第30話 友好と依頼欲

「いやー災難だったな。ファータークに狙われるとは。俺もよく狩猟するから、辛さがわかるぜ。」


 いきなり現れた獣人は、近づきながらフレンドリーに語りかけてくる。それに対し、エヴィラが答える。


「君がこの鳥をやってくれたのか?だとしたら、ありがとう。」

「気にするなよ。狩猟は助け合いだからな。」

「しかし、ファータークだったか。道理で、狙ってくるわけだ。」

「きっと狙いはそのコーディだろうよ。」

「違いない。」


 どうやら、先ほど狙ってきた鳥は、ファータークだったらしい。ファータークとは、鷹に似た鳥で、森の中で誰かが狩った獲物を狙うハイエナのような習性を持っている。

 二人が談笑してる中、いまだによく理解していない2人が間に入る。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。ファータークってなんだよ。」

「そもそも、あなたは誰ですか?!」

「お、そういえば名乗り忘れていたか。」


そう言うと、男は弓を仕舞い、三人に向き直る。


「俺の名前は、『グラム・カイト』。見ての通り獣人種だ。年齢は24で、誕生日は…これは言わなくていいか。職業は狩人だが、今は旅をしながらその先々で依頼をこなしてるって感じだ。」


グラムの自己紹介に続いて、三人も自己紹介をする。自己紹介が終わると樹生は先ほどの質問を繰り返す。


「で、ファータークっていうのは何ですか?」

「敬語じゃなくていいぞ。堅苦しいからな。

 ファータークは、こいつのことだな。」


といいながら、先ほど仕留めた鳥を持ち上げる。


タークの一種で、別のやつが狩った獲物を狙う習性があるんだ。

 今回狙われたのも、そのコーディが原因だろうな。」

「なるほど。」


樹生たちはファータークの説明を受ける。

 その後、途中だったコーディの解体を済ませ、コーディの肉を一部グラムに渡した。


「なんか悪いな。もらっちまって。」

「気にするな。助けてくれたお礼さ。」


グラムは、そういうことならと、肉を素直に受け取る。

 肉などを仕舞い、三人はグラムに別れを告げる。


「では、私たちはこれで行くよ。先程はありがとうな。」

「本当にありがとうございます!」

「またどこかで会ったら、その時はよろしくお願いするよ。」


そう言うと、三人はグラムに背を向け再び歩み始めようとする。

 しかし、グラムがそれを止めた。


「ちょっと待ってくれ。」


三人は足を止め、振り返る。


「実はお願いというか、手伝って欲しいことがあるんだが、頼めるか?」


そう尋ねる。三人は顔を合わせ、エヴィラが口を開く。


「内容によるが、ある程度は許容しよう。」

「本当か?!いやー助かるよ!」


グラムは嬉しそうに微笑む。


「それで、一体どんな内容なんだ?」


「極上の蜜の採取だよ。」


「極上の…?」

「…蜜?」

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