凄まじいまでのハンデをつけてもらったのだが、全く歯が立たなかった。


「これが、月の力……」


“すげえな……”

“完全に初心者っていうのもあるだろうけど……”

“ここまでハンデつけてこれか”

“すさまじいな”


「その……実は、これがやるの初めてなんですが」

「……マジで?」


“ふぁ!?”

“さすがに嘘だよな?”

“え?いや、でも結構打つの早かった気がするけど?”

“わかった!外部ツールだ!”


「その、要するに将棋って王を取ればいいんですのよね?」

「……うん?そうだね?」


俺は首を傾げる。一体何を言い出す気なんだろうか、この子は。


「そのためには、全てを犠牲にしてもいい……それが将棋ですわ。駒とは文字通り駒。それを操るならば、私の得意分野ですわ」

「あ、うん……」


四宮家の帝王学というやつか。

俺の背筋にぞくりと冷たいものが走った。


“ひえっ”

“なんか、すっごいぞくっときた”

“これ、『駒』を『人』に変えたら……”

“ルーナ様は女帝だったのか”

“月よりこんにちはの意味が変わる”


コメント欄の住人も同じように感じたらしく、結構散々な言われようだ。


「囲碁も同じですわね。小を切り捨てて大をとる。それを徹底すればいいだけですわ」


“簡単に言うなぁ……”

“元々の勝負勘が違うんだろうな”

“これ、他のゲームも同じことになるんじゃないか?アクションゲームとか以外”

“アクションゲームもなんとかなっちゃう可能性も……”

“ありそう”


「すごいなぁ……」


俺はただ感心することしかできなかった。

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