第15話 帰らない夫捜索

新しい家に引っ越して荷物の整理と夕食を作りゴルダをにこにこと待った。


最近ゴルダの事を思い出して記憶が合流してからはもうゴルダの事が好き過ぎておかしくなりそうだった。実際おかしいくらい好きだった。


「はあ!ゴルダったら早く帰ってこないかしら?新居で愛し合うのも良いわね!えへへ!」

とニヤけているが一向に帰ってこない。忙しいのかな?


でもいつもの時間になっても帰らない。

おかしいな?

と立ち上がり外を除くけど暗くなっても戻らない??これはおかしい!!

私はとりあえず出かける準備をして支配人の住所を訪ねることにした。


「すみません!!支配人さんいますか!?うちの夫が戻らないんです!」

と言うと奥さんが出てきた。


「あら?」

とそこへ支配人さんも現れて


「おや…?ドリスさん?どうしたんだい?」


「うちの夫が戻らないんです!前の部屋にも行ったけど居なくて!!」


「何だって?店はとっくに終わって皆でお祝いしてプレゼントを渡してゴルダは浮かれて帰ったよ?」


「え?でもうちには帰ってないです!」

と言うと奥さんが


「もしや誘拐とか?」

と言い出し青ざめる。

支配人さんは


「まっ!まさか!!アンジェリカ様か!?」


「え!誰ですかそれは?」

と言うと支配人さんは渋い顔をして


「うーん、うちの常連客の貴婦人でね…前々からゴルダに好意を寄せていたんだ。最近は店の者達と協力して婦人が来てる間はゴルダを厨房に隠したりして遠ざけていたんだが…やはり諦めてくれなかったか!」


「そんな!ゴルダはその婦人のところへ!?」


「とにかく行ってみよう!馬車を呼ぼう!」

と支配人さんと私は馬車に乗りそのアンジェリカ・マリ・ファーニース伯爵夫人の元へと急いだ!


「アンジェリカ婦人は30も歳の離れた夫と結婚していてな…実は遺産狙いだと言われている。いつも一人で来ているのは夫の体調が悪く夫は寝込んでいることが多いからと聞いたよ…しかし噂では婦人が毒を盛って弱らせていると聞いた」


と支配人さんは眉を顰めた。


「そんな!恐ろしい!ゴルダは大丈夫かしら!?」


「たぶん、行ってもすっとぼけるだろう…私が婦人と応対するからドリスさんは地下から入り込んで探した方がいい」

と言われ裏の方の地下室への入り口を教えられた。なぜ詳しいのか聞いたらそこの使用人さんが友達でよく話を聞いていたらしい。


馬車が止まり伯爵邸について門を開けてもらい玄関まで馬車を止め素早く私は馬車に隠れ移動して茂みに隠れた。

その間に出てきたメイドに連れられて支配人さんは中へと入る。

私は裏に周り地下室の扉を探した。するとそれらしきものが見つかり、鍵がかかってないのを見てランタンを持ち階段を下る。扉には鍵がかかっていたが側に斧がありガンガンと壊して中へ入る。中は用具入れだけで今度は部屋の中へ通じる階段を発見し上に登る。


また扉をこじ開け使用人達に見つからないように家の中を捜索する。するとある使用人達がヒソヒソと話していた。


「全く奥様って怖いわね?」

「あれ誘拐かしら?綺麗な男なんか連れ込んで」

「気絶してたけど自分の部屋に運ばせるなんて」

「旦那様が弱ってる時に…」

「看病なんて放置して毎日レストランに通ってるくらいよ?」

「酷い話だわ」

とヒソヒソと言い一人のメイドが


「とりあえず今、その男の人のこと探りに来た人が来客中よ?くれぐれも3階の奥様の部屋には入れるなって」

と言った!

3階!

