第三章 甘い蜜に誘われて

第29話 獣人と狩猟欲

 アーケルディアを発ってから早一日。三人は今、森の中でコーディ(鹿のような動物)を狩ろうとしていた。


「…今だ。」


 エヴィラの掛け声とともに、茂みから樹生が飛び出す。そして、コーディめがけてナイフを投げる。投げられたナイフは一直線にコーディに向かい、見事に頸椎に突き刺さる。


「よし!」


コーディはそのまま倒れこみ、その後すぐに絶命する。

 3人は茂みを抜け出し、近寄る。


「刺さったところがよかったとはいえ、一発でできるなんて、さすがだね!」

「前に比べて、投擲の腕も上達したな。」

「ありがとう。いや、ほんとに。一発でできたのは運がよかったよ。」


二人は樹生の投擲技術を素直にほめる。ちなみにアナの敬語は、旅に出てすぐに二人に言われて外した。

 その後すぐさま、鹿の解体に入る。


「よし、これなら明日まで持つな。」

「やったね!」


 エヴィラが丁寧に肉を切り分ける。しかし、それを狙うものがいた。


キー


 突如、上空から鳴き声が聞こえる。聞こえたほうを見ると、一匹の猛禽類がこちらに向かってくる。


「うわっ!」

「あぶねぇ!」


樹生とアナは、嘴が当たらないように頭を押さえる。鳥は上昇し、枝にとまる。


「あの鳥、この肉を狙っているのか。」


エヴィラはその鳥を観察しながら、分析する。

 鳥は再び狙いを定め、飛んでくる。エヴィラは、持っていたナイフを構えて対抗しようとする。あと少しで、エヴィラの間合いに鳥が入ろうとした瞬間。


ヒュン


何かが風を切るようにこちらへ向かってくる。それは逸れることなく一直線に飛んでいき、鳥に的中する。


「あれ?」

「一体...。」


 様子を見ていた二人は唖然としており、エヴィラも少し驚く。冷静に落ちた鳥を見てみると、体に矢が刺さっていた。

 すると、矢が飛んできたほうから声がかけられる。


「おーい!お前ら、大丈夫かー!」


 そこにいたのは、弓を携え、戦斧を背負った、ウルルク風の獣人がいた。

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