つまらない。

画面の中では、よくわからないドッキリで内輪受けに走るTuber集団の動画が移っている。最初の方の創意工夫に溢れた動画は好きだったが……やがて、ネタ切れしたのかこんなネタに走るようになってしまった。

はあ……

ため息をついて、画面を閉じる。そして、特に意味もなく掲示板を周回し始める。最近はVtuberというものが出てきているらしい。その中でも、二つの会社が勢力を増やし始めている。

すなわち、『レインボー』と『ヘルプミー』。後者はなんでこんなネーミングになったのか……掲示板による永遠の議論の種となっている。

つまらん。

所詮は企業の利益のため搾り取られるだけだ。企業系に面白いものなんてあるわけがない。もっと、こう……個人の情熱が感じられるものがないと。

……ん？

ふっと興味に惹かれ、掲示板に貼られているTubeの動画へと繋がるリンクへとアクセスする。

『地上のみなさんに、永遠の愛を！天より舞い降りた愛の天使、神乃愛です！』

少しトーンが高めの声でそんな台詞を言いながら、ふわんふわんと画面の中のアバターが両手でハートマークを作る。

ズキューン。

ハートが撃ち抜かれた音がしたが、なんとか堪える。

まて。まて。まだ慌てる時間じゃない。企業が金をかけて作っただけの可能性も……しかし、掲示板の議論をみる限り、個人勢で決定のようだ。というのも、公式が個人勢と明言しているとのこと。

一旦停止していた動画の再生をスタートする。

『みなさん、日常で愛を感じられていますか？感じられているみんなも、感じられてないみんなも、大丈夫！私の配信の時間で、皆さんに愛をお届けしちゃいます！』

か、かわいい。天使だ……

『配信の内容については、初配信で皆さんと決める予定！ぜひきてくださいね！では、またお会いしましょう！あなたの天使、神乃愛でした！』

絶対見に行く。待っててね、愛ちゃん……

こうして、自己紹介動画によってファンが早くも生まれていくのであった……

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