第2話 初配信振り返り

翌日の昼休み。


俺たちはいつも通りに屋上で昼ご飯を食べていた。今日のおかず当番は如月。どうやら近所で売っていたからあげを買ってきたらしい。生姜が効いていてとても美味しい。


「それで、昨日の配信だけど……」

「どんな感じだ?」

「評判は上々。見て」


如月は俺のチャンネルの画面のトップページをみせてくる。初配信の視聴数が一万を超え、チャンネル登録者数も一気に1000を突破していた。


「すごいな……」

「うんうん、愛の可愛さならこれくらいはいけると思っていたよ。まず数字的には大成功だね」

「だな」


俺は愛の可愛さうんぬんというところを聞き流しつつ同意した。


「でも、内容的には結構課題が多かったね」


たしかになあ……ぱっと思いつくのは……


「あんまり、これが見どころ!みたいなシーンは作れなかったな」

「いわゆる切り抜けそうなシーンだね。初配信で内容が決まっているからっていうのもあるから、ある程度は仕方ないけど」

「まあ、そうだな」

「ただ、意図的に見所シーンを作るのはむずかしいから……そこは、愛の配信者としての才覚に期待だね」


配信者としての才覚……うーん。難しいことをおっしゃる。


「そういえば、雑談配信って何をしたらいいと思う?」

「雑談だよ」


……………。


「冗談だって。うーん、そうだね。アニメとか、ほんとかの話をすればいいんじゃないかな。視聴者に話題を提供してもらうのもありかもよ?……そうだ、SNSに投稿してみようか」

「何を?」


如月はぽちぽちとスマホを操作してこちらに示してくる。


『今日の雑談配信、何話そう……みんなの提案はあるかな?』


と、神乃愛名義のSNSアカウントの投稿画面。


ちなみに、俺のチャンネルやSNSは如月の管理下にある。

如月曰く、心の健康を保つためにも、演者本人が配信し初めでSNSを見たりするのは絶対にやめておいたほうがいいとのことだ。


「投稿しちゃっていいよね?」

「ああ。なんかいいやつあったら教えてくれ」

「りょーかい。ところで愛」

「なんだ?」

「私を彼女にしたいとは思わないのかな?」

「ごっほ、ごっほ」


俺は思いっきりむせた。


「なんだ、いきなり」

「私って、ほら美少女でしょ?」

「……まあな。学校で一番美少女だ」


俺は同意する。すると、如月はそんなーと言ってくねくねと揺れた。とても楽しそうだ。


「それにほら、性格もいいでしょ?」

「……そうか?いや、そうだな」


俺の脳裏に数々の忌まわしき記憶が蘇るが、同意した。如月はほっぺたを膨らませる。


「私が男の子なら、好きになるんじゃないかなーと思うんだけど」

「……まあ、そうだな」


如月のことをどう思っているか……か。


「俺は如月のことふんわりと好きだぞ」

「……ふんわりと?」

「ふんわりと」


小首をかしげる如月。

可愛らしいが、俺はじーっと如月の瞳をのぞいて説明を拒否する。

そのまま見つめあっていると、キーンコーンカーンコーンと予鈴がなる。


「さ、いくか」


俺は後片付けをして、教室に戻るべく立ち上がった。

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