第13話 22層

ジャイアントバットを倒した後、私達は22層の階段で小休止を取った。

そこでお互いのステータス確認をしたが、流石に万堂さんは強かった。

典型的な万能戦士で装備も厚め。

平たいステータスに近接メインの装備、魔力を使えば中距離でも戦えて、盾で防御の動きも出来る。

ついでに言えば、強面だがイケメンの部類に入る容姿をしていて、外見や言動に反して優しそうな人のようだ。


〈これだよこれ〉

〈真っ当な中堅冒険者や…〉

〈こういうのでいいんだよこういうので〉

〈防御力47の安心感凄い〉

〈サンなんて防御力10だもんな〉

〈この階層なら一撃食らったら4ぬな〉

〈見ててずっとヒヤヒヤしてたからな…〉


リスナーを不安にさせてしまったのはマジですまんかったと思っている。

でもまさか未発見の転移罠を踏んでしまうなんて想像もしていなかった。

これも運24のせいだろうか?

でも転移罠踏んだのは美愛さんだったんだよなあ。

で、その美愛さんなんだが、


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:ミア

レベル:10(+2)

体 力:15

攻撃力:18

防御力:15

素早さ:15

魔 力:16/25

 運 :10

S P :14(+14)

スキル:火弾、連射

ーーーーーーーーーーーーー


ジャイアントバット戦を手伝った結果レベルが2も上がった。

格上の魔物と戦うとレベルは上がりやすいが2レベも上がることは中々ない。

ちなみに私は何の手伝いもしていないので8レベのままだ。


「SPの割り振りどうしよう?」

「好きにしたらいい」

「一応防御とか素早さを優先した方が生存率は上がるんじゃないですか?」

「分かった!」


で、こうなった。


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:ミア

レベル:10

体 力:19(+4)

攻撃力:18

防御力:20(+5)

素早さ:20(+5)

魔 力:16/25

 運 :10

S P :0

スキル:火弾、連射

ーーーーーーーーーーーーー


「この後も戦闘は俺がやるが、遠くの敵には魔法攻撃を頼むかもしれん」

「任せて!」

「火弾は何発残ってる?」

「えっと、16!」

「それだけ撃てれば支援役には十分だろ」

「あの〜、私は何か…?」

「あー…あんたは……特にねえな…」

「ですよね…」


私も万堂さんも同じ近接型。

そして素早さ重視の私より万能構築の万堂さんの方が素早さでも上。

私に仕事は無かった。

ひん…。




22層に上がってすぐに魔物と遭遇した。


「シャドウかよ。ここで1番厄介なやつじゃねえか。魔法援護頼む!」


〈何だあの影みたいな魔物〉

〈シャドウっていうんなら影なんだろうよ〉

〈推奨討伐レベル23、物理攻撃軽減を持ってて魔法が弱点〉

〈有能リスナー〉

〈有能コメ助かる〉

〈って攻略サイトに書いてあった〉

〈攻略サイトかーい〉


なるほど、それで美愛さんに魔法援護を頼んだわけか。


「いくよ!火弾!火弾!火弾!」


『火弾』3発のうち当たったのは1発だけだった。

それにダメージが入った様子もない。

弱点でも攻撃力20未満の魔法では一瞬の足止めが精一杯のようだ。


「アースブレード!」


その足止めの時間を使い、万堂さんはロングソードを土で覆った。


〈魔法剣だ!〉

〈かっけえ!〉

〈いいなー俺も魔法剣やりてえよ!〉

〈中二心がくすぐられるな〉

〈この胸の高鳴り、これが……恋?〉

〈何でやねん〉

〈ワクワクが止まんねえな!〉


万堂さんがシャドウに向かっていく。

シャドウは影のようなものを伸ばして攻撃してきた。

だが、全て万堂さんの剣に斬り飛ばされ、そのまま本体も真っ二つに斬られて消え去った。


「ナイスー!」

「つっよ」

「厄介な魔物だが、魔法が使えればまあ雑魚だ」

「あ!またあたしレベル上がった!」


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:ミア

レベル:12(+2)

体 力:19

攻撃力:18

防御力:20

素早さ:20

魔 力:13/25

 運 :10

S P :12(+12)

