第11話
郁人は目を覚ますと明るい光が目に入ってきた。
(もしかして朝なのか)
開ききっていない目を一度擦ってみるがまた同じようにきつく光りが目を刺した。どうやら本当に朝のようだ。
(昨日、服脱いでベッドに倒れ込んでそのまま寝たのか。一回も目が覚めなかったし、よっぽど疲れてたんだな)
郁人はかけてあるタオルケットを横にずらしてベッドから降りた。
(ぐぅぅ・・・・・・)
昨日は一食しか食べていないため空腹でお腹から大きな音が鳴った。
(早くご飯食べよ)
郁人がリビングに行くとパンを食べている綾音がいた。綾音はいつもと同じように沙織と楽しそうに世間話をしていた。
綾音に普段の可憐な微笑みが見え郁人はほっと安心した。
(昨日のは一体何だったんだろう。でも今はいつも通りのセンパイだからきっと大丈夫だし心配することないか)
「おはようございます」
仲良く向かい合って朝食を食べる2人に郁人は挨拶をした。
「おはよう郁人君」
「郁君おはよう」
「もう体は大丈夫ぶかしら。事情は綾音から聞いたけどだいぶお疲れのようだったらしいわね」
「体力には自信あったんですけどね・・・」
「でももう元気になったんでしょ?」
「はい!この通りばっちりです!」
郁人は沙織に向かってポージングをした。そんな郁人を沙織は微笑ましそうに見ている。
「こんなのじゃ全然自慢になんないでしょ。ほらプニプニしてるし」
ついさっきまでパンを頬張っていた綾音はいつの間にか座ったまま上半身を目一杯伸ばして郁人の二の腕を触り始めている。
予想外のことに郁人は驚き小さく悲鳴をあげた。
「いきなり触られるとびっくりするじゃないですか!」
「だって、あたかも自分の筋肉を誇示するかのようにポーズ決めちゃってるんだもん」
「もんって・・・ただ元気なアピールしただけですよ」
「そう言うことにしておいてあげるよ」
郁人は苦笑した。
「そういえば二の腕の柔らかさっておっぱいの柔らかさと同じらしいね」
そう言うと綾音は何やら考えだした。
「ちょっとママこっちに来て。そうそう、ここに立って、これ持って、んーもうちょっとこっちきてそうそう逃げないように強く持ってて」
綾音に呼ばれた沙織は郁人の後ろに立ち郁人の手首を後ろで合わせている。
「ちょ、ちょっと?何してるんですか」
「ほんとに二の腕とおっぱいが同じ柔らかさなのか確認しようとしてるだけだよ?」
綾音は曇りひとつない目をしている。
「郁君・・・・・・ダメ?」
綾音は上目遣いをして郁人に訴えかけるように言った。
「ッ・・・・・・ダメって言っても俺もう捕まってるしどうせ無理矢理触られるんでしょ」
「うふふ」
「沙織さんも力強すぎますって・・・・・・」
郁人が少しは抵抗しようと腕に力を入れるが固まったかのようにびくともしない。
「もしかして、自分だけされるのが嫌なの?んー確かに郁くんだけ触られるのは不公平だよね」
「え・・・・・・」
「そんなに自信はないし、恥ずかしいけど・・・郁君だったら私はいいよ」
「え・・・ちょ、せん、ぱい?」
郁人は少し動揺しながらもまたいつもの冗談だろうと予防線を張っていた。だが綾音は悪戯な笑みを浮かべていない。代わりに俯きがちになりながら頬を赤らめている。
「でも、先に私が触ってもいい?まだ心の準備が出来てないからさ」
「うん、あっ、はい」
郁人はたじたじに答えた。
郁人が答えるとすぐに胸に向かって綾音の細くて白い綺麗な指が迫ってくる。郁人の目にはスローモーションに映り綾音の指が鮮明に見える。爪は少し長いが綺麗に手入れされ先は白く接着部分は程よく血色を帯びている。マニキュアが塗られているのか爪は全体的に透き通っており爪にあたる光は吸収されずに全て反射されている。爪の根元は綺麗な半月板が浮かんでおり、ささくれは見当たらない。
郁人は綾音の指に見惚れているが綾音の指が近づくにつれ心拍数が上がる。
(なんだか・・・むずむずする・・・・・・)
郁人は焦ったくてもどかしい気分になる。
綾音が胸部に触ると分かってるはずなのに、いや、分かっているからこそ郁人は緊張しているのかもしれない。
「やっぱり無理です!やめましょう!止まって指止めて!何で止まんないのぉぉ!沙織さんも手離してちょっと力強すぎますってびくともしないんですが?ほんとに笑ってないでお願いしますって!誰かぁお助けおおおおお」
郁人は金縛りにあってるかのように体を動かすことができない。
綾音の指はもうすぐそこまで来ていた。
(やばい・・・・・・)
「コツ・・・」
