第13話 ハグと夢

家に帰るとまだゴルダは帰ってない。なんかドッと疲れた。リーシュとライラックは勝手に盛り上がってたし。


やっぱり私には資格ないのよ。

と諦めつつも夕飯を作っているとゴルダが帰宅した。


「ただいま!!ドリス!!」

笑顔で元気よくにこにこしながらゴルダが帰ってきた。


「おかえり…元気ねいつも」

と言うと


「ドリスがいるから終わったらいつも走って帰るんだ!!」

と言う。子供か!ゴルダはやけに子供っぽい所がある。そういえば前に脳に障害があると言ってたな。バカだからって。


「美しい妻のドリスが待ってるなら走って帰るに決まってる!!」

とゴルダが言う。

ふーん…。


なんかむず痒い。


「ドリス…なんか疲れてる?大丈夫?」


「大丈夫よ…気にしないでいいわ。ちゃんと断ったし、他の女生徒が乱入してきてライラック先生と結ばれたのよ。目の前でイチャイチャと…誰でも良かったのよ。いや、男は皆そうなのかしら」

とため息をつく。


「ドリス…俺にはドリスだけ…」


「それよ!ドリスだけ、ドリスだけ…そんな事言っといてだからね。「だけ」なんて信用できないわ……」


「それは、そいつがいい加減なんだよ!俺は違うよ!本心からだよ!いつも言ってる!他の女よりもドリス!!」

と言うからなんか胸がまたキュンとなるじゃない。私は虚しさをどうにかしたかった。


「ゴルダ…」


「何?ドリス…」

とキョトンとするゴルダに


「ちょっとでいいからギュッとしてくれる?」

と言ってみた。するとゴルダは驚き嬉しそうに何度もうなづいてガバッと抱きしめる!


そんでギューっとハグした!


「ドリス!嬉しいよ!!やっとドリスに触れた!」

と嬉しがる。ゴルダの言ってるのは前のドリスのこと。私の知らないドリスよね。


「ゴルダ…ハグだけよ?…それ以上したら別れる」

と言うとゴルダは


「う…わかった…」

と言いつつも嬉しそうにいいと言うまでゴルダは離れなかった。

そのうちに眠くなる。


「ドリス?ドリス?」

と呼ばれたが私は眠りについた。疲れてたのかな。


私は夢を見ていた。どこだろう?


彷徨っていると、もう一人のドリスがいた!!

狭い馬車の中、鎖で繋がれ震えていた。御者の男達の声がヒソヒソ漏れていた。


「あの娘…きっと一番の稼ぎになるだろうな」

「いい体つきだからな!借金のカタに親に売られて可哀想だが、それで親孝行できるならいいだろう」

と話す。


馬車がある商人の家に止まり、下品な笑いの男が品定めするようにドリスを見た。


「お前処女か?」

いきなり聞かれてドリスは


「そうよ!!」

と男を睨みつけた。


「それならいい!!そら、この服に着替えて花を売る仕事だ!上客を捕まえてたんまり稼ぎな!!何、お前なら大丈夫さ!」

と言い一旦扉を閉めた。


しばらくして着替え終わったドリスは嫌な顔をして下品な男に背中を押される。


「ドリス!ちゃんと売ってこいよ!?今日がお前のデビューだ!逃げたら許さねえ!ちゃんと見張っているからな!なるべく金持ちに売れよ!」

と言われ怯えるドリスは進みだす。しかしその時だった!後ろからガツンと音がして振り向くと下品な男はレンガで殴られて気絶していた。

髭もじゃの男…前のゴルダが落ちていたお金を拾い、ドリスの手を掴み逃げたのだ!!


雨が降り、ボロいあの小屋に逃げ込み二人は話をした。


ゴルダは濡れた前髪をかき分けているとドリスがゴルダの顔を見て驚く。


「貴方…とても綺麗な顔をしてるのね!!?」


「?お姉さんのが綺麗だけど」

するとドリスは震えつつも服を脱ぎ出した。


「わっ!!ちょっと!そういうつもりじゃ!!」

とゴルダは目を背けたがドリスは寄っていき


「貴方になら初めてでも大丈夫…」

と赤い顔で見上げた。ゴルダはごくりと喉を鳴らした。


ゴルダは身の上話を始めた。酷い目にあってきた事とか色々。

ドリスは静かにうなづき抱きしめた。ゴルダは涙を流していた。ドリスはゴルダの涙にキスをした。


「助けてくれてありがとう。私ドリスよ。貴方は?」


「ゴルダ…ぐす…」

と泣くゴルダにドリスは


「ゴルダ…私…あの男の元で働きたくないわ…私をその金で買い取って私をお嫁さんにして?」

とあの男から奪った金を指差した。


「この小屋も買い取り、ここで私と暮らしましょう?私が働いて貴方を養うわ!!」


「!でもいいの!?俺となんて…」


「当たり前よ。ちゃんと綺麗に掃除して一緒に…あ、そうだ、私と結婚して!貴方ならいいわ!…」


「でも俺…本当に仕事が見つかるか…酒も飲むよ?お酒飲むと嫌な事忘れられるから」

と言うとドリスは


「いいわ。お酒くらい。私が働き、貴方と暮らす。貴方は私の夫になる。結婚してくれる?」

とドリスは懇願した。


「そうだ…ゴルダ…結婚したら、その綺麗な顔を隠してくれる?今も前髪が長くて目は隠れてるけど…貴方が他の人にモテたら嫌だからお髭も伸ばして?ね!」

ともじもじしてゴルダに擦り寄る。ゴルダは照れて


「うん、わかった。ドリスの為に髭とか伸ばしてみるね…けけ、結婚もするよ!」

と言うとドリスはとても嬉しそうな顔をして、


「良かった…。やっと終わるわ。私…好きな人と幸せな結婚をするのが夢だったの!!だから嬉しい!私の初めても貰って!?」

とドリスが服を脱ぎ手を広げてゴルダとドリスはその夜結ばれた。


そんな夢を見て私は起き上がる。朝になってた。

これは…ドリスの…記憶だ。

ドリスは自分を助けてくれたゴルダに感謝していた。身の上話を聞いて捨てられた自分と重ねてゴルダの事を愛そうと思った。全てが思い出せた。


私はあの日…ゴルダと結ばれた!!

ソファーから落ちてまた床で寝ているゴルダを見て赤くなった!!


ギャーーーー!!!


色々思い出しなんか記憶が合流したら頭が沸騰した!!私は…ドリスで…ゴルダの妻として生きてたんだ!毎日がキラキラしてたんだ!!こんな髭もじゃでも優しいゴルダと!

しかも顔がいいから他の女に取られたら嫉妬で狂いそうになるからと髪と髭をわざわざ伸ばせさせた!!ゴルダは私のものだからと!!


「な、な!なんて嫉妬深い女だったの!!?」

とドリスである私は恐怖したが、同時にゴルダへの想いも一気に溢れてきた!この人は私が育てないと!私が側にいないとダメねとか!訳の分からない庇護欲でいっぱいだ!!ひいいい!


「ん…ドリス?」

とゴルダが目を擦り起きる。すると私はゴルダに駆け寄りガバッと抱きついた!!


ゴルダは驚き、ぱっちりと目覚めた!!


「ドリス!?どうした??怖い夢でも見たのか?」

と聞くとドリス…いや私はうなづいた。


「ちょっと怖いのと幸せなのを見たのよ!まだ混乱してるわ!!ゴルダお願い!ちょっとだけギュッとして!」

とお願いするとゴルダは


「うん!いいよ!」

とギューと抱きしめてくれたのだ。


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