第39話 ラブラブ♡カップルチャンネル
「リスナーのみんなー!こんばんはー!探索者カップルチャンネルの〜ミア&サンでーす!」
「っていう趣旨の企画回です」
〈きたー!〉
〈始まった!〉
〈なんて?〉
〈カップルチャンネル!?〉
『品川ダンジョン』の立ち入り禁止がようやく解除されてから数日。
あたしはサンさんからある相談を受けていた。
『何か良い感じの企画ネタないですか?』
『カップルチャンネルやりたい!』
『ええ?』
で、今日こうなったってわけ!
1回やってみたかったんだよね、カップルチャンネル!
「私、カップルチャンネルって見たことないんですけど、具体的に何をすればいいんですか?」
〈ワイも見たことない〉
〈俺も〉
「あれ?みんな意外とカップルチャンネル見てないんだ?」
おかしいな。
学校だと結構見てる人いるんだけどな?
「もしかして男の人ってあんまりカップルチャンネル見ない?」
「どうでしょうね?女性の方が好きそうなイメージはあります」
「えっとね〜、カップルチャンネルはカップルが仲良くしてるのを見てキュンキュンしたり、いいなーあたしも恋愛したい!って気持ちになる感じのやつです!」
〈お、おう〉
〈つまりどういうことだってばよ?〉
〈分かるわ〜〉
〈感覚的過ぎて分かんねえ…〉
〈幸せそうな人見てると幸せな気持ちになるじゃん?それよ〉
「そうそれ!幸せのおすそ分けみたいな!」
「…よく分かりませんが、とりあえず今日は私と美愛さんがイチャイチャするってことですよね?」
「そう!」
「…やっぱ、やめておきません?」
「ええ!?何で!?」
「いや、美愛さん彼氏いるじゃないですか。ワンチャン炎上しませんかこれ?」
「企画だから大丈夫!イチャイチャする『振り』だからセーフ!」
「本当に大丈夫かなぁ…?」
サンさんはめちゃめちゃ渋っていたけど、ゴリ押ししたら最後には折れた。
ゴリ押し最強伝説。
〈とりあえずやってみよ?〉
〈またミアちゃんの彼氏君の脳みそが破壊されそうな企画だなあ…〉
〈じゃあいつも通りか〉
全然乗り気じゃなさそうなサンさんの手を捕まえてカップルチャンネル企画スタート。
「とりあえず手繋ごう!」
「もう捕まってますが…」
1度手を離してまた繋ぎ直す。
「えへへ!」
「…何か、楽しそうですね」
「うん!探索者始めてから1番楽しいかも!」
「そうですか…でもこれ動きづらくないですか?」
「大丈夫!今日はあんまり深い層まで行かないから!」
とにかくイチャイチャするのが目的なので、探索は安全な上層でやる。
「次は呼び方も変えよ!あたし呼び捨てが良い!」
「美愛?」
「きゃー!!!」
〈ミアちゃんテンション高すぎてワロタ〉
〈楽しんでんなぁ…w〉
〈サンミア尊い〉
〈気付いたらニヤニヤしてた〉
〈なるほど…これがカップルチャンネルか…〉
〈ワイは百合チャンネルだと思って見てる〉
他にも色々やりたいことはあるけど、ひとまずこの状態で『品川ダンジョン』7層の探索を始めた。
「あ、
「任せて!火弾!」
「HUGOOOO!!?」
ワイルドボアは『火弾』1発で灰になった。
レベル差がめっちゃあるから当たり前だけど。
「美愛さん、ナイス!」
「さん?」
「あ、美愛ね。美愛、ナイスー」
「ありがとうー!」
次に出会したのは『
「任せて!火弾!」
「BIIIIIIIIII!!?」
「美愛、ナイスー!」
次に出会したのは『
「任せて!火弾!」
「KYUUUU!!?」
「美愛、ナイスー!」
次に出会したのはサンダーバードだ。
「任せて!火弾!」
「KIIIIIIIIII!!?」
「美愛、一回待とうか」
階層主のサンダーバードを燃やしたところでサンさんから待ったがかかった。
「どうかした?」
「私さっきから何もしてない」
「何か問題ある?」
「ないっちゃないけど、美愛さんに任せっきりっていうのはちょっと…」
「確かに、カップルチャンネル的にも微妙かも?」
ということで次の魔物はサンさんに任せることにした。
「じゃあ手を離してもらって」
「それはダメ」
「ええ?」
「あたしも一緒に動くから、一緒に倒そ?」
次に出会したのはダンジョンウルフだった。