スキル:火弾、連射

ーーーーーーーーーーーーー


「また2レベ上がってる…」


これはもう完全に『パワーレベリング』だな。

強者に手伝ってもらってレベル上げをする行為だが、パワーレベリングは世界的に非推奨とされている。

でも今回は非常事態なので許してほしい。


「体力と攻撃力に3ポイント振って…あとは?」

「防御か素早さでいいんじゃないですか?」

「でも、もうちょっと攻撃力欲しくなかった?」

「ここじゃ攻撃力30以下は意味ねえ。迷ったら魔法使いは魔力に振ればいい、ってどっかで聞いたぞ」


で、こうなった。


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:ミア

レベル:12

体 力:20(+1)

攻撃力:20(+2)

防御力:20

素早さ:25(+5)

魔 力:17/29(+4)

 運 :10

S P :0

スキル:火弾、連射

ーーーーーーーーーーーーー


うーむ…私と美愛さんの間でも結構レベル差ができてしまった。

素早さも追いつかれたし、もう私が勝ってるところ運24しかないぞ。

仕方ないこととはいえ、少し焦ってきた。


(無事に帰れたら、ソロでレベル上げ配信でもするか…)




21層へ上がる階段の目前でまた魔物と遭遇した。


「22層の階層主だ。2人とも下がってろ」


魔物の名は『スカルリザード』。

『リザードマン』という二足歩行するトカゲ戦士の変異種だ。

リザードマンから肉が消えて骨だけで動いている。


〈スカルリザードは推奨討伐レベル25。近接系の魔物だから任せた方がいい〉

〈今回は魔法の出番もないか〉

〈レベル上げのために1発だけ撃ったら?〉

〈必要ないなら魔力温存した方がいいだろ〉

〈この後で必要になるかもしれないしな〉

〈レベル上がった分魔力に振れば良くね?〉

〈パワーレベリングはダメだって〉


「アースブレード」


相手が階層主ということで万堂さんも全力を出すようだ。

土魔法でロングソードをコーティングし、突進して行った。


「ウオラッ!」

「KAKAKA!」


しかしスカルリザードの方が動きが速く、万堂さんの攻撃は避けられた。

避けた拍子に万堂さんとスカルリザードの位置が入れ替わる。

スカルリザードの空っぽの目が私達の方を向いた。


「やばっ!こっち見てる!」

「石飛礫!」


万堂さんは中距離攻撃魔法でスカルリザードの背中を撃った。

飛礫は命中し、スカルリザードの注意は再び万堂さんに戻った。


〈こっわ〉

〈今こっち来てたらヤバかったな〉

〈あぶねー〉

〈万堂さんナイスゥ!〉


「くたばりやがれ!」


万堂さんは再びロングソードを払った。

が、またしても避けられ、今度はスカルリザードの右腕が万堂さんを襲った。

それに対して万堂さんは左腕の盾を構え、


「シールドバッシュ!」

「KARO!?」


防御行動かと思いきや、スキルを使用し盾で弾いてスカルリザードの右腕をぶっ飛ばした。


「テメェは軽いんだよ!」


三度振るわれたロングソードはついにスカルリザードの肩口に食い込んだ。

バキバキと音を立てて鎖骨から肋骨までを両断。


「やったか!?」

「KARORORORO…」


深手は負わせたが、スカルリザードはまだ生きていた。

跳ね回って万堂さんから離れていく。

しかし、その動きは明らかに鈍っていた。


〈効いてる効いてる!〉

〈スカルリザードは素早さ高めで防御力低めだから今のでほぼ決まりだ〉

〈サンちゃんの完全上位互換って感じの魔物か〉

〈ダメージ入って足の止まったサンとか雑魚じゃん〉


なんて分かりやすい例え話なんだ…。

ついでに私がディスられた気もするが、まあいいか。

万堂さんが追撃する度にスカルリザードは骨が砕けて弱っていった。

最後には全身の骨がバラバラになって地面に崩れ落ちた。




「やったー!」


美愛さんの歓声が響く。

コメント欄も万堂さんの勝利に沸いている。

中々しぶとかったが終わってみれば今回も無傷の勝利だった。


「一回倒した相手だからな。戦い方は分かってる」


万堂さんがこちらを向いてそう言った。

剣を振り、魔法を解き、ロングソードを納めた。

その時だった。


「KARORORORO!!!」

「!?」


死んだはずのスカルリザードの骨が宙に浮いた。


(何だあれは、まさか、魔物が死んだふり!?)


ダンジョンでは魔物は死んだら塵になって消える。

スカルリザードは骨が崩れただけで、塵になってはいなかった。


「くそっ!」


次の瞬間、バラバラに崩れた骨が一斉に私たちに向かって飛んできた。

22層の階層主の不意打ち攻撃。

素早さ25の私と美愛さんに回避する手段は無かった。



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