第20話 植物を操作欲

「でもできるかな?」

「断言はできないが、あの時やれたんだ。今できない道理にはならないさ。」

「あの時は必死だったからさ。もしかしたら、何か条件があるかもしれないだろ。」

「だったら、それを調べるという意味でも今試してみるべきだろう?」

「ああ、確かに。よくよく考えたら、渋る理由もないからな。」


「あの、一体何の話をしてるのですか?」


 二人が『あの力』について話し合っている中、何も知らないアナが間に割って入ってきた。


「そうか、君は知らないよな。」

「どうする?説明するか?そもそも、説明してもいいのか?」

「まあ、もしもできたとき目の当たりにするだろうし、説明しても大丈夫だろう。」

「そっか。じゃあ、説明よろしく。」

「はぁ、分かったよ。その代わり、使えるかどうか試してみなさい。」


 二人が話し合うと、樹生は推定裏口の前に立ち、エヴィラはアナの方に向かった。そして、真剣な顔で言った。


「いいか、今からいうことは他言無用で頼むぞ。」

「は、はい。」


真剣な表情で言うので、アナは少々ひるんでしまう。

 そして、エヴィラはエピロト遺跡での出来事を話した。遺跡の中にいた敵や、突然生えた植物について。


「あの植物が生えた事象は、間違いなく彼が関係しているはずなんだ。」

「何でですか?」

「突然植物が生えたことは説明しただろう。」

「はい。」

「その時、同時に彼が叫んでいたんだ。『縛れ』と。

 するとどうだろうか。植物が生えてきたかと思えば、ガーティクトを縛り付けたんだ。」

「えぇ!そんな偶然みたいなこと。」

「そう、偶然みたいに起こってしまったんだよ。しかも、で。

 だからこそ、私は考えているんだよ。彼には、植物を操る力があるんじゃないかと。」


 エヴィラはあの時の状況から、そのように考察していた。そんな樹生の方を見ると、何やら悩んでいる様子だった。


「分かんねぇ。あの時どうやって操ったんだ?というより、あの時のあれは、本当に俺の力なのか?」

「どうやら、うまくいっていないようだな。」


 樹生が悩んでいると、説明を終えたエヴィラが話しかけてきた。樹生は今の植物が出てこない状況を説明する。


「植物が出てこないどころか、その感覚すらつかめないんだよ。本当にあの時の植物が、俺が原因で出てきたのか疑わしくなってきたよ。」


はぁとため息をつく。そんな彼を見かねて、エヴィラはアドバイスをする。


「フム、そうだな。気を静めて植物を感じ取れるか試してみてくれ。」

「はぁ?そんなのどうやって。」

「なんでもいいさ。目を瞑るでも、地面に手を付けるでも何でもいい。何かしら、植物の何かが感じ取れればいいんだ。」

「植物の何かって、随分と抽象的だな。」

「私にだって分からないことくらいあるさ。」

「まあ、やってみるか。アドバイスありがとうな。」


感謝を述べると、樹生は全身の力を抜き、目を瞑る。呼吸を整えると、手を地面につけ始める。数秒後、ハッと目を開く。すると立ち上がり、エヴィラの方を向く。


「感じた!脈動というか、声というか、何と言えばいいかわからないけど、何かは感じた。」


得体のしれない何かではあるが、それを感じ取ることができたことを伝える。


「そうか。なら、それを操れるか試してみようか。」

「それができないから苦労してたんだが。」

「今度は違うだろう。その何かを感じ取ることができたんだ。感覚さえつかみ取ることができれば、後はこちらのものだ。」

「そっか。とりあえず、頑張ってみるわ。」


樹生は塀に向かってもう一度手を伸ばす。そして、目を瞑る。


「いいか、重要なのは欲だ。理性的に物事を考えるな。欲を持って、植物を操作してみろ。」


その言葉に返答はない。しかし、開いた目を見ればその声が聞こえていたのがわかる。その目は、欲まみれだ。


「『開けろ』」


 次の瞬間、塀の奥からビキビキと何かが成長する音が聞こえる。すると、樹生は何かに引っ張られ後ろに退いたかと思えば、塀が奥から大きな音を立てて強く開かれた。


「ふぅ。急いで君を引っ張って良かった。」


樹生を引っ張ったのはエヴィラであり、引っ張らなければ扉があく瞬間に強くぶつかってしまっていただろう。


「あ、危なかった。ありがとう。」

「気にするな。それよりも、成功したな。」



 空いた扉を見れば、木がこちらに向かって生えてきている。どうやら、この木が扉を開けたらしい。


「まさか、本当にできるなんて。」


 そして、これにより、樹生に植物を操る力があることが分かった。


「さて、急いで入ろう。今の音で築き荒れた可能性があるかもしれない。」

「えっ、それじゃあ裏口を開けた意味は…。」

「正面からよりかは、スムーズに入れるだろう。」

「かもしれないけど。」

「無駄口を叩いていないで、さっさと行きましょう!」

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