第8話 いざ、如月の家へ。
チラシ配りは、なんとか終了した。合コンよりは難易度が低かった……ような気がする。
「うーあーうー」
そして翌朝。まだ残る倦怠感とともに起きると、声が出るようになった。
なんだかまだ声が枯れているような気がするので無茶は禁物だが。
「うー」
俺はひとしきり唸って声の調子を確かめてから、起き上がってロリータファッションへと着替え、キッチンへと向かう。
今日の朝食は学校近くの牧場で売ってるベーコンに、スーパーで買ったお茶漬け。
そして今作っているのが、お弁当のおかずは野菜炒めだ。
二人分の野菜と肉を焼いてタレと絡めていると、如月からメールが飛んでくる。
『件名・おにぎり
おにぎりちゃんと作ってるよー。味はお楽しみ』
俺たちは毎日、片方がおかずを、片方がおにぎりを、それぞれ交互に持ち寄るのを決まりにしている。
ばれたらどんな目に合うかわからないので絶対に秘密だ。
今日は休日だが、いつものようにおかずを作って持ってこいとのお達しである。
朝食を終えて、乾燥までしてくれる全自動洗濯機に洗濯物を放り込んでスイッチを入れてから外に出る。
電車に1時間ほど揺られ、メールで送られてきた住所まで行く。
今日はいよいよ、俺のアバターを見せてもらえるらしい。
セキュリュティの高そうなマンションのインターホンをぽちると、『はい』と可愛らしい声が聞こえる。
「えっと、神川愛です」
『あら、可愛い女の子ね。でも声はとってもハスキー。いいわよ、入りなさい』
どうやらお母さんらしい。……っていうか、先入観って怖いな……俺の男声が、ハスキーな声だと都合よく解釈されてしまった。
中に入り、201号室へ。そこで改めてインターホンをぽちると、ガチャリと扉が開いた。
「いらしゃい。今日もかわいいね」
少女漫画にでてくるイケメン主人公のような台詞とともに俺を迎える如月。
家だからか、ショートパンツにTシャツというラフな格好だ。
憎らしいほどに似合っていた。
「……それはどうも……あれ?お母さんは?」
「お母さん?そんなのいないよ?」
「え、さっきのインターフォンは…」
「もちろん私だよ。騙されたねー」
そういうとニヤニヤとこちらをみる如月。どうやら先入観にとらわれていたのは俺のようだ。
……あれ?ていうか、お母さんがいないということは……
「もしかして、今家に一人?」
「そうだよ?まあ、入りたまえよ」
如月はそういうと俺を手招きする。
「失礼します」
俺は一応そういってから、靴を脱いで中に入った。
……なんというか、甘い匂いがする。なんというか、禁断の花園にはいったようでドキドキする。
「手洗いうがいしてきてね……おわったら、私の部屋においで」
「……了解」
俺は言われた通り洗面所で手洗いうがいを済ませて、『佳奈』と書かれた部屋の扉を開ける。
ベッドに寝っ転がってタブレットをいじっていた佳奈は入ってきた俺を見て起き上がると、大きなパソコンが置いてある机へと座る。
「そこに座ってね」
と、用意されていた椅子へ俺もちょこんと座る。
「それではいよいよ、愛ちゃんのアバターを発表します!」
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