第15話
時刻は7時過ぎ結局あれからランクは1試合にとどまらず5試合した。大体1試合40分前後で終わるがランクはアンレートと違い12対12になった後はどっちかが相手にラウンド数を2本差つけなければ終わらない。そうなってしまったら1試合に1時間かかってしまうこともある。
郁人はこの前のようなフィットネス系でなければゲームは何時間も続けれる体力はある。
夏休みに入ってから親睦を深めるために家族で県外に行ったり外食をしに出かけたりしていたので最近は長時間ゲームをすることができていなかった。
「もうこんな時間だけどソラはお腹空いてないのか?」
『いや、全く空いてないね昼ごはん食べたし全然ヨユー』
正直なところ郁人は空腹である。さっきからお腹に石がゴロゴロと転がってるような音がしきりに鳴っている。
『もしかしてフミお腹空いてるの?』
「まぁ、いつもこの時間には夜ご飯食べてるからな。でももしかしたらソラに拘束されると思って朝と昼はいつもより多めに食べたんだけど、習慣でいつもご飯食べてる時間に勝手にお腹が空くようになっちまってるかもな」
郁人の朝食はパン2枚とコーンスープ、昼食はスパゲッティだ。基本郁人は少食のため育ち盛りな男子高校生ながら1人前でお腹が満たされてしまう。
『私も朝と昼にしっかり食べたし健康にも悪いから夜は抜いてるんだよね』
「ふーん。ソラって太ってたっけ?」
『おいノンデリ、この完璧美少女が太ってるわけないだろ。それに痩せようと抜いてるんじゃなくて太らないために抜いてるんだよ』
郁人は苦笑した。リスナーは相変わらずソラの擁護で郁人を非難している。これ以上余計なことを言ったらまずいと郁人は口を閉じた。
『健康な1日のためにやっぱり朝はオキナの納豆!』
ソラはいきなり作り声で意気揚々と言った。
「最近やってるCMのセリフじゃん。俺もその納豆美味くて結構好きだな」
『・・・も?私別にオキナの納豆好きじゃないけど」
「・・・え?」
『好きじゃないは語弊があるけどあれ大粒しかないじゃん。私の好きなひきわりがないのから嫌い』
(嫌いって言っちゃったよ)
ソラはひきわりしか勝たんっと言ってそう断言した。確かに郁人も昔はひきわり納豆が好きだったが今はあの噛んだ時に中から飛び出す香ばしい匂いがクセになっている。
(俺も大人になってきたんだな・・・)
郁人は自分の成長に耽った。
「というかソラも納豆食べるんだな。てっきり朝から優雅な洋食を食べてるのかと思ってたわ」
『私をなんだと認識してるわけ?』
「え・・・名前を聞けば泣く子も黙る大企業の社長令嬢」
『よくわかってるじゃない!」
ソラが鼻高々に言う。
『いや、そうだけどそうじゃないって』
ソラが慌てて訂正した。どうやら求めていた答えとは違ったらしい。
『私が本物のお嬢様なのは確かだけど、お嬢様だからって優雅な洋食ばっか食べてるわけじゃなくてよ』
「そうか・・・」
ボケたつもりだろうがソラの口調にはあえてのスルーだ。
『・・・とにかく私は和食も好きだしなんなら和食の方が好きだし』
「全然知らなかったわ・・・」
『じゃあ今覚えときなさい』
「お、おう」
郁人はソラも夜ご飯を食べるのであれば自分もご飯を食べようかと思っていたがそんな気配はないので今日の夕飯は無しということになる。郁人にとってもここ最近運動をしてないのに食べすぎだと思っていたのでちょうどダイエットにもなるだろう。
「それじゃあ今日は深夜まで突っ走るか」
ということで決まりだ。
「あーでも途中でお風呂入りに行くかも」
『いつも終わってから入ってたじゃん』
「色々あって俺が1番最初に入らないといけないんだよ」
2人が家族になるまでは好きな時間にお風呂に入っていたが今は郁人が最初に入ることになっている。沙良も綾音も自分が入った後に郁人が入っても気にしないと言ったが思春期真っ只中の郁人は気にしずにはいられず話し合った(郁人が一方的に取り決めた)結果こうなったのである。
(よくよく考えてみると俺の後にセンパイが・・・・・・)
郁人は考えるなと頭を振った。ヘッドホンの線が靡いて顔に当たる。
「だから9時ぐらいには入りに行くかな」
『おっけー。なんなら私も同じ時間に入りに行こうかな』
郁人は湯船にゆっくり浸かるタイプなので再開するために待つことはあまりないだろう。
『それじゃあ後2時間何しよっか』
「んー2時間でできるやつがいいよな」
郁人とソラはいつも使っているゲームプラットフォームを漁る。今週のランキングから新作までずらっと並んでいる。何十とゲームタイトルが並んでいる。種類が多すぎて全て把握できないしいまいちピンとくるものがない。
(せめてジャンルだけでも絞れたら)
郁人はその後も続けて下へスクロールをしては次のページへと進んでいく。ソラも郁人と同様に決めかねているようだ。飲食店に行き食べたいものがたくさんありどれにしようかと迷うのと似たようなものだ。どれも同じくらい良さそうで拮抗している。頭ひとつ超えるものがない。
郁人が諦めてサイトのトップページに戻った時、ふと視界ににあるポップアップが映った。
「・・・ホラー・・・セー・・・ル?」
クリックをするといくつかののホラーゲームが表示された。どれも郁人が知っているほど怖いと評判なものである。ゾンビパニックに和物などすべて違ったジャンルだ。
ゾンビ系のゲームは何度かプレイしているためいきなりゾンビが出てきても驚かない自信が郁人にはある。慣れによるゾンビ耐性だ。
(そういえばどんなホラーゲームでも全く驚かずにプレイする実況者もいたよな・・・)
ゾンビゲームはゾンビを倒すために銃を使うので郁人もプレイするがほかのホラーゲームはというと化物から逃げながら謎を解いたり脱出したりするので1回やったかどうかだ。
(せっかくの機会だし他のホラーゲームにするか)
郁人は再度パソコンの画面に目を落とす。
「これなんかどうだ?」
『んー?』
「リンク送ってあるから開いてみて」
『えぇ・・・これホラーゲームじゃん』
ソラは怪訝そうに言った。ソラはホラーゲームが嫌いなのだろうか。
「嫌か?嫌なら他のやつにするけど」
『う、ううん。や、やるよ』
あからさまにソラの声は震えていた。しかしソラは強がりなので逃げる事はしない。
(大丈夫なのかよ・・・)
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