デビュー編エピローグ
「ふーっ」
なんとか大量のプレゼントのチェックを終えて、自宅への発送手続きを完了したのち。俺はなぜか、佳奈の家に泊まることになっていた。
ちなみに今の俺の格好は女性もののパジャマである。
「愛、大丈夫?」
「なにが?」
俺は頭を佳奈の方へと向ける。
「疲れてない?」
「……肉体的疲労はあるけど……そこまでじゃないな」
「ならよかった。ほら、おいで」
佳奈はソファに座っている俺の横に腰を下ろすと、ひざをぽんぽんと叩く。
「……?」
しかし、俺は何を求められているのかさっぱりわからなかった。
佳奈はもどかしそうに首をふると、俺の頭をひょいと掴んで太ももに押し当ててくる。
つまりは、膝枕というやつだ。
「よしよし」
「…………そんなに心配しなくても、大丈夫だぞ?」
多分、佳奈はお昼ぐらいのあの一件をまだ気にしているのだろう。たしかにあの瞬間はとてつもない恐怖を感じたが……佳奈が直後に癒してくれたし、それにお風呂に入るときに女装を解いたことである程度拭い去ることができた。
「だーめ。……あーいうのって、結構心を疲れさせるのよ」
言葉には、経験からくると思わしき重さがあった。学校一とも称される美しさを持つ佳奈のことだ。多分、これまでにもいろいろあったのだろう。
佳奈は、すっと俺の目の上に手を当ててくる。佳奈もお風呂上がりのため、温泉のごとき温かさを持っている。俺の体から自然と力が抜けていく。心の底にあった冷たさがだんだんと消えていくのを感じる。
「佳奈……」
「……どーしたの?」
名前を呼ぶと、佳奈が甘く問い返してくる。
「いつもありがとう」
「……ふふ。どういたしまして」
如月の心地よい熱を感じながら、俺は眠りへと落ちていった。
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––––少し大胆すぎただろうか……
私はそんなことを考えつつ、傍のスマホを手に取って『神乃愛Ch.』のページを表示する。登録者はもうすぐ10000を超えそうであり、直近の配信の視聴回数はすでに50000回を超えている。
まだ、このVtuberというジャンルの競合は少ない。このまま、登録者10万人くらいまでは簡単にいくだろう。一応、伸び悩んだ時のためのテコ入れ方法もいくつか作ってある。
そして、そこまでいけば高校生としてはかなり多い収益を得ることができるだろう……さすがに、それで一生を食べていくには桁が一つ足りないが。
––––そうすれば……
私は愛の頭を撫でて、その先を頭の中から追い出す。ほっぺをぷにぷにと弄ぶと、んん……とかすかな呻き声をあげて指にほっぺをこすりつけてくる。
––––守ってあげないとな……
私はそう、人知れず決意を固めるのであった。
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