第6話 変身したゴルダ

「そうだよ!俺だよ!ドリス!!」

と嬉しそうに髪を切り髭を剃ったイケメンになったゴルダが隣のベンチに座る!!


「あ、あんた…ゴルダなの!?本当に…そんな!あんなに汚らしく…」


「ドリスがお金持ちの男がいいって言うから俺…頑張って髪を切り髭も綺麗にして高級レストランのウェイターに雇ってもらえた!貴族達が来店すんだ!接客きちんと習って頑張ってるよ!


部屋も新しい綺麗な部屋借りたんだ!!」

え!は?私たち別れたのにドリスの為って何なの?この男話通じないのかな?

…しかし行くところないし…。


「…ゴルダ…私…王宮で上手くいかなかったの。クビになったわ…。厨房では男達ばかりでお尻や胸とかわざと触られるし…王子は他の女を部屋に招き入れてるし私に勝ち目はないわ」

と言うとゴルダは怒る。


「ドリス!お尻や胸を触られたって!!?酷い!俺のドリスになんて事を!!信じられない!!ドリス大丈夫だよ!行くところないなら俺の部屋においでよ!!」

と言う。


「ゴルダ…何もしないでしょうね?」

と警戒する。


「…可哀想に。ドリス。俺はドリスの許しがないと触ったりしないよ!!俺のことを忘れて悲しいけどいいよ。ドリスが部屋にいてくれるなら喜んで」

と言う。


「あっそう。ならお金が貯まるまでは居てあげるわ。でもこれは結婚じゃないからね!」

と言うとゴルダは嬉しそうに笑った。くっ!ゴルダのヤツがこんなにイケメンだったなんて!

でも庶民なのは同じだし…。ちょっと良いところで働けてもまだまだ生活苦だわ。私も増えたし飯代は2倍。


それからゴルダは新しい街のアパートを借りていた。質素な部屋だけど前のボロ小屋よりはマシできちんと掃除してあったし、余計なものは置いてない。


「今、夕飯を作るよ…ふふ」

とゴルダは嬉しそうにして何とパンケーキを焼いていた!!


「何これ?」


「?パンケーキ…ちゃんと小麦粉を使ったよ?前みたいな粗末なものじゃなくて…」


「こんなの毎日食べてんの?野菜とか肉は?」


「あ、ええとあの…お昼はレストランで余ったのを貰うから夜はこれなんだ…」


「つまりおかずとか作れないわけ?」


「作れない…。それにお金を貯めてるんだ!!ドリスが戻って来れるよう、良い家を買うために!」

とゴルダは言う。


「は…」

私は出て行くと言ってるのに…。


「もういい…」

と言い私はふて寝する。ゴルダの匂いが少しするベッドだ。ゴルダはおろおろして自分はソファーに横になった。


それから私は学園に戻り、再就職の食堂で働いた。メルおばさんが


「おや、お帰りー。たまのこしってやつは失敗みたいだね」

としらけた目をしていた。


「あはは!またよろしくお願いします!」

と頭を下げると


「仕方ないね!しっかり働きな!」

と生徒達の大鍋の仕込みを始めた。


昼時になると生徒達はやってきた。王子も来たがヒロインを連れていたし私は対応しなかった。

レイラは影からぎりぎりと見ていた。

なんかあの子も可哀想ね。レイラの執事さんが注文を取りに来たから可哀想に思いレイラに美味しいデザートをつけてサービスしてやった。


執事さんは


「ありがとうございます」

と頭を下げて持って行くとレイラはチラと私を見た。そして直ぐに目を逸らした。素直じゃないわね。私もかもだけど。


疲れてまたメルさんに余り物を貰い帰宅した。

まだゴルダは帰ってなかったので余り物を使い料理してみた。


机に並べたら丁度ゴルダが帰ってきた。


「お帰り…んんん!?」

私はある所に釘付けになる。

ゴルダは


「どうかした?あっ!料理だ!ドリスが作ってくれたの!?嬉しい!!」

と飛びつこうとしたから私は静止した!


「ちょっと!待ちなさいよ!なんなのあんた!そのシャツについた口紅!!」

と首元のシャツについた真っ赤な口紅に文句を言う私にゴルダは


「ん?ああ、なんか貴婦人がよろけて着いたみたい。洗濯しなきゃで困ってる」

と言った。…よろけたねぇ。


「ふーん、まぁその顔じゃモテて当たり前よね。貴婦人キラーめ」

と言うとゴルダは


「ねえ、これ食べて良いの?ドリス!」

と嬉しそうにねだるので


「そのシャツは洗濯籠に入れといて!私が洗うわ!あんたなんかに洗濯とか出来なさそう!」

と言うと嬉しそうに洗濯場に行きシャツを別のものに変えてゴルダは戻ってきた。そして祈った。


「ドリスの料理に感謝します!!」

と手を合わせた。そこは神とかじゃないの?

変なヤツね。


と私も黙々と食べ始めた。ゴルダは食べながら今日の仕事の内容を話した。レストランでは毎日貴族が予約してきて従業員やウェイトレスは全員身だしなみから支配人にチェックされてから一日が始まるらしい。


「この前髭を剃り残しが見つかり怒られるほど厳しいよ」

としょげると


「まぁ、飲食店だから仕方ないわね」

と言うと


「同僚がお前は貴婦人に受けるからチップも貰えて良いなって。確かに料理を運ぶと喜ばれるけどお料理に対してだからって言ったら皆、お前鈍いなって言うんだ。どうして?」

と不思議そうに言うゴルダ。確かに鈍いわ。今のゴルダは前と違う。私も見た目で判断してた。


私って最低ね。…さっさとお金貯めて出ていかないとね。ゴルダも私みたいな奴とはいない方がいい。私も違う相手を見つけないとね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る