第34話 洞窟と採取欲
「作戦としてはこうだ。
まず、私が巣全体に睡眠欲を増幅させる魔法をかける。次に、アナが巣の外から他三人に神経に痛覚を与える聖法をかける。そしてその後、三人で蜂蜜を採取する、といった感じだ。」
作戦の概要を聞くと、樹生は少々怯えていた。
「痛覚を与えるって、考えるだけでも恐ろしいな。」
「睡眠欲を減少させるでもよかったが、痛覚を与えるほうが簡単だからな。」
「そうなんだ...。」
エヴィラの発言に、樹生は若干引いた。
「ちょっと待って!その作戦、僕がその聖法を使える前提で話していませんか!」
すると、アナが作戦に異議を申し立てた。確かに、この作戦はエヴィラが今考えた作戦で、話し合いで練り上げたものではない。しかし、エヴィラはそんなことはつゆ知らずといった感じで聞き返す。
「なんだ?もしかして使えないのか?」
「えっ、いや、使えないというか...。」
エヴィラの明らかな強気の姿勢に、アナは声が小さくなる。だが、アナは反論せねばと、顔を上げる。
「そもそも、使ったことがないんです!確かに、一年次にそのような聖法があると習いましたが、実際に使ったことは...。」
「ほう、習ったことはあるんだな。」
「えっ、まあ、知識として取り入れた程度ですけど。」
「ならば、できるはずだ。」
「えぇ。」
エヴィラの強気の説得に、いくら反論しても押されてしまう。そこで、エヴィラはとんでもない提案をする。
「ならば、試しに私にかけるといい。」
「ええっ!」
エヴィラは自分を実験台にしろという。アナは当然驚きの声を上げ、否定しようとする。
「駄目だよ!危ないよ!」
「どうせこの後かかるんだ。今かかったところでさりとて問題ではない。」
「でも...」
「いいから早くしろ。時間がもったいない。」
エヴィラはアナを急かし、聖法を使うように促す。アナは授業の内容を思い出し、渋々使う。
「…『刺痛―ぺリル―』。」
「...ッ!」
詠唱の後、エヴィラは一瞬苦しそうな顔をする。しかし、すぐに表情は戻った。
「ふむ、問題なく使えているな。」
「そうですか?!…良かった~。」
「これで作戦における問題点はなくなったか?」
エヴィラが確認をとると、全員が首を縦に振った。
「よし。それじゃ、早速行くぞ。」
その言葉を合図に四人は洞窟の中に入る。
洞窟の中は、外の光が入ってきており、何とか光を点さずに歩くことができる。四人は警戒しながら中を進む。洞窟を進んでいる最中、グラムがあることに疑問を持つ。
「なあ、ここってケーバルブーの巣の中なんだろ?何で、蜂の一匹もいやしないんだ?」
そう、グラムは洞窟に入ってから一度も蜂を見なかったことに疑問を持った。それに対して、エヴィラが答えた。
「それはケーバルブーが夜行性だからだ。正確に言えば、光に弱くなったというべきか。」
「光に弱くなった?」
「ああ。暗いところにしばらくいると、暗闇に目が慣れてある程度景色を見ることができるだろ?ケーバルブーも同じように、洞窟内に巣を作ったことによって暗闇に対して強い視力を得た。しかし、その分光にはめっぽう弱くなってしまったというわけだ。」
「「なるほど〜。」」
「まだここは外の光が入ってくるだろ?だから、蜂を見ないんだよ。」
「なるほどな。よく分かったよ。」
エヴィラの説明に納得する三人。その説明を聞くと、三人は少し安心しながら洞窟を進んでいった。
洞窟に入ってからしばらくすると、外の光が届かなくなった。すると、ちょうどそのあたりで大きな空間が開けているのが見えてくる。グラムの耳がピクピクと動き、とあることに気付く。エヴィラも、先に進もうとする2人を制止する。
「二人とも止まってくれ。」
「…?どうしたんだ?」
「そうですよ、早く行きましょう?」
「いや、進むな。この先から羽音がする。」
「「…!」」
グラムが聞こえた音を伝える。
「羽音、ということは…」
「ああ、この先の空間がケーバルブーの真の巣だ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます