第2話 二人目

 ヨコヅナイワシの電話が切れて約三十分後、また電話が鳴りました。還付金に目がくらんでいるわたしは迷わず電話を取りました。


「もしもし? カピバラさんのお宅ですか?」


「はい、そうですが」


「わたくし無限区役所国民健康保険課のダイオウグソクムシと申します」(個人情報ですのでいろいろ変えてあります)


「あ、御世話になっております」


「はい。ヨコヅナイワシの方から連絡が行ったと思いますが」


「はい。先ほどお電話いただきました」


「ああ、それで還付金のことは聞いてますね?」


 今度の声は中年男性のいくらか横柄な感じの声でした。この幾分か不快な声に微かな不信感を覚えたことが、後に我が身を守りました。


「はい、伺いました」


「それがですね、郵便でやりとりをしていると遅くなるので、直接、還付金をお渡ししますのでね」(*はい、大きなヒントが出ました。「直接渡す」)


「わたしが銀行の担当者に話を通しておきますから、銀行まで直接取りに行ってもらいたいんですが、いいですか?」(*また、ヒント出ました。区役所から銀行へ話を通すんだってよ)


「はい、銀行に行くんですね」(*一方わたしは、ここまでヒントが出ても、欲が深いのでまだ疑っていません)


「ええ、そうです。預金通帳とと身分証明書を持っていって下さい。それでお使いの銀行はどこですか?」


「ううちょ銀行です(個人情報なので……以下、略)」


「え? ううちょ?」


 ダイオウグソクムシはあきらかに動揺しました。

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