綾音の指が郁人の胸に触れた。生暖かく程よく柔らかい感触がした。郁人の意識が触れられている一点にだけ向いた。
「外からじゃ分かんなかったけど意外と固いんだね。やばいこれハマっちゃうかも」
綾音はそう言いながら何度も郁人の胸筋を押す。
郁人はむず痒く顔を顰めながら仰いた。
「ママも触ってみてよ。これクセになるよ」
「あら、ほんとー?でもいいのかしら。私みたいなおばさんが触っても」
「いーからいーから、ほらこっちきて」
「ちょ、ちょっと?何で先輩が許可出してるんですか」
「郁君はいちいちうるさいなー。ママも早く手離してこっちきなよ」
沙織は掴んでた郁人の手を離し郁人の前へと回った。郁人の手は漸く自由になった。
「それじゃあ失礼するわね」
沙織は微笑みながら郁人の胸を指の腹で押した。沙織の指は少し冷たく固い。
「あら、ほんとだわあんまり筋肉あるようには見えないけどしっかりと筋肉ついてるわね。やっぱり男の子だわ」
沙織も綾音と同じように何度も郁人の胸筋を触った。見たことのない物に興味を示す子供のようだ。
「くッ・・・・・・」
一方触られている郁人はというと、生暖かい綾音の指とひんやりとしている沙織の指に交互に触られて変な気分になってきている。肌と肌が直接触れている分もろ2人の肌あらゆる情報が伝わってくる。当然、郁人は女の人に胸を直接触られたことはないので初めてのことに困惑している。
「郁君なに変な顔してるの」
「だって・・・思った以上に2人が執拗に触るから・・・」
「だって触ってて気持ちいんだもん」
「「ねー」」
綾音も沙織も楽しそうにしているので郁人も触られて嫌ということはない。
「なんで郁君目瞑って上なんか見てるの。それに顔赤くなってきてるし」
「分かってて言ってますよねぇ?」
「あはは、ごめんごめん」
郁人は思わず嘆息した。
「あっ、そういえば約束忘れてた」
「約束・・・?」
「郁君だけ触られるのは不公平だからって私のも触ることになってたでしょ」
「本気で言ってたんですか?」
「そうだけど?」
キョトンとしている綾音に郁人は固唾を飲んだ。
「あーやって言っちゃったし約束は破りたくないから私は全然いいよ」
「いや、でも、ちょっとまずいんじゃ・・・」
「しないの?」
綾音は自らの豊満なアレを強調するかのように少しのけぞっている。その蠱惑的で魅力的な物に見せられ郁人の頭の中ではリトルふみエンジェルとリトルふみデビルが言い争っている。
(「ダメだ、とどまるんだ!理性を保て惑わされてはいけない」)
(「あっちもあーやって言ってるんだし一回ぐらい触っちまえよ誰にも怒られやしないんだからよ。ほらあれには夢が溢れるほどに詰まってるぞ。さぁ、触るんだ」)
(どうすれば・・・・・・)
「何してるのこっちだって全く恥ずかしくないわけじゃないんだから」
そう言って綾音は郁人の右手を掴むと勢いよく自分の胸の方へと引っ張った。
「むに・・・」
「「「あっ」」」
綾音は思っていたより強く引っ張ってしまい、郁人は反応が遅れ腕を引くのが遅れてしまい郁人の指は綾音の胸に思いっきり突き刺さりそれと同時に郁人の指は綾音の夢に優しく包み込まれた。
「ご、ごめんなさい、触るつもりは全然なくて・・・」
郁人は急いで腕を引っ込めて言った。
「ううん、こっちこそ・・・」
綾音は俯きながら言った。俯いていてよく見えないが郁人には綾音の顔が赤くなってるように見えた。
これはあくまで事故だが郁人は罪悪感に苛まれた。家族になったとはいえ女の人の大事なところを触ってしまったのだ。
2人の間に沈黙が流れた。
沙織はあらあらと言うだけである。
「てか、いつまで上裸でいるの・・・いくら昨日上着ずに寝たからっていつまでもそんな格好してないでよ・・・」
「は、はい」
恥ずかしながら綾音が早口に言うので郁人は反射的に返事をした。そうして郁人はリビングを出て自室へと戻った。
(柔らかかったな・・・)
郁人はさきほど優しさに包まれていた指を見ながらさっきの感触を思い出す。いつまでもあの感触が頭から離れていかない。服の上からだったのが不幸中の幸いだ。もしも直接だったら郁人は致死量の鼻血を出して倒れたことだろう。
「てか服の上からであの破壊力は神話級だろ・・・」
(それより何で昨日から上裸なの知ってたんだろう・・・昨日あれから先輩に会ってないよな)
そう思いながら郁人は下のズボンも脱ぎ、部屋着に着替えた。
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