最終章 幻のダンジョン
第46話 新ダンジョン
「えー、現在時刻20時57分。緊急で枠取りましたが音声やら何やら大丈夫でしょうか」
〈枠おつ〉
〈あれ、さっき配信終わんなかったっけ?〉
〈2枠目?〉
〈音声とかは大丈夫〉
〈洞窟の中か?またダンジョンに戻ったの?〉
〈さっき地震あったけど大丈夫ですか?〉
「色々疑問はあるかと思いますが、とりあえずこんばんは。サンです」
「あ、ミアでーす!」
「…これ俺も名乗った方がいいのか?」
「お願いします」
「万堂、です」
〈まだ2人ともいるのか〉
〈30層攻略配信終わってから解散してない感じ?〉
〈休日深夜に男女3人…何も起こらないはずもなく…〉
〈3人なら何も起こらないこともあるのでは?〉
〈深夜でもない〉
「えー、急に本日2度目の配信を始めた理由なんですけど、まず『品川ダンジョン』の探索が終わった後、私達は3人でご飯食べに行きました。ちなみに焼肉行きました」
「冷麺美味しかったよ!」
「いるか?その情報」
〈いる(鋼の意志)〉
〈ご飯情報助かる〉
〈肉じゃないんかーい〉
〈焼肉屋と言ったら冷麺よ〉
〈冷麺屋行けよもう〉
「で、ご飯食べ終わった後に3人で駅に向かったんですけど、さっき地震あったじゃないですか」
〈あった〉
〈そうなん?〉
〈揺れたの東京だけらしいな〉
〈震源東京の真下で最大震度1だったから地方民は知らんか〉
〈地震感じなかった地方民おりゅ???〉
〈東京住みマウントやめろ〉
「その時私達は外にいたんですけど、結構揺れを感じて…気付いたら目の前にダンジョンができてました」
〈ん?〉
〈何?〉
〈何て?〉
〈目の前にダンジョンができてました?〉
〈え?〉
「というわけで、今から新発見のダンジョンを探索する配信を始めまーす!」
「頑張るぞー!」
〈えマジ!?〉
〈おいおいおいおい、やったわこいつ!〉
〈今度は未発見の転移罠じゃなくて未発見のダンジョンですか…〉
〈最近大人しいと思ったらこれだよ〉
〈運24さあ…〉
〈また君か、壊れるなあ…〉
新発見ダンジョンの1層は洞窟のようになっていた。
広くはないが狭いというほどでもない。
『品川ダンジョン』21層辺りの洞窟と同じようなサイズ感だ。
〈新ダンジョンじゃなく品川ダンジョン戻っただけだったりしない?〉
〈てか新発見のダンジョンって勝手に探索していいのか?〉
〈私有地だと問題になるな〉
〈大丈夫そ?〉
「さっき調べたけど公有地でした。場所は…ちょっと伏せるんですけど」
〈何で?〉
〈言ったら他の探索者が来ちゃうからな〉
〈新品のダンジョンを最初に探索できんのが発見者の特権よ〉
〈実は嘘ついてて私有地なんじゃないの?〉
「いや嘘ついてもすぐバレるでしょ。配信してるんだから、証拠思いっきり残るじゃないですか」
〈確かに〉
〈それもそうか〉
〈品川周辺の公有地ってどこだ?〉
〈道路の上とか?〉
〈公園とか〉
〈駅に向かってたって言ってたから品川駅の近くなのは確定〉
〈震源から割り出せたりしないか?〉
「あの、ガチで特定しようとするのやめてもらっていいですか?」
何のために場所伏せてると思ってんだ。
「ねー、そろそろ進まない?」
「あ、はい。そうですね」
何か速攻で位置バレしそうだしな…。
さっさと探索進めて、さっさと発見者特権を享受させてもらうとしよう。
「新発見のダンジョンなので情報が何もないんですが、透視使います?」
「残りの魔力は?」
「4です」
「温存だな」
というわけで『透視』無しで進んで行く。
「初めてのダンジョンってワクワクするね!」
「今のところただの洞窟ですけどね…」
今はまだ何の変哲もない洞窟を歩いているだけ。
それでも視聴者数はガンガン増えていた。
【現在の視聴者数:9,600人】
ゲリラ的な配信だったが既に1万人近い視聴者数になっている。
"【緊急配信】新発見ダンジョン探索中!"
