第6話 次の試練は?

翌日。

学校へ行って机へ突っ伏す俺の頭をぽんぽんと誰かが叩く。

……まあ、『誰か』というのはもう99%わかるが。


顔を上げると、予想通り如月がこちらを覗き込んでいた。


「おはよ、愛ちゃ……愛」

「…………っ」


昨日のカラオケにより、俺は現在喉が死んでいて声が出ない。シャウト系を歌わされまくったら、誰でもこうなる。

……ていうか如月。俺のことを今ちゃんづけで呼ぼうとしただろ。


「無視するなよー、うりうりー」


如月は俺が今声でない状態なの絶対わかってるくせに、そういってほっぺたをぐりぐりと突き刺してくる。


「…………っ」


残念ながら、抗議しようとしても声が出なかった。


「ふふふー」


ひたすらほっぺをつついて満足したのか、如月は俺の隣に腰を下ろした。


俺の教室での席は、一番後ろの窓際という特等席だ。


この学校は、何を思ったのか山の頂上に建てられているため、窓から見える景色はとてもいい。

空の機嫌がいいと、遠くにうっすらと富士山を望むこともできる。


さらに付け加えるなら、隣の席にいるのは学校一の美少女、如月佳奈だ。


右隣には高台からの景色。左隣には一輪の可憐な花(この言い回しはちょっとキザすぎるか?)。

自慢じゃないが、この学校でも指折りの席だと思う。


「それで、第二の試練についてだけど……」

「…………っ」

「昼休みにね」


……またあの地獄のような試練をするのは勘弁してほしいが。

俺は不安を抱えたまま、昼休みを迎えた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「それで、第二の試練はねえ……バイトだよ」

「…………っ」


バイト?まあ、それくらいならなんとかなるか。


「ちなみに今日ね」


今日!?まだ昨日の疲れも取れてないんだが……


「明日は祝日なんだし、大丈夫でしょ。ちなみに声出すの禁止で。大丈夫。知り合いのつてを辿って頼むから、女装してても大丈夫だよ」


相変わらず、顔の広いやつだ。

……ていうか、声出すの禁止?それでバイトって成立するのか?


というようなことを身振り手振りで伝える(如月は微笑ましそうにこちらを見ていた。誰のせいだと思ってるんだ……)と、如月は「大丈夫だよ」ともはや信用度がゼロのセリフを吐く。


「チラシ配るだけの簡単なお仕事だから。女の子の可愛さを駆使すれば一発だって!」

「…………っ(本当かよ?)」


俺は再び身振り手振りでセリフを示す。


「ほんとほんと。それに、VtuberっていってもTuberの一種だからね。見知らぬ人へ魅力を示すこととか、あとはいざという時の度胸とかを鍛えなきゃ」


……なんかこじつけっぽい。が、まあ言っていることは理解できる。


「大丈夫。私がちゃんと見守っていてあげるよ」


……面白がって見ているの間違いじゃないのかと俺は内心思ったが、黙っておいた。

声が出なかったし、いっても無駄だと思ったからだ。


そして、第二の試練、チラシ配りが始まる……

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