私は階段を探すと上から誰か降りてきたので急いで階段の陰に隠れた。

それは黒服の男達で


「やれやれ…男が目を覚さなくて良かった。とりあえずは俺たちも戻って仕事しないとな」

「ああ…奥様の気が済むまでやられるだろ」

とヒソヒソと言い合い男達は去る。

私は階段を駆け上がり奥様の部屋を目指した。豪華そうな扉が突き当たりにある!


鍵がかかっていたから斧で壊して中へ入るとベッドに鎖で繋がれたゴルダが眠っていた!

なんて事!!


私は鎖をガンガンと斧で外し切りバチバチとゴルダを起こしにかかるがゴルダは中々起きない。余程強力な薬を盛られたんだ!!

仕方なく担いで行こうとするが重い!それに早くしないと気付かれる。とりあえず私は奥様の部屋の隣の部屋に入り込み中から斧をつっかえ棒にしてドアノブにさしてカーテンを見つけるとビリビリと破りそこにあったシーツと結ぶと窓を開けて垂らした。


ゴルダがようやく目を覚まして頭を抑えた。


「うっうう……」


「ゴルダ!大丈夫!?立てる?」


「ど、どこここ?」

とゴルダは焦点が定まらなかったがやっと私の顔を見た。


「ドリス!こ、ここは?俺変な男に捕まって…」


「とにかく逃げるわよ!!さあ窓から!」

と窓の下を見る。結構高いが何とかゴルダは降り、私も続く。

すると異変に気付き隣の部屋が騒がしくなる!ヤバ!隣の部屋の窓が開き、私達が降りているのを見た奥様らしき人は


「おのれぇ!!」

と叫び


「何をしてるの!隣よ!」

と指示してバンバンと部屋のドアを叩く音がした!


「ドリス!飛び降りろ!」

とゴルダが言い先に下に降りて待ち構えていた!

くっ!私は思い切って手を離しゴルダに受け止めて貰った!!


すると男が


「おい!こっちだ!」

と声をかけた。誰!!?


「俺は支配人の友達でここの使用人だ早く!」

と手招きして誘導すると支配人が裏の陰に馬車を止めており


「早く!こっちだ!!」

と言い私達は馬車に乗り込み馬車は発車する。


ゴルダの手首にはまだ鎖が残っていた。


「酷いことするな!これは…」

と支配人が言い途中で鍵師の家に行き開けてもらう。


ゴルダはしょんぼりして


「支配人さん…俺…皆から貰ったもの落として…ケーキも黒服の男が踏み潰して…ううっ!」

と泣く。

支配人さんは


「そんなのまた作ればいいから気にするな!頭は大丈夫か?殴られたって?また馬鹿になっちゃ困るぞ?」

と言い笑われた。


街の警備兵にも事情を説明して後日アンジェリカ婦人の取り調べを行うと言う事になった。


「まぁしばらく婦人もうちには出入り禁止だな。来たくても来れなくなるだろう。夫に毒を盛ってることもバレそうだな」

と支配人は言う。


「毒?何のこと?」

とゴルダが言うが


「お前は何も知らなくていいんだ。ああ、明日は休んでいいぞ。ちょっと頭休ませとけ」

と支配人に言われる。

家まで送られてお礼を言い支配人は帰っていく。


「大丈夫?ゴルダ…」


「ああ…ちょっとズキズキするけど平気だよ」


「ズキズキするのね?可哀想に?ちょっと見せて?」

としゃがませ見ると確かに少しコブになっていた。触ると


「痛いっ!!」

と泣いた。


「軟膏を塗りましょうね」

と薬を持ち塗ってやるとようやく落ち着く。


「ありがとうドリス!…」

と同時にグウウとお腹の音がした。ゴルダは恥ずかしがり、


「お腹空いたな」

と言う。


「あ、そうだ!ご馳走様作ってたのに冷めちゃった!」


「食べるよ!冷めてもドリスの作ってくれたの美味しいし!」

とゴルダは笑い私達は遅い夕食とお祝いを楽しむ。


後日またシェフにケーキを焼いてもらいお祝いをまたやり直した。

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