第3章 黒髪短髪強面万能男さん

第11話 パーティー名を決めよう

「こんばんはー。新人ダンジョン配信者のサンです」

「やっほー!美愛です!ところで、サンさん」

「何でしょう」

「パーティー名決めない?」

「唐突過ぎん?」


〈こん〜〉

〈はじまた!〉

〈毎日配信助かる!〉

〈今日はパーティー名決め配信?〉

〈マジで唐突やな〉


今日も『品川ダンジョン』5層に来ているのだが、どうもダンジョン探索の前にパーティー名を決めなければいけないらしい。


「パーティー名って…要ります?」

「要るよ!他の人みんな付けてるじゃん!」


複数人でダンジョン探索する際のチームのことを『パーティー』と呼ぶ。

『パーティー名』はつまりチーム名だが…要るか?

私達は夏休み限定の短期間パーティーだぞ?

どうせすぐ解散するならパーティー名なんか要らないのでは?


「ちなみに何か良い案あります?」

「ない!」


〈ないんかい〉

〈言い出しっぺさん!?〉

〈何も考えてないミアちゃん可愛いよhshs〉


特に案も無いなら付けなくてもいいのでは?

…と思ったが、まあ「パーティー名を考える」というのも1個のネタにはなるか。


「分かりました。じゃあ今日は『パーティー名大喜利』ということで…コメントのみなさん頑張ってください」


〈え!?〉

〈俺らに全振り!?〉

〈ぶん投げやがった!〉

〈い つ も の〉




ということで唐突に始まったパーティー名大喜利。

司会進行は私とミアさんでお送りいたします。


〈急になんか出せと言われてもなあ〉

〈漆黒の混沌(カオス)〉

〈ダッサ〉

〈厨二病くんさぁ…〉

〈かっこいいだろうが!〉

〈2人に何の関係もないじゃねーか〉


「あたしらに関連する名前がいいよね」

「まあ、できれば」


〈じゃあ俺の嫁で〉

〈は?56すぞ?〉

〈俺の嫁だが?〉

〈サンくんは男の子なんだよなあ…〉

〈こんな可愛い子が男の子なわけないだろ!〉

〈こんな可愛い子が女の子なわけないだろ!〉

〈あーもうめちゃくちゃだよ〉

〈戦争か?〉

〈上等だ表に出ろ〉


「みんな仲良くしな?」

「今のところ『漆黒の混沌』と『俺の嫁』しかないから消去法で『漆黒の混沌』か…」

「え、普通に嫌なんだけど…」

「私も嫌です」


〈何か取っ掛かりが欲しいな〉

〈ジョブから取るか〉

〈美愛ちゃんが魔法使いで、サンは…斥候?〉

〈斥候っぽいワードが分かりません!〉

〈煉獄の神風(タキオン)〉

〈だっさw〉

〈厨二病くんさぁ…〉

〈〇〇の〇〇やめろ〉

〈ちゃんと2人に因んだじゃん!〉

〈もうサンと愉快な仲間たちでええやろ〉

〈仲間たち(1人)〉


「えー、あたしがオマケみたいじゃん!やだ!」

「何でも良いと言っても結構難しいですね」


〈マジカルスピード〉

〈ダサい〉

〈そこはかとない加齢臭〉

〈もう何言ってもダサいって言われそうで嫌だな…〉

〈風林火山〉

〈ダサい〉

〈何でや!ダサくないやろ!四字熟語やぞ!〉

〈四字熟語ならセーフみたいな思考がもうダメ〉

〈何にでも文句を付ける天才か?〉


「中々決まんないね?」

「そうですね。こうなったら他のパーティー名を参考にしますか」

「たとえば?」

「有名どころだと『DDD』とか『百鬼夜行』とか?」


『DDD』は世界1位のパーティー。

『百鬼夜行』は日本1位のパーティーだ。


〈う〜ん、かっこいい!〉

〈四字熟語じゃねーか〉

〈っぱ四字熟語よ!〉

〈アルファベット3文字にするのもあるあるやな〉

〈『電光石火』なら火も入ってるし良くね?〉

〈既にいそう〉

〈被り気にしてたら何も付けれんぞ〉

〈プリンセス…エンジェル…あと何だ?〉

