第3話 しつこい男
結局今日は王子としか接点無かったな。食堂に来ない学生達も多い。家から持ち寄ったランチとかを食べる者も多い。マクベル王子は面倒でいつも食堂を利用していた。
ともかくメルさんに
「お疲れ様!これ今日の分ね…。後、残ったもの少し持って帰りなよ!」
と二人分渡される。え?こんなにいいのに。
でも食べるのに困らないのはいいわね。
と持ち帰る。
家に着くと男がいた!!
「きゃ!なんでまだいるの!?」
「なんでって俺達の家だし…。それより頭は大丈夫か?これ薬」
とまた汚い袋から小瓶を出す。
「要らない!出てってよ!別れてよ!」
と言うと
「何でだ?この前結婚したばかりで俺たち仲良くしてたし」
「仕事は!?人の稼ぎでお酒飲んで何言ってんの!?ふざけないで!」
と言うと男は慌てて
「そ、それは…今探して…本当にどうしたドリス?お前の方から結婚してくれ!私が養うからって懇願してたのに?」
と言う。私は冷たい目で
「はぁ?そんなわけないでしょ?あんたみたいな髭もじゃ男にそんなこと頼むわけないでしょ?ふざけないで!」
「ええ!?やはり早く薬飲んでくれ!おかしいよドリス!」
と男が薬を持ち無理矢理飲ませようとしたのでドンと押すと薬は床に落ちて割れた。
「要らない!あんたなんか嫌いよ!出てって!」
そう言うと男はバシと私を叩いた!!
「いたっ!!」
「…この薬ようやく手に入れたのに!!バカ!ドリスのバカ!酷いよ!」
「酷いのはどっちよ!女に手をあげるなんて最低だわ!嫌いよ!!」
と言うと男は
「俺たち新婚だぞ?こないだ結婚したんだ!もう別れるなんて!あんまりだ!何が悪かった?もしや…俺と夜の事したの嫌だった?」
と言うので私は
「ひいいい!ケダモノ!!最低だわ!!嫌っ!私に近寄らないで!!変態!」
と言うと男はショックを受け一歩下がった。
「あの…ドリスが積極的で」
と言うが
「は?私が?いやらしい!無かった事にして出てってよ!」
「でもここは俺が…」
睨みつけると男は
「い、一旦出るけどまた戻る。別れない。ドリスのこと好きだから俺も結婚したんだよ?」
と言うが私はこんな男と過ごしたことなんて知らない!前のドリスがどうであろうと!
「私はお金持ちのイケメンと暮らすのが夢なの!あんたみたいな汚らしい仕事もしてない男を食べさせるなんて嫌よ!」
「!」
「私に何か言いたいなら仕事を探しなさいよ!!このクソ髭もじゃ!!」
と罵声を浴びせると怯えて男は何も言わずに出ていった。
「ふん!ようやく出てったわ!!」
これで伸び伸びできると私は食事をバクバク食べて鍵をかけベッドに眠った。
*
次の日も王子の美しい食事を眺めて幸せだ。今日も最高のAランチお届けします!レイラとはあれからバチバチ火花を散らしている。
デザートに前世知識で作ったぷりんをお出しし、見たこともないものに興味を持ち食べる王子はすっかり気に入ってくれた!
「美味い!!何だこれは!流石だな!王宮にも欲しい味だ!」
と言ったので私はすかさず
「では私を王宮の調理場へ雇い入れて欲しいですわ。レシピは秘密ですのよ」
と言うと執事が呆れて
「お嬢さん、王宮の厨房なんて庶民の出ではとても…」
と言うが王子は
「ほう、面白いな、これが家でも食べれるなら最高だ!おいジルこの女をうちの厨房へ入れろ。俺が許す」
と言い私は喜んだ!!
「本気ですか!?王子!」
「本気だ!」
「うふふ、他にも沢山作れます!!」
と言うと王子は
「ほら見ろ。使用人部屋は空いてるか?」
「いえ、急ですのでどなたかと相室に…」
「そうかならばそのように手配しろ!女、お前は城で暮らせる。これは異例な事だ、光栄に思うがいい!」
とマクベル王子が言い私はお礼を言い執事さんにメモを渡された。
「何でこんな事に…まぁ仕方ありません。明日の休日に王宮へこのサイン入りの紙を持ち裏口の使用人用の入口から訪問しなさい。地図も書いておきます」
とジルという執事が言う。
「はい!わかりました伺わせていただきます!!」
と私は気持ちいい笑顔で言うのをレイラは睨みつけていた。
*
家に戻り荷造りをしていると男が戻ってきた。
「ドリス!仕事が決まったよ!!街のドブ溝掃除夫だ!!」
と言ったからゲッとした。
「ドリス喜んでくれた?俺が仕事決まって!」
と言うから私は
「良かったわね…上手くやるといいわ。私出てくから」
「へっ!?どこへ?」
と男は青ざめた。
「王宮の厨房で働ける事になったわ!!ドブ掃除なんかより余程お金になる仕事よ!!残念ね!でもさよなら出来るし良かった!」
こんな男に私の知らないうちに処女が貰われてたかと思うと吐き気する!さっさと綺麗な王宮へ行こう!
と荷造りしていると
「ドリス…本当に俺が嫌いになったのか…」
「そうだって言ってるでしょ!しつこいのよ!」
すると男はハラハラ泣き出してしがみついてきた!
「!捨てないでくれ!許して!もっといい仕事探すから!捨てないでくれえ!」
「えーい、お離し!!このろくでなしの髭もじゃ!」
「俺はゴルダだよ!忘れたのか?あんなに優しくしてくれたのに!」
「忘れたわよ!あんたなんか!!」
と言うとピタリと止まり男は離してくれた。
「本当に忘れちまったのか…」
と肩を落とした。
それからはジッと机に伏せたまま酒を飲んで眠ってしまった。
私は朝早く支度してボロ小屋と男にさよならした。
「玉の輿!玉の輿ー!」
と浮かれてスキップしながら王宮へと向かったのだった。
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