第31話 蜜蜂を理解欲

 4人は歩きながら、グラムから依頼の内容を聞いていた。


「今回依頼されたのは、市場ではなかなか出回らない蜂蜜の入手だ。なんでも、その蜂蜜は市販で売られているものよりも甘く、栄養価も高いらしい。ただ、入手方法が確立していないのか、未だに市場ではなかなか出回らず、価値をどんどん高めているらしい。」

「そんな依頼よく受けようとしたな。」

「まあ、報酬が良かったからな。」

「ほう。」

「どのくらいなんだ?」


樹生が報酬について遠慮なく聞く。


「厳密にはいえないが、5桁ほどだな。」

「5桁?!」

「そんなに?!」


その報酬の多さに樹生、そしてアナまでもが驚く。


「蜂蜜取るだけでそんだけもらえるんだから、受けるほかないよな!」

「確かに、そうだな。」


グラムの言葉に樹生は納得してしまう。アナも同様に頷く。


「それで、その蜂蜜は一体なんなんだ?流石に、蜂の名前くらいは聞いただろ?」


 エヴィラは報酬の多さに興味がないのか、蜂蜜の詳細について聞いてくる。


「ああ。確か依頼人は『ケーバルブーの蜜』って言っていたな。」

「っな!ケーバルブーだと!」


蜂の名前を聞いた途端、エヴィラは驚きの声をあげる。3人は驚いていることに疑問を持つ。


「なんだ?そんなにやばいのか?」

「やばいといえばやばいだろう。」


エヴィラは落ち着きを取り戻し、冷静に答える。


「っていうか、ケーバルブーってなんだ?」

「そこから教えようか。

 ケーバルブーは簡単にいえば蜜蜂の一種だ。ただ、普通のミツバチと違うところが二つ存在する。」


そう言いながら、エヴィラは指を二本立たせる。


「それが体の大きさと巣を作る場所だ。」

「体の大きさはともかく、巣を作る場所?」


ケーバルブ―の特徴に樹生は疑問を持ち、復唱する。


「ああ。まず、体の大きさについてだが、普通のミツバチよりも大きいということだ。ただ、オスに関しては一回り大きいという程度なんだが、問題はメスだ。メスは個体数は多くないものの、その体の大きさはオスの5倍は少なくともある。その中でも、女王バチともなれば、10倍、20倍、いやそれ以上の計り知れない大きさかもしれない。」

「かもしれないって…。」

「女王バチは個体差がかなりあるからな。」

「はぁ。」

「大きなハチか…ちょっと怖いな。」


エヴィラの説明を聞き、樹生は大きなハチを想像して一人勝手にぞっとしていた。


「それで、大きさについてはわかった。もう一つの巣を作る場所っていうのはどういうことだよ。」

「巣を作る場所についてだが、普通のハチなら木の枝などに作るだろう。しかし、ケーバルブーは木の枝には作らない。奴らが巣を作る場所は洞窟の中だ。」

「洞窟?!」

「…道理で見つからないわけだ。」

「洞窟の奥に巣を作り、オスが蜜を採取する。メスは子供の世話と巣の拡張。で、女王が子供を産むってわけだ。」

「へー。」

「ちなみにだが、洞窟といっても洞穴程度で、自ら掘るのではなく元よりあるものを利用しているに過ぎない。」

「なるほどな。」


グラムはエヴィラの説明を聞き、納得したかのようにうなずいた。


「…ふむ、洞窟に巣があるのは分かったが、じゃあどうやってその巣を見つけるんだ?」

「君、獣人種だろ?獣人種ならその鼻を使って」


「皆さん!」


 突如、先ほどまで静かだったアナが声を上げる。


「あそこに、ビアが!!」


アナが指をさした場所を見るとそこには、胸辺りに模様が描かれたビアがいた。

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