結構速めの魔物だけど、あたしも素早さ25あるから何とかついていけるはず。
「右回りに動いて側面か背後をつきます」
「分かった!」
「3、2、1、今!」
2人で同時に右方向へ動く。
ダンジョンウルフも反応してバックステップしたけど、あたし達も追いかけて距離を詰めた。
「せいっ!」
「GYAOOOOO!!?」
「サン、ナイスー!」
〈まあ一撃だよな〉
〈レベル差めっちゃあるしな〉
〈それよりミアちゃんのスピードに合わせて動いたサンちゃんを褒めるべき〉
〈最速ならスポーツカーだもんな〉
〈結構速度調整効くんだな〉
7層の魔物はそこそこ倒したので、8層に行くことにした。
移動の間は雑談タイム。
そして今日は雑談内容もカップルチャンネル仕様だ。
「今日は恋愛相談とか恋愛系の質問に答えるよ!」
〈2人はお互いのことどう思ってますか?〉
「好きだよ!」
「まあ、ぼちぼち…」
「ぼちぼちって何!?ぼちぼち好き?ぼちぼち嫌い?どっち!?」
「まあ…嫌いなら一緒にはいませんし」
「じゃあ好きってこと?」
「まあ…」
「そうなんだ…へへ、ちょっと照れちゃうかも」
〈ガチ照れじゃねーか〉
〈サンミア派のワイ、無事脂肪〉
〈デブかな?〉
〈糖分過多でね〉
〈これで付き合ってないってマジ???〉
〈恋愛相談しようと思ったら文字数制限に引っかかりました!〉
〈コメントって200文字までだっけ?〉
「そうなんだ。あたしいつも『ナイス!』くらいしかコメントしないから知らなかった」
しかし、そんなこともあろうかと恋愛相談はXwitterで事前に募集してあった。
「えーっと、『サンさん、ミアさんこんばんは。いつも配信楽しく見ています。さっそく恋愛相談なのですが、私もダンジョン探索者です。この間パーティーの仲間のAから告白されました。男男女の3人パーティーで、Aとも仲は良いのですが、私はもう1人の男のBが好きです。どうしたらいいでしょうか?』だって」
「あー…」
〈パーティー内恋愛かあ…〉
〈男女混合パーティーの解散理由第1位じゃん〉
〈これAとBが男で質問主が女だよね?〉
〈そうじゃなかったらA女→質問主男→B男でBLが始まってまう〉
「これはまあ、本人の気持ち次第だと思いますけど」
「うんうん」
「A振ってBと付き合ったらパーティー解散待ったなしでしょうね…」
「あー、やっぱり?」
〈振られた上に質問主とBがイチャイチャすんの見せられるわけだしな…〉
〈A君の立場になると地獄だな…〉
〈じゃあA君と付き合った方がいいか?〉
〈そっちの方がまだパーティーは維持できそう〉
〈パーティーよりもBの方が好きな場合だけBいってもいい感じか〉
〈誰とも付き合わないのが多分1番丸く収まる〉
「ただ、私はBいっても良いと思います」
「え、ちょっと意外かも!」
「自分の気持ちを
「サンも似たような経験したことあるの?」
「はい。未だに引きずってます…」
「そうなんだ!?今日何か意外な話がいっぱい出てくる!」
「探索者始めた頃、本当はロングソードが使いたかったんですけど高いからって短剣にしたのを未だに後悔してて…」
「ん…?」
〈いや武器の話かーい〉
〈恋愛話じゃねえのかよ!〉
〈全然意外でもなんでもなかった!〉
〈今日はカップルチャンネルだぞ!ギャグでオチ付けようとするのやめろ!〉
「いやでもマジな話、やりたいことがあるなら他人に流されない方がいいですよ。恋愛でも何でも」
「それはそうかも!」
「私もなあ…受付のお姉さんに『ロングソードは筋力無い人には向かないですよ?』とか言われなければなあ…」
「本当に凄い引きずってる!」
恋愛相談をしていたら8層に着いていた。
そろそろ次の企画にいってみよう。
名付けて『わざと転んでピンチになったらサンはどうするかドッキリ』だ。
「向こうにダンジョンビーがいますね」
『ダンジョンビー』は大きな蜂の魔物だ。
素早さが高い分、攻撃力は大したことない。
ドッキリを仕掛けるには丁度いいかも。
「今回もサンに任せていい?」
「分かりました。じゃあ今回は左回りで接近します」
「分かった!」
先ほどと同様、3カウントで左に走り出す。
(そしてここで転ぶ!)
