第38話 出られない部屋
〈S●Xしないと出られない部屋!?〉
〈実在したのか…!〉
〈薄い本にしか無いものとばかり…!〉
〈ぬっ!!!〉
〈高まってきた!!〉
「待て待て待て、まだそうと決まったわけじゃない」
とにかく状況の確認をしようと思って私は『透視』を使った。
だが、壁も床も透けなかった。
「まさか、魔法無効?」
ここが魔法無効の空間となると面倒だ。
最悪『透視』で壁の薄い部分を探して『一閃』を使えば無理矢理脱出できるかと思っていたが、そういうわけにもいかなくなったらしい。
〈やっぱエッッなことをしないとダメそうだな!〉
〈脱出のために色々試すべき。まずは上から脱いでみようか〉
〈AVの撮影かな?〉
〈ムホホ〉
「キメェ…普段からアレだけど普段の5千倍くらいコメ欄がキモい。大体私1人でどうやってセッ…」
「きゃっ!」
「へぶっ!」
「いったーい!」
「GOBU!?」
〈!?〉
〈なんかきた!?〉
〈女だ!!〉
〈うおおおおおお!!??〉
〈全裸の女が空から降ってきた!?〉
〈何故かゴブリンも一緒だ!?〉
〈何で!?エロダンジョンだから!?〉
〈ちょっと名古屋行ってくる!!!〉
私は一瞬にしてドローンを自撮りモードに切り替えた。
コメント欄からは大ブーイングを食らったが、映せないものは映せない。
「あいたー…何、ここ?」
「そういえば、階段の前に転移罠があるって…」
「え、服溶けとる!?」
「GOBU?GOBU?」
「ゴブリンもおるがや!」
「こいつらがしつこく追ってくるから!」
「転移したの1匹だけなら袋叩きにしよ!」
「GOBU!?GOBUUUU…」
ゴブリンは女性3人にボコボコにされて死んだ。
「やった!」
「ざまーみろ!」
「ふう…それで、ここどこ…」
ゴブリンを退治し一息ついた3人と目が合った。
「えっと…」
「「「きゃー!!!」」」
「…とりあえず、早く服着てもらっても?」
3人とも替えの服はちゃんと用意していた。
…らしいのだが、着替えを入れていたバッグの紐を溶解液に切られてバッグごと紛失したたため、結局無いらしい。
仕方がないので私の服を貸した。
1人に上着。
もう1人には万一に備えて持ってきていた予備の服。
そして最後の1人には私の着ていたシャツで、何とか3人分を捻出した。
代わりに私はアンダーシャツ1枚になった。
念のため厚手で透けにくい黒シャツを着てきておいて本当に良かった。
「あの、サンさんって深層転移の人ですよね?配信見てます!」
「あたしも知ってる!」
「探索者ならみんな知っとるやろ」
「どうも…」
彼女達は地元に住んでいる探索者らしかった。
3人とも若く、私と同じくらいの年齢に見える。
現在も配信中であることを説明し、撮影許可をもらってからドローンのカメラを通常モードに戻した。
〈薄着の女の子が4人…ふむ…〉
〈なるほどね…〉
〈えっちだぁ…〉
〈一般の方だぞ、加減しろ〉
〈確かに…じゃあサンちゃんでええか!〉
〈1番可愛いのサンちゃんだしな!〉
〈うっ…ふぅ…〉
「サンさんも私達も同じ転移罠で飛ばされたのは分かったけど、結局ここって何の部屋?」
「軽く調べましたが何の手掛かりも無くて。お三方は何か知りませんか?」
「何だっけ…」
「どうせまたエッチなことになると思うんだけど…」
「うーん?」
こうなってしまっては仕方がない。
今までは自分に禁を課していたが、女性が3人もいるとなってはそうも言っていられない。
「普通にネットで調べよ」
『名古屋ダンジョン』も有名なダンジョンだ。
『Japanese hentai dungeon』として海外にもその名は広まっている。
ダンジョン内の罠についてもかなり詳しい情報が出回っているので、調べればここが何の場所なのかも、どうすれば脱出できるかも分かるはずだ。
「えー、11層の転移罠は…ランダム転移?」
「げ、ダンジョン内のトラップルームにランダムに飛ばすって書いてあるよ」
「じゃあ結局、ここがどこだか分からないってこと?」
…いや、まだだ。
転移先が分からずとも、ここがどういう場所なのかが分かればいい。
私は攻略サイトの『トラップルーム一覧ページ』を開いた。
「うっ…」
そこには多種多様なトラップルームが載っていて、そのどれもが見た目は同じ洞窟の一室だった。
「エッチな罠がいっぱいだぁ…」
「『服を脱がないと出られない部屋』とかあるよ」
「もう着ちゃったよ。さっき試せばよかったね」
何か…3人とも余裕だな…。
地元民的にはこういうことは日常茶飯事なのだろうか?
