第3話 変っ…………
「ふっあー!今日も頑張ったね私ぃ!……何か小腹減ってきちゃった。いや、ダメダメ。太る太る」
寝る前にもうひと頑張り!と勉強をしていた
が。
我慢しようとすればするほど美味しそうな食べ物が頭に浮かんでしまう。
「……ダメダメ。ダメだってば。この時間に食べたら太るし、寝るのも遅くなる。ね?我慢しよ?起きたら思う存分食べさせてあげるから!ぐっへっへっへ……」
●
「んま!んま!」
そこは、育ち盛りの17歳。
自宅の冷蔵庫には目ぼしいものがなく、息抜きがてらに遠回りしつつ、簡単に食べれるモノをとコンビニについつい来てしまった弥生。
フランクフルトとナゲットを『先っちょ!先っちょだけえ!』と齧りまくりながらブラブラと家方面へと向かう。
(しまった。どうせならフランクもう一本買っとけばよかった……ん?何だ、ありゃ)
道路脇のパーキングで、女性が男性と向き合って座り込んでいるのを見た弥生。
(何だろ?知り合いのような、知り合いじゃないような。それに………………何か、変な雰囲気。気になる)
弥生はコンビニ袋をガサガサと揺らしながら、コソコソと近づいていく。
すると。
何人もの男達が、両手を鷹のポーズに構えて男女を囲んでいた。
そして、薄着で座る若い男女は、お互いを背中に庇いながら男達に何かを叫んでいる。
(な、何アレ!犯罪?!警察にとにかく電話……あ!スマホ持ってない!!)
大変なところに出くわした!と焦る弥生。
(どうしよう!叫ぶ?!『いやあー!変態が編隊組んでますぅ!』とか叫ぶ?!いや、二人とも逃げようとしない?逃げられない?どうしよう……)
●
「へっへっへ。『バーミリオン』のマーティルーさんに、『手ブラ』のレイラさんよぉ。飛んで火に入るオイラ達、とはこの事よ。ん?……ま、いいか!今日こそは二人まとめて、俺達『
弥生の視線の先には、お揃いの黒革ジャンで身を固めたスキンヘッドやモヒカンの面々が寄り添う男女二人を囲んで囃し立てている。
寝間着の上から羽織ったパーカーを目深にかぶり、チキンナゲットをモゴモゴと頬張りながら、スルスルと輪の中に入っていく弥生。
「止めろ!レイラをそうやって辱めるのは!レイラは敵とは言えど……敵とは言えど!窮地ならば見逃せない時だってある!……レイラ!その美しい身体を早く隠してくれ!」
「止めて……この細マッチョは私だけが堪能していいモノ。マーティルー、早く逃げて。私が貴方の代わりに、ど、胴上げされるから……。私の事、忘れないで、ね」
(しまった。全員変態の可能性が増した。どうしよう……マトモなの、私だけじゃないか!え?……うわ!うわ!この二人ぃ!)
心の中でバッチリと自分を除外した弥生が、座り込んでいる二人の美麗さと薄着に目を剥いて駆け寄った。
「めちゃめちゃ、カッコいい!わあ?!何でビキニパンツしか履いてないんですか?ホントに隠せてますか!見えちゃってませんか!お兄さん!きゃあ!お兄さん!何か、何かぁ!すっごいですねぇ!」
「……や、めて!マーティルーを見るなら私を……」
ガン見する弥生への恥ずかしさと、背中のレイラのたわわな感触に前屈みになっていたマーティルーは、黒い下着にガーターベルト姿で前に出たレイラの美しい背中に、更に前屈みになっていく。
「うわ!わ!お姉さんビスクドールみたいじゃないですか!ちょっと!ほっそいのに何でそんなお胸さんおっきいんですか!揉んでいいです?クンクンしていいです?!」
女子の格好をしたヤバい変態が紛れ込んだ。
そんな、弥生以外の全員の意見が一致した。
「きょ、今日のところは胴上げ、勘弁してやらあ!次会ったら承知しねえからな!(ここは任せて先にいけぇ!)」
「く、次こそは一網打尽にしてやる!覚悟しておけ!(え?CCCの皆さん……!)レイラ!」
「(……く!この、御恩は!)マーティルー!」
レイラを姫抱っこして前屈みで消えたマーティルー。弥生に立ちふさがる、鷹の構えのトリプルC達。
「あー、もう。これ、また夢だよね。だったら……悪い人達はお父さんの魔法でっ!」
取り囲むトリプルCの面々が『ふふふ、可愛いなぁ。奇跡も魔法も
それは、起こった。
『
え?
トリプルCと、物陰から見ていたバーミリオンレッドの顔色が変わった。
『
ギンガムチェックのコートに、黒いミニスカート。オッドアイの、ちっさ可愛い少女。
「消えろ」
可憐さにそぐわぬ、そんな禍々しい言葉から。
真夜中、四つ巴の全力鬼ごっこが幕を開けたのだった。
●
【おしまい】
じょしじょしだんし、もぶもぶもぶ。 ~夜とヴィラン少女とおかしなヒーローとモブっぽい奴らと私~ マクスウェルの仔猫 @majikaru1124
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