あたしは足がもつれたフリをして転倒した。
「きゃー!」
その拍子に繋いでいた手も離した。
すると、隙を見せたあたしに向かってダンジョンビーが襲いかかってきた。
「いやー!」
と叫んでみるけど、あたしの防御力は20あるし体力も30ある。
攻撃を受けても1発くらいなら問題ないはずだ。
「美愛!!」
しかし、ドッキリと知らないサンは大慌てで助けに来てくれた。
「バウンド!」
「ひえっ!?」
一瞬のうちにサンさんはあたしを抱えて空高く大ジャンプ。
「大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫…」
と口では言ったけど、内心ドキドキが止まらなかった。
思っていたよりも密着する感じになったし、思っていたよりもサンさんが真剣な顔をしているし、思っていたよりも地面が遠い。
(このドキドキは…恋?それともこれからタワー・●ブ・テラーみたいに落下することが確定していることへのドキドキ?)
どっち!?
心臓がフワッと浮くようなフリーフォールの後、サンさんは問題なく地面に着地した。
結構遠くにジャンプしたみたいで、近くにダンジョンビーの姿はなかった。
少ししてドローンも追いついてきた。
「やっぱり、手を繋ぐのはやめましょう」
「え、何で!?」
〈動きにくいし危ないもんな〉
〈転んだ時はマジでどうなるかと思ったぞ〉
〈ダンジョンではあんまふざけない方がいい〉
〈事故ったら洒落にならないしな〉
思っていたよりみんな心配してくれていた。
どうしよう、『ドッキリ大成功〜!』って言える雰囲気じゃなくなっちゃった…。
でも言わないと今度は手を繋ぐのが無理になってしまう。
「あのぉ…実はさっきのはドッキリで…」
「は?」
「『あたしがピンチになったらサンさんはどうするかドッキリ』だったんだけどぉ…」
「は?」
「ご、ごめんなさい…」
サンさんはめちゃめちゃ半眼であたしを睨んできた。
こ、怖い。
「本当に心配したんですよ?」
「そんなに心配してくれたの?」
「美愛さん?」
「あ、ごめんなさい…」
怒りのあまりサンさんは『さん付け』に戻ってしまった。
反省。
〈これは流石にミアちゃんが悪い〉
〈本当に反省してるか?〉
〈ちょっとニヤついてない?〉
違くて。
本当に反省はしていて。
でもあたしのために困ったり焦ったり怒ったりしてくれるのはちょっと嬉しい気持ちもあるだけで…。
サンさんはめちゃめちゃ怒っていたけど、あたしがしょんぼりしていたら許してくれた。
「はい、手」
「え、いいの?」
「その代わり、もうドッキリは無しですよ」
「うん、もう絶対やらない!」
そしてまた手を繋いで歩き出した。
「他には何かやりたいことありますか?」
「食事休憩にして2人でアーンってするやつやりたい!」
「却下で」
「何で!?」
「炎上しそうだから…」
「絶対大丈夫だからやろうよー!」
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