「あの〜サンさんって男性ですか?」
「え、何ですか急に」
「いやぁ…もしもの時は…ほら、ね?」
〈もしもの時!?〉
〈ガタッ!!〉
〈積極的だあ…〉
〈えっちだぁ…〉
〈せめて伏字にしろ〉
〈これサンちゃんが食われる側じゃね?〉
〈あ、そのパターンもあるのか〉
〈有名配信者と合法的に1発やれる空間でもあるわけか…〉
「そ、それよりみなさんは今何レベですか?」
〈露骨な話題転換〉
〈逃げたな〉
〈意気地なしめ〉
確認したところ3人とも15レベ前後だった。
「1番強いのは私か…」
〈つまり、ヤリたい放題ってこと!?〉
〈お巡りさん↑の奴です〉
つまり、何かあったら私が3人を助ける必要がある、ということだ。
「調べた感じ『何かしなきゃ出られない部屋』ではなさそうです。攻略サイトによれば、その手の部屋には指示書きがあるらしいので」
例えば『S●Xしないと出られない部屋』には『S●Xしないと出られません』と書いてあるらしい。
常識的に考えて『洞窟に閉じ込められたから脱出のためにS●Xしよう!』とはならないからな、普通。
で、この部屋にはそんな指示書き等は無かった。
「じゃあどうしたら出られるの?」
「1番分かりやすいところだと時間経過で…」
丁度その時、壁が倒れて出口が開いた。
「あ、出口だー!」
「時間経過ってこういうことね!」
「10分待ったら出口が開く部屋だったんだ!」
「待った!!」
10分待ったら出口が開く部屋、というのは確かに間違いではないかもしれない。
だが果たしてそれだけか?
そんなつまらないトラップルームがあるだろうか?
「げっ、何か来た!」
「何あれ!?きっも!」
「しかも何かいっぱい来るよ!?」
予想通り、壁に開いた穴から魔物がうじゃうじゃと入ってきた。
全長2メートルくらいのタコのような魔物で、触手の先から白濁液を垂れ流している。
それが10体以上も入ってきた。
どうやらここは『エロモンスターハウス』だったらしい。
〈ホワイトオクトパス。推奨討伐レベル20です〉
「20か…3人は私の後ろへ」
「でも、あんな沢山の魔物を1人じゃ…」
「バウンド!一閃!」
スキルを発動し、超速で背後を取ってタコの頭を斬り飛ばす。
まずは1体目。
(感触が柔らかい。これなら一閃無しでも全然いけそう)
「バウンド!バウンド!バウンド!バウンド!バウンド!バウンド!バウンド!バウンド!バウンド!バウンド!」
『バウンド』を連発してタコの頭を1つずつ斬って回った。
30秒ほどでホワイトオクトパスは全滅した。
「さ、脱出しましょうか」
「はっや…」
「凄すぎ…」
「やば、ちょっとかっこよくない!?」
トラップルームを出て一本道を真っ直ぐに進むと、人の大勢いる空間に出た。
全員探索者のようだが、男性ばかりが10人以上も集まっているのは異様な光景だった。
とりあえず、手近な人に話しかけてみた。
「すみません、ここって何層ですか?」
「んん?ここは18層だけど…」
18層か。
概ね予想通りの階数だった。
20レベの魔物が一般魔物として沢山出てくるなら大体そのくらいだろうと思っていた。
「あれ、君もしかしてサン?配信者で深層転移の?」
「…どうも」
「え、マジ、本物!?何で名古屋に?あ、品川ダンジョン封鎖中か。もしかしてまた転移罠踏んで飛ばされてきたとか?」
「ははは…」
全部正解だよ。
「ところで、何でこの階層はこんなに人が多いんですか?」
「ああ、この階層にはウンディーネが出るんだよ」
『ウンディーネ』は水の精霊…のような魔物だ。
外見を一言で説明するなら『スライム女』だ。
全身が水で構成されていて半透明だが、目も鼻も口もあり、ちゃんと人に見える。
「出たぞ!」
「きたー!!」
洞窟中央の湖がブクブクと音を立てたと思ったら男達が一斉に動き出した。
「ぐへへ…ウンディーネちゃん今日も可愛いね…」
「今日はショートヘアウンディーネちゃんか…良いね!」
「くそっ、こっちからじゃ角度が悪い!」
「馬鹿、尻が1番良いんだろうが!見ろ、このツルツルのお尻を!」
〈うわぁ…〉
〈エ●魔物コレクターかあ…〉
〈Xwitterとかに流れてくるえちえちモンスターの画像ってこうやって撮影されてるのか〉
〈良いよねウンディーネちゃん〉
〈ウンディーネとサキュバスはモンスター娘でも別格よな〉
〈ヨーロッパのダンジョンにしか出ないけどダークエルフちゃんとかもええぞ!〉
コレクターの人達は見なかったことにして、私達は上層を目指した。
(企画的には最下層まで行きたかったけど…流石に薄着の女の子3人を放っていくわけにはいかない)
調べたところ16層に6層行きの転移陣があったので、まずは16層を目指す。
この辺りは大地底湖フィールドだったが、湖の周りをぐるっと回れば水に濡れずに進んでいけた。
道中の魔物は全て私が倒した。
また男性探索者パーティーと何度かすれ違い、その度に視線を感じたが、特に何かされたりはしなかった。
「6層だー!」
「このまま地上まで送りますよ」
「良いんですか?」
「ありがとうございます!」
それから1時間もしないうちに地上まで辿り着き、配信は終了にした。
最下層までは行けなかったし、一瞬肌色が映ったりしたが、私自身はノーエッチで終わったのでとりあえず良し!
「今日は色々ありがとうございました」
「気にしないでください。その服も返してもらう必要はないので。じゃ、私はこれで!」
面倒事を避けるべく、私は早々にその場を辞した。
「あ、待って!」
「行っちゃった…」
「えー、インヌタやってるかとか聞きたかったのに!」
その後、服屋に寄って安い上着を1枚買い、それを羽織って新幹線に乗って東京へ帰った。
新幹線内でXwitterを更新したら、
"人間新幹線のサンさんでも新幹線に乗るんですね"
という趣旨のリプがめちゃめちゃ飛んできた。
名古屋から東京まで走って帰るわけないだろ…。
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