第5話 二次会

2時間の合コンを乗り越えた俺に待っていたのは、女性陣のみの二次会だった。会場は女の園といった感じのおしゃれなカフェで、まるでオアシスのようなリラックスした空間が広がっている。


疲れ切った俺はカフェの机に項垂れてケーキをつつく。


「なんか、女の子みたいな疲れかたしてるね」

「身も心もメスになっちゃったってやーつー?」


二人のからかう言葉も俺には届かない。如月は珍しく俺の背中を撫でて甘やかしてくれる。


「ねえねえ、二人は結局付き合ってるのー?」


と、莉子さん。ちらりとみると、お目目をキラキラさせていた。

色恋沙汰に目がないのはどの女の子も同じのようだ。


「いーえ」

「へー、他に彼氏は?」

「高校で彼氏を作る気は今のところないかな。私は、結婚する相手としかキスもセックスもしたくないから」

「せっ……」


俺は如月のセリフに絶句する。美少女がせっ……とかいってるのは、なんというか……アンモラル感が半端ない。


「へー、そんなの初めて聞いたけど!でも、別にキスしなくてもつきあえるでしょ?」

「無理かな。多分、私が我慢できないから。だから、そういう関係にはなりたくないの」

「ふーん。でもでもー、佳奈と釣り合うような男はやりまくりだよ?」


おっと。かなり生生しい話が出てきた。


「別に私は容姿は普通でいいわよ。性格が良ければ」

「ふーん。でも、性格と容姿は比例するっていうじゃん?」

「そういう莉子はどうなのよ。高校入って彼氏できたの?」

「えっと……」


逆襲を喰らった莉子さんが目を右往左往させる。


「莉子はね、3歳差のかれがいるよ」


隣の凛さんがあっさりとばらした。


「もー、なん言っちゃうのよ!」

「三歳差……大学生?もしかして、もうしちゃった?」


俺は果たしてここにいてもいいのだろうか……しかし、今更脱出するわけにもいかなかった。


「いや、違う違う」

「まさかとは思うけど……中一!?あまりにも幼すぎないかしら?」

「まー、確かにそうだけどねー。なんか、かわいいというかなんというか。それでいて時々かっこいいのがねー。いいのよ」


くるくるとコーヒーをかきまぜつつ惚気を語る莉子さん。

なるほど。幼い可愛さを楽しめるなら、合コンであんなに優しかったのも納得だ。

……つまり彼らは、中一と同一視されている……うん、深く考えないようにしよう。


「……したの?」


主語も目的語もない言葉で如月は問う。しかし、何を問うているかは明確だった。言語とはなんと奥深いものだろうか……


「まあ、流石にねー。声変わり前のショタの味を愉しむのも確かに魅力的だけど、事故ったら洒落にならないからねー」


とても生々しい。なるほど、女子の日常はこんな感じなのか。

男子の想像とは全く違う世界だ。


「凛は?例のフィアンセとはまだ続いてるの?」

「うん、続いてるよ。ときどきデートするくらいだけど」


お嬢様っぽいなと思っていたが、本当に良家の生まれらしい。二人の口ぶりだと、凛さんには中学生から婚約者がいたようだ。


「へー。やっぱりかっこいい?」

「うん。大学でいろいろやっているらしいよ。聞いてもよくわからなかったけど……」

「理系?文系?」

「理系。なんかバイオとゲノムがうんぬんかんぬんとか訳のわからないことを言ってた」

「理系かー。変な虫はつかなそうだよね」


息もつかぬマシンガントーク。もうついていくことができなかった。俺はそろそろ体力ゲージも回復してきたので顔を上げる。

すると、がしっと肩を掴まれた。


「お、復活したね。じゃあ、カラオケいこっか」

「そうだね。ひさびさだな、カラオケ」


……どうやら、如月の友人だけあって、この二人も体力無限大らしいかった。

どうやら、数日は反動を覚悟しなきゃのようだ。

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