長靴を履いたチャーチル。
首領・アリマジュタローネ
長靴を履いたチャーチル。
あるところに長靴をはいたチャーチルがおりました。
チャーチルは長靴を雨の日に好んでよく履いています。
チャーチルは長靴を晴れの日でも好んでよく履いております。
チャーチルは好んでいます。
長靴を好んでおります。
あるとき、チャーチルは言いました。
「クロックスは死ね」と。
※ ※ ※
「ねぇ、おじさん。そのお本ってどういうことなの?」
「わからないのかい?」
「うん……」
「あのね、チャーチルは長靴を好んでいたんだ」
「うん」
「チャーチルは雨の日に長靴を好んでよく履いていたんだ」
「うん」
「チャーチルは晴れの日でも長靴を好んでよく履いていたんだ」
「うん」
「チャーチルは好んでいたんだ。長靴を好んでいたんだ」
「うん!」
「あるとき、チャーチルは言ったんだ」
「うん?」
「『クロックスは死ね』と」
「あはは、そっか〜! ねぇ、おじさん。この本と、ぼくのおうまさん、交換してくれない?」
※ ※ ※
「チャーチルはこのんでいました。ながぐつをこのんでおりました」
「おい、ぼうず。面白そうな絵本を読んでいるじゃあないか? その本は一体なんだ?」
「【ながぐつをはいたチャーチル】だよ?」
「長靴を履いたチャーチル? 知らないな。どんな話だ? 読んでみてくれ」
「えーっと、あるところにチャーチルがいました」
「うむ」
「チャーチルはながぐつをこのんでよくはいていました」
「ほう」
「チャーチルはあめの日でもはれの日でもながぐつをこのんではいておりました」
「なるほど」
「チャーチルはこのんでました。ながぐつをこのんでおりました」
「ほほう」
「あるときチャーチルはいいました」
「なんて言ったんだ?」
「『クロックスはしね』って」
「HAHAHA!こりゃ傑作だ! どーれ、ぼうず!その本と、この金貨の山。いっちょ交換してみねーか?」
※ ※ ※
「【長靴を履いたチャーチル】か。得したな」
「おい、詐欺師野郎。また働かずに酒ばかり飲んでいるのか?」
「あ、衛兵さん! お勤めごくろうさまです……。いえ、ちょっとばかし、休んでいるだけですよ」
「口だけは達者だからな、お前は。ん、なんだその本は?」
「あー、村のガキからもらった本ですよ。読みましょうか?」
「【長靴を履いたチャーチル】か。知らんな。どんな話だ?」
「へい。えー、あるところに長靴を履いたチャーチルがいました」
「ふむ、いそうだな」
「チャーチルは長靴を好んで履いておりました」
「好んでいたのだな」
「チャーチルは長靴を雨の日にも晴れの日にも好んで履いておりました」
「どんな天候の日でも好んで履いておったわけだな」「チャーチルは好んでおりました。長靴を好んでおりました」
「好んでいたわけだな」
「あるときチャーチルは言いました」
「ん?」
「『クロックスは死ね』と」
「ふふふ、お前にしては面白い本を読むじゃないか。どうだ? その本と、私の娘、ちょっと交換してみないか」
※ ※ ※
「……クロックスは死ね、か。ふふ。世の中にはこんなに面白い本があるのだな」
「おい」
「はい? ……あ、あああ、へ、陛下!?ど、ど、どうしてこんなところに!? 出張から戻ってきていたのですか!?」
「さっきから熱心に読んでおるその本、一体なんじゃ?」
「……いえ、くだらない本ですよ。村にいたロクデナシが楽しそうに読んでいたもんだから、奪ってやったまでで……」
「ちょっと読んでくれんかの?」
「今、ここでですか?かしこまりました……。紅の帝の名に恥じぬように、読ませて頂きますッ!」
「うむ」
「む、むかし、あ、あるところに、ある国で長靴を履いたチャーチルがおりました」
「……」
「チャーチルは長靴を好んで履いておりました。雨の日でも晴れの日でも好んで履いておりました。……どんな天候でも好んで履いていたと、この本には記述されております」
「ふむ」
「チャーチルは好んでおりました。長靴を好んでおりました」
「……」
「あるとき、チャーチルは言いました」
「……ん?」
「『クロックスは死ね』と……」
「……」
「ど、どうでしたか? 村のロクデナシが持っていたものですので、陛下にはつまらなく感じるかと。不快でしたら出版を差し止めるように手配いたしますが……お気に触りましたか?」
「ふむ、一ついいかのう?」
「私でよければ!な、なんでもお申しくださいませ!」
「どうだ。その本と、王様の立場、ちょっと交換してみるというのは?」
長靴を履いたチャーチル。 首領・アリマジュタローネ @arimazyutaroune
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