第33話 作戦会議と解説欲
四人は、洞窟の前で作戦会議をしている。
「さて、ここからどうやって蜜を取るのか、だが。」
「普通に入ってビンに詰めるだけではダメなの?」
アナの提案を聞いた三人は、呆れた目でアナを見た。
「お前本気で言ってるのか?」
「えっ?えっ?」
ライジがその言葉に対して聞き返す。しかし、アナは困惑した様子だった。頭を抱えたエヴィラが説明する。
「当然だが、巣の中はケーバルブーだらけだ。愚直に入って蜜を取ろうとすれば、間違いなく反撃を喰らう。最悪四人ともお陀仏だ。」
「そのくらいわかってるよ!」
今の説明でバカにされていると感じたアナは、強く言い返す。
「だから、急いで入って、すぐに蜜を回収して、出ればいいだろ!」
「「「…はぁ。」」」
「なんで、ため息つくんだよー!」
アナの脳筋すぎる提案に、三人は思わずため息をついてしまう。
「今の発言は置いておいて。」
「何でだよー!」
「防護服が無い以上、中のハチをどうするかが問題だ。」
アナを放っておいて、エヴィラが話を続ける。そこに樹生が提案する。
「ハチを眠らせるとかできないのか?あと、煙幕とかでどうにかするとか。」
「煙幕は自分たちが入ることから却下だな。だが、眠らせるか…。」
エヴィラが何やら悩んでいる。
「どうした?問題があるのか?」
「ああ、いや。悪く無い提案なのだが…。」
エヴィラは答えを言い淀む。
「どのようにして眠らせるかが問題でない。」
エヴィラが悩みを話す。
「魔法とかじゃできないのか?」
「もちろんできるさ。ただ、どう言った魔法を使うかが問題でな。」
「…?」
エヴィラの発言に疑問を持つ。どうやら、グラムも首を傾げているようだ。その様子を勘づき、エヴィラは魔法の説明を始める。
「睡眠を誘う魔法というだけでいくつか種類があるんだ。ただ眠気を誘うのか、意識を失わすのか、睡眠欲を増幅させるのかみたいにね。」
「へー。」
「それだけじゃなく、複数の対象に対してどうやってかけるのかという部分にも種類がある。範囲を指定して、その範囲内の対象にかけるのか。それとも一体ずつ魔法をかけるのか。」
「それは範囲でやればいいんじゃないか?負担も少なそうだし。」
樹生は説明で提示された例を一つ提案する。
「負担が少ないのは確かだが、その場合君たちにもかかる可能性があるからな。」
「えっ、そうなの?!」
「魔法はそこまで万能じゃない。」
エヴィラは樹生の提案に対して、問題点を挙げる。そして、樹生の認識の違いから、魔法そのものについて説明する。
「魔法についても説明しておけばよかったな。
いいか、魔法というのは悪魔種だけが使える特殊な能力だ。ここまではわかるな。」
「ああ。」
「その理由は体内に魔力エネルギーを感知することができる器官を持っているからだ。」
「そうなのか。」
「ここまではいい。ここからが重要だ。
魔法というのは詠唱と提唱の二つの工程に分かれている。
まずは詠唱について。詠唱は、魔力エネルギーに対してそのような行動を起こすのかの説明だ。別の表現をするなら、世界に対して魔法の設計図を提示すると言った感じかな。私としてはこちらの表現が好きだな。
次に提唱だ。こちらは、魔法名を言い、魔法を発動するというスイッチの役割がある。
『雷槍-ゼラウロス-』を例に挙げると、雷槍の部分が詠唱で、ゼラウロスが提唱だ。
ちなみに、詠唱や提唱を口で発している理由は、脳の処理を軽くするためだ。一応、無詠唱でもできなくはないが、あまりに非効率的だ。
また、聖法もエネルギーが違うだけで、同じ原理ではある。
これで、私がいいたいことはわかったかな?」
「ああ、何となくは。」
エヴィラの説明によって、先程の睡眠を誘う魔法についての悩みが樹生にも共有された。つまり、使う魔法によって詠唱の部分が変わり、最悪の場合負担がかかる可能性があると言うことだ。睡眠導入という点だけでもいくつか種類があり、ただ負担のかからないものを選ぶだけではリスクが生まれてしまう。そのようにあらゆる可能性を考えてエヴィラは悩んでいたのだ。
「じゃあ、どうするんだよ。範囲を決めてやるのはダメ。個々でやるのも負担がかかる。そもそも睡眠方法も色々ある。こんなところで悩んでいる場合じゃないだろ。」
樹生は思ったことをエヴィラにぶつける。エヴィラはその言葉を聞いて、頭を掻きながらため息を一つつく。そして顔を上げる。
「はぁ、悩んでもしょうがないか。よし、この作戦で行こうか。」
「お!何か思いついたのか!」
エヴィラは作戦を思いつき、それをグラムが聞いてくる。
「ああ。ただ、この作戦には君の活躍が必要だ。」
エヴィラはそういいながらアナを見る。
「えっ!僕?!」
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