〈は?サン君はプリンスだが?〉

〈わかったわかった両方使えばええやろ。パーフェクト、プリンス、エンゼル、プリンセス略して…〉

〈PPAPじゃねーか!〉


そのネタもう随分古いぞ。

見ろ、16歳の美愛さんが「?」マークを浮かべてる。


〈『あゝ無情(レ・ミゼラブル)』これにしよう〉

〈何だそれ〉

〈小説から持ってくるタイプね〉

〈『90層は遠すぎる』〉

〈『魔法使いはダンジョン制覇の夢を見るか?』〉

〈『ミアちゃんは無慈悲なワイの女王』〉


「私の要素無くなったぞ」

「ダンジョン制覇する夢なんて見たことないよ?」


〈あ、知らないかぁ〉

〈ミアちゃん本読んだこと無さそう〉

〈紅蓮のフォルトゥーナ〉

〈あー幸運ね〉

〈フォルトゥーナって何?〉

〈幸運の女神〉

〈今のところ1番良くね?〉

〈〇〇の〇〇じゃねーか〉

〈俺の時はダサいって言ったのに!〉

〈お前のはダメ〉


「え、何かカッコよさそうだし良いんじゃない?」

「うーん…でもパーティー名聞かれた時に『紅蓮のフォルトゥーナです!』って言うの恥ずかしくないですか?」

「それもそうかも」


〈ちょっと間延びした感じあるか〉

〈あかんかー〉

〈省略するか〉

〈紅蓮ってアメリカ語で何て言うんや?〉

〈SFF、ソードとファイヤーと幸運の女神〉

〈あり〉

〈何か無難な感じになったな〉

〈ええんやない?〉

〈でも2人パーティーの3文字アルファベットってキモくない?〉

〈一理ある〉

〈ほなFFかあ〉

〈ファイナル●ファンタジーじゃねーか〉


その後も色々な案が出たが、最終的に『2F』で落ち着いた。

読み方は『ニーエフ』だ。

謎の外国人感があって良いだろう。


〈気付いたら2階って呼ばれるようになってそう〉


やめろやめろ!




パーティー名を決めた後はいつも通りの探索&レベリングだ。


〈どうせなら6層でレベル上げした方が良くない?〉


「いや、昨日調べたけど6層の主は『グリーンウルフ』で推奨討伐レベルが10。しかも完全移動型のボスらしい」


私達のレベルでは多分勝てず、いつ遭遇するかも分からない。

よって、今回はちゃんとレベルを上げてから次の階に進む予定だ。


「あ、ゴブリンだ」

「普通のゴブリンかな?」

「あたしやって良い?」

「どうぞ」

「火弾!」

「GOBUUUUUUU!!」


〈ワンパンで草〉

〈よえー〉


「もうゴブリンには負けないよ!普通にやればちゃんと勝てるんだから!」


〈はいフラグ〉

〈実際魔法使いなら完封できる〉

〈最弱モンスターやしな〉

〈一応1層のゴブリンよりはレベル上がってるはずなんだけどな…〉


レベルが上がっていても所詮はゴブリン。

遠距離攻撃手段が無ければ美愛さんの火魔法で一方的に倒すことが可能だった。


「5層はもうボスも倒したから余裕だね」

「調子乗ってると危ないですよ」


〈あ、イエローモンキーだ!〉


「火弾!」

「UKIIIIIIIIIIII!?」


樹上から現れた黄色い猿の魔物も火弾の餌食になって倒れた。


「すまん、余裕だわ」


〈神速の手の平返し〉

〈サンさんさあ…〉

〈痛い目見ても知らんぞ〉

〈レベル的にはジャイアントフラワー以外怖い魔物いないしな〉


その後も魔物狩りを続けたが、危険なシーンは全くなかった。

『ホーンラビット』も『首無し馬』も『暴れ柳』も完封で倒した。


「もしかして、あたし達ちょっと強すぎ?」

「敗北を知りたい」


〈調子乗ってんねえ!〉

〈自分から負けフラグを立てていくスタイル〉

〈絶対痛い目見るやつ〉

〈いやエロい目にあえ〉



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