第2話 真夜中に蠢く気配と、戦隊の面々。
チリッ。
夜に溶け込んだ高層ビルの上で、マーティルーは首の後ろに違和感を感じた。
(
無造作に後ろで結んだ髪をビル風にたなびかせながら、
が、陽炎の様に揺らいで消えた気配に、
(どこだ?お前等は……君は、どこにいる?)
もどかしさにマーティルーは、すう、と目を細め、
(" ブルースター・アイズ ")
視界強化の
だが。
闇に消え失せた諸々の気配は、静まり返ったままだ。
唇を噛みしめるマーティルー。
(くそっ。どこだ……!もう一度、" ブルー…… ")
ゴーグルの曇りを確認しながら、再びつけ直してスペルを唱えたマーティルー。
そこに。
銀縁眼鏡に七三分けの黒髪。
それは風に乱れる事なく決まり続けている髪型とはうらはらに、柔らかく微笑む隼人。
毎度不思議な硬さだ……と首を捻るマーティルー。
「ブルー、どうしたの?君も何か感じたのかい?」
「レッドも気配、感じたんですか?」
「えっとね、トリプルっぽい集団が飲み屋街に三つと、テクニカル・シャイン=ブラッドの……」
「何で皆は変身しなくてもスペルが発動するのに、俺だけ使えないんですか?!あれだけ改善してほしいって上申してるのに!」
あっちとあっち……と指し示す隼人に唇を尖らせるマーティルー。
「世間が君の細マッチョ姿、見たいからじゃないの?」
「まだ肌寒さの残るこの季節にタンクトップで街をウロウロせざるを得ない俺の身にもなってくださいよ!」
「あらあら!恥ずかしがっちゃって、可愛い!」
「うわ!ちょっと!離して下さいよ夢子さん!」
ここぞとばかりに走り寄り、マーティルーに指を絡ませようとするバーミリオン・パープルの
サラリとした茶髪を後ろでアップにした、落ち着いた雰囲気の20代後半の女性である。
「ほら、同世代の私にならいいでしょう?」
「……パープルの同世代ってどちらかと言うと僕じゃないかなあ」
ビッシィ!!
「
「は・や・とぉ〜?それ以上は私の
「唸らせる前に言ってくださいよ!痛たた……」
「さ、さ!マーティルー!早くポロリと変身しまっ?!」
「……うわ?!」
バフ!!
「ふきゃ?!」
尚もマーティルーに指を絡ませようとした夢子の頭に、超高速で飛来したクマのヌイグルミが抱きついた。
「な、何?!敵ぃ?」
「ほうほう、これは……敵のお姫様はご立腹ですね」
「……レイラ!」
夢子が叫び。
隼人が楽しそうに笑い。
マーティルーが名を呼ぶ先に。
黒髪を風にたなびかせて、にい、と笑う少女がいた。
「……よく似合ってる」
そう言って、ふわり、とビルから落ちていくレイラ。
「やったわね、このヤンデレ女!
ビルから飛び降りた夢子の身体が、
次いで、白い光が黒に変化して、夢子を包んでいく。
胸元が大きく開いた紫のメタリックのボンテージスーツに、蝶を
その手には鞭が握られている。
「『変態女王☆夢子ちゃん』!ほーっほっほぉ!」
高笑いを残して降下していく夢子を慌てて追いかける隼人とマーティルーだった。
●
【つ、続くの?】
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