第10話 助けに来たゴルダ弱し

「ゴルダ!!」

と私が言うとゴルダは


「妻から手を離せ!」

と言う。


「ヒュー!結婚してたってほんと?」


「こっちも色男だな!!なんだよ!毎晩やってんだろ?一晩くらい奥さん貸してくれよ!なっ!」

と男達は笑いながらゴルダに掴みかかる。


ゴルダは男を殴ろうとして拳を振り上げたがあっさりかわされて逆に腕を取られてしまいぎりぎり後ろで締められ


「ううっ!」

と呻いた。


「くく!色男め!てめえみたいなの一度ボコってみたかったんだよな!おら!!」

と男の一人は容赦なくゴルダの腹を殴り膝を蹴り地面に膝跨がせて顔を強打した。


「嫌!辞めて!ゴルダ!!」


「お姉さんそこで待っててねすぐ終わって良いことしよう!」


「くっ!誰がお前達なんかに!」

とゴルダは男の足にしがみついた。


「この野郎!!離しやがれ!」と男達は蹴りゴルダは鼻血が出たり傷だらけになっても離さない。


「辞めてー!誰かーーー!!助けてー!助けてくださいーーーー!!!」

私は大声をだして人を呼ぶ!

すると数人がこちらにやってくる!!


「兄貴!ヤバい!警備部隊の奴らが!」

と言い


「仕方ない引くぞ!!」

と言い逃げ出し後を追う何人かの警備隊。

一人が残り倒れたゴルダと私に声をかける。


「大丈夫ですか!?貴方達!!」


「あ、あの…ゴルダが…」

と倒れていたゴルダは何とか起き上がる。


「うう、」


「あんた安静にしてた方がいい、酷いな顔も腫れてるよ。色男が台無しだね。あんたこの人の恋人かな?」


「え?あ、あの…」

するとゴルダは


「妻です!俺の…」

と言う。ボロボロで弱くて負けたのにそれは譲らなかった。


「そうか…とりあえず後日事情聴取に行くから住所を教えてくれ」

と言われて私は住所を教えて訪問日を決められた。


「今日はもう良いから帰って休んだ方がいい」

と警備のお兄さんに言われ私はとりあえずゴルダを支えて帰ることにした。


「ドリス…ごめんな。大丈夫か?」

と言う。


「ボロボロで何言ってんの?あんたこそ大丈夫なの!?全く手も足も出ないじゃない!」

と言うとゴルダは


「お、俺…喧嘩弱いんだ。昔から…人を傷つけてもいい事ないんだって死んだ母ちゃんが言っていたからな」

とゴルダは言い私は反省する。


「ゴルダ…ごめんなさい…私その…この服…貴方のお金を勝手に借りて…。そ、その次の給金日にちゃんと返すわ」

と言うと


「…何で?ドリスによく似合ってる。服が欲しかったんなら別にいい。ごめんな、俺センスとかわからなくて買ってやれなかった……。金は返さなくていい。俺とドリスは結婚してるんだ」

と言いゴルダは離婚とは言わなかった。


何なのこの男は。


途中で薬屋に寄り手当てしてもらう。

薬屋は驚き


「あんたゴルダさんか!前と印象違うから驚いたよ!色男だったんだな!今は腫れて台無しだけど。前もよく殴られてうちに逃げ込んできたよな…薬代はサービスしとくよ」

と薬屋の店主が言う。


「…どうしよう、これじゃ仕事行けない…。支配人に怒られる。接客は顔が命って教わった」

とゴルダは青ざめていた。


「しょうがないじゃない!しばらく休みなさい!私が明日レストランに連絡しに行ってあげるわ」

せめてもの罪滅ぼしに。


そうして次の日に私はゴルダの職場へ行った。思ったより高級店で驚いた!!こりゃ貴族達が食べに来る筈だわ!!


支配人が出てきて私を見るとポンと手を打ち


「あんた…もしやドリスさんかい?ゴルダの妻の」


「え?」

となんか当てられる。妻は違うが。


「やっぱりな!いつもゴルダは自慢してくるからな。美人で茶髪の綺麗な女でスタイルもいいと!確かに!!」

と言う。くっ!ゴルダめ!なに言ってんのよ!


「で?ゴルダは?」


「その実は顔を怪我してしばらく出勤出来なさそうで…でも私を助けるために男達に殴られて!」

と事情を説明すると


「そうですか。ゴルダ…あいつはバカだけどいい奴だからね。しばらく休んでも大丈夫だと伝えてくれ。奴に熱を上げてる貴婦人は残念だろうけどね」

と言う。


「ゴルダのことよろしく頼むよ奥さん」

支配人はそう言い、僅かながら少しお見舞い用に食料などをくれた。


家に帰りながら私は考える。

二人組の男達が現れる前…私は…花売りだった。

……デビューはする前だったらしいけど。


「はあ…クリスには逃げられたし…また違う攻略者を探さないとかな?…そもそも私はゲームと無縁の存在じゃない。ただの食堂のお姉さんで…」

そう思うと惨めになる。デビューしてないとはいえ過去の自分はお金がなくて身体を売ろうとしていたなんて。


ゴルダとはどうやって知り合ったんだろう。

転生して髭もじゃがいて驚いて嫌悪してしまったけど。


支配人のさっきの言葉が響いた。


『ゴルダ…あいつはバカだけどいい奴だからね』

と。

確かに。

ゴルダは同じ部屋で暮らしていても私の許可なしには触らなかった。悪いのはいつも私だった。


「私…もしかして酷い女かも」

攻略対象外のゴルダを見捨てゲームの世界に浮かれて周りを見ていなかった。悪役令嬢のレイラもマクベル王子をヒロインに取られ最近は諦めたように食堂の隅で小さくなっている。クリスも最初元気がなかったこともあった。そこに付け込む私はどう見ても悪女みたいだった。


「………」

この世界に転生したからって全て思い通りにはならない。なんだかバカらしくなってきた。

お金持ちのイケメンと結婚したいなんて前世でもシンデレラストーリーだ。そんなの奇跡でもない限りそれこそヒロインじゃないと無理ゲーじゃない。


やっぱり私はイケメンを眺めるくらいの方がいいのかもね。はあ。これからは慎ましくイケメンウォッチャーとして生きよう。この前の二人組に絡まれもしゴルダが助けに来なかったら私危なかった…。ゴルダは全く歯が立たなくやられっぱなしで弱かったけど…。


弱くても守ろうとしてくれた。

本当にバカかもね。


でも少しだけ嬉しく思う私がいた。

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