Xwitterも更新もしたので、視聴者数はここから更に増えていくだろう。
(お、1万人突破。この伸びのスピード感だと、久々に同接10万人超えるかもな)
そんなことを考えながら歩いていたら、道の端に宝箱が落ちていた。
「あ、宝箱だー!」
「待って、美愛さん!どう見ても怪しいですよ!」
「悪い、やっぱ『透視』使ってくれるか?」
『透視』を使えばこの宝箱が罠かどうか見破れる。
また、生物を透かすことができないので『宝箱型の魔物』だった場合にも対策が可能だ。
「透視!あー、透けませんね。これ魔物です」
「えー、本物の宝箱じゃないんだー」
ついでに周囲を見回すと、似たような宝箱型モンスターが何体も見つかった。
「火弾で燃やす?」
「そうですね。やっちゃってください」
美愛さんが『火弾』を放つと、宝箱は叫び声を上げた。
「GIGIIIIIIII!?」
「あ、死んだ」
「火弾1発か。大して強くはねえな」
美愛さんの火力も上がっているので結構誰でも1発KOにできるが、まあ見た感じ推奨討伐レベル10以下といったところか。
「あ!何かレアドロップっぽいよ!」
宝箱型モンスターが消えた後には魔石ではなく、1つの眼鏡が落ちていた。
丸眼鏡だ。
「何だろう、防具かな?」
拾って、何の気無しに掛けてみると、
ーーーーーーーーーーーーー
名 前:美愛
レベル:35
体 力:45
攻撃力:60
防御力:20
素早さ:30
魔 力:40/120【MAX】
運 :10
S P :0
スキル:火弾、連射、魔力回復、チアー、大炎上、暗視、火犬
ーーーーーーーーーーーーー
「おお、美愛さんのステータスが見えます!」
「えー!何それ、あたしも掛けたい!」
「鑑定効果付きの眼鏡か?」
「どう、似合う?」
「似合う似合う。それより万堂さんのヘルムの効果とかも見えますか?」
「ねえ、もっとちゃんと褒めてよ!えっとね、防御力+5だって!」
「合ってるな」
「ヘルムで+5は良い装備使ってますね…」
「これもレアドロップ品だ」
もっと色々見てみたかったが、近くに鑑定できそうな物は無い。
「少し先にも宝箱型モンスターがいたので行ってみませんか?」
「鑑定って魔物にも使えるの?」
「確かできるはず」
「基礎ステくらいしか見えねえらしいけどな」
洞窟を歩いていくと分かれ道に出た。
「こっちです」
「階段の場所は見えた?」
「見えませんでした。200メートル以上先のようです」
「あれか」
右の道に進むと、先の方にまた宝箱が出てきた。
これも魔物だ。
「鑑定どうですか?」
「あ、ダメ!『宝箱』としか出てこない」
「擬態中は鑑定不可か?」
「攻撃すれば鑑定通るようになりますかね?」
「やるよー、火弾!」
『火弾』を撃つと宝箱型モンスターは叫び声を上げ、そしてすぐに灰になった。
「どうでした?」
「えっとね、魔物の名前は『人食い宝箱』で、レベル5、素早さが低くて、擬態っていうスキル持ちみたい」
「1層からレベル5ですか。意外と高難易度ダンジョンなのかも?」
「あ、またレアドロップだー!」
「2連続でレアドロップだあ?」
「まさか、これレアドロップ確定?」
ドロップアイテムは『魔力ポーション弱』だった。
〈え、やばくね?〉
〈魔力ポーションってそんなやばいの?〉
〈そっちじゃなくレアドロ確定がやばい〉
〈レアドロップ確率って1/100くらいだからな普通〉
〈確定レアドロップならガチの宝箱や〉
〈鑑定眼鏡50万、魔力ポーション10万で既に60万円分稼いでるし〉
〈鑑定眼鏡高いな!?〉
鑑定眼鏡は今まで中難易度モンスターの『メガフクロウ』からしかドロップしなかった。
『品川ダンジョン』なら山フィールドでしか出ない魔物で、その上レアドロップなので結構高いらしい。
2回連続で幸運だっただけかもしれないので、私達は3匹目を倒しに行った。
曲がりくねった道の先に3つ目の宝箱があった。
「火弾!」
「GIGIGIIIIIIIIIIII!?」
「またレアドロップだー!」
〈3度続けてラッキーはありえないな…〉
〈レアドロ確定で間違いないか〉
〈このダンジョンやばくね?〉
〈宝の山かよ〉
〈ゲームの金策スポットみたい〉
〈現実世界で金策できちゃうのはまずい〉
〈このダンジョンの1層周回するだけで大金持ちや!〉
〈でも今回のは何かしょぼそうだぞ〉
今度のドロップアイテムは小汚くて小さな皮袋だった。
「何でしょう、これ?」
「ハズレか?」
「えっとね、『マジックバック』だって!容量300L…ってどれくらい?」
【現在のチャンネル登録者数:62万人】
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