第6話 勉強会
翌日。俺は佳奈の部屋へと来ていた。
言い忘れていたが、今日は創立記念日のため休校である。そのため、朝から勉強会を開けるというわけだ。
俺の格好は、いつもの女装に、この前の合コン前のデートで購入した黒のストレートロングスカートにぴったりめのトップスというもの。佳奈も「お、着てるね〜」とご満悦そうだった。
「……それで、何をしよっか?」
部屋へと上がり、リビングのテーブルで一息ついたところで、佳奈がそんなことを言い出した。
「勉強するんじゃないのか?」
俺はきょとんとして問い返す。
「私、自分から勉強したことがないんだよね……」
と、佳奈。つまるところ、勉強の仕方がわからないらしい。
『もっとできるはずよ』とプレッシャーをかけられていた……というようなことを言っていたので、今までは親、あるいは塾の先生の言われるがまま勉強していたのだろう。
「とりあえず、教科書をさらってみたらどうだ?それか、授業ノートを見るとか」
「のーと……」
佳奈が知らない単語を聞いたような表情になる。
「えーっと……ノートとってる?」
佳奈は無言で目をそらす。そういや、隣の席でこいつが授業中にノートとってるのを見たことがない。
いつも窓の外をみていたり、黒板をぼーっと眺めていたりしている気がする。
「……本当に勉強が嫌いなんだな」
「うーん……小学校までは好きだったんだけどね……中学校から勉強してもまったく成績が上がらなくなったのよね」
それでプレッシャーをうけているうちに、周囲の期待と現実とのギャップに苦しみ勉強が嫌いになっていった、というわけか。
「どうするか……とりあえず、問題集をいくつか持ってきたからといてみないか?」
「そうね。愛ちゃんがそういうなら」
佳奈はそういうとテーブルにつき、いそいそと筆箱を取り出して俺が差し出した問題集を解き始めた。
そして30分後。これまでの1ヶ月間、全く勉強していないことが判明した。ここ10日ほどはVtuberのあれこれをやっていたと考えても、全く情状酌量の余地はない。
「……これはやばくないか?」
「…………」
佳奈は無言で耳を赤くしてこちらを睨んでいる。
「えーっと……とりあえず、基礎からやってこうか。俺はもう一冊の問題集を解いてるから、なんかわからなければきいてくれ」
「……むー」
問題集を最初の方から、教科書とにらめっこしつつ解き始めた。
頭の回転自体はそこまで悪くないのだろう、けっこうペースは速い。
美人は何をしても絵になる……というが、佳奈の勉強している姿もなかなかに絵になっていた。
……さて、こうしちゃいられない。
俺も自分の持ってきた問題集に手をつけ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます