第4話 初スキル

「えー、今日も今日とて『品川ダンジョン』2層攻略です」


〈ぬるっと始まったな〉

〈見慣れぬ2層〉

〈1層とそんな変わんないだろ〉

〈今日は何縛りですか?〉


「今日は縛り無しです。昨日散々やったんだからいいでしょ」


〈ダメ〉

〈ダメです〉

〈毎日縛りプレイしてどうぞ〉

〈おじさんもサンちゃんと縛りプレイしたいナ♡〉


「きっっっしょ」


きしょコメおじさんは見なかったことにするが、縛りプレイがウケたのは確かなようである。

昨日の今日でチャンネル登録者数は130人にまで増えた。

1日で20人も増えるのは新記録だ。

最初は20人集めるのに1週間くらいかかったのを考えると結構な進歩を感じる。


(やっぱ人が増えると伸び方も早くなるな)


とはいえチャンネル登録者数130人なんてものは広いインターネットの中では底辺。

今後も頑張っていこう。


「縛り配信は定期的にやると思いますけど、今日は通常枠です。普通に2層の魔物倒していきます」


〈りょ〜〉

〈通常枠把握〉

〈しゃーないかあ〉

〈どうせなら昨日初2層探索、今日縛り探索にしたらよかったのでは?〉


「でも昨日縛りプレイ思い付いちゃったから…」


〈行き当たりばったりかよ〉

〈見通しが甘い〉

〈思い付いちゃったなら仕方ねえよ〉

〈計画性×〉


「うるさい、行くぞ!今日も2層の魔物狩りだ!」




そうして魔物を狩り始めて1時間後。


「おおお!レベル上がったあ!」


〈5レベきたー!!!〉

〈5レベだああああ!〉

〈レベル上がんの早くね?一昨日4レベなったばっかでしょ?〉

〈やっぱり2層の方がレベルアップ早いんだな〉


「どれどれ、ステータス」


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:サン

レベル:5(+1)

体 力:10

攻撃力:10

防御力:10

素早さ:16

魔 力:0/0

 運 :24

S P :6(+6)

スキル:バウンド

ーーーーーーーーーーーーーー


「お、何かスキル覚えてる!」


〈うおおおおお!〉

〈スキルだあああああ!〉

〈初スキルおめ!〉

〈バウンドって何のスキルだ?〉

〈知らねえスキルだ〉

〈俺も知らんな。未発見スキルかもしれん〉


「え、未発見スキルってマジ?ちょっと自分でも検索するわ」


〈おいマジでヒットしないぞ〉

〈未発見スキルだったらちょっと凄くね?〉

〈かなり凄いべ〉

〈低レベの未発見スキルってまだ残ってたのか〉

〈これが運24の力か〉


「本当に未発見っぽい!こういう場合ってどうしたらいいんだ?とりあえず検証?」


〈そうしよう〉

〈どんな能力なんだろ?〉

〈名前的には何かしらが弾むんだろうけど〉

〈弾むもの…おっぱいかな?〉

〈自分が弾むか、他の物を弾ませる能力だろうな〉

〈今おっpの話した?〉

〈してない〉

〈物凄い弾力で生身で銃弾を弾き返す能力かもしれん〉

〈ゴム人間じゃん〉

〈とりあえずジャンプしてみて〉


「とりあえずジャンプ!」


スタッ。

普通に着地した。

特に何も起こらなかった。


(待てよ、常に弾力付与だったら日常生活が不便過ぎるな)


つまり、意識的にスキルを使う必要があるのでは?


「もっかい飛びます。で、バウンド!」


着地の瞬間にスキルを念じる。

ビッヨヨ〜〜〜ン!


「うわあああ!?」


軽く飛んだだけなのに1メートル以上も身体が浮いた。

ちょっとビビった。

何も念じずに着地すると普通に着地できた。


「なるほどね…自分の身体に弾性を付与する能力っぽい」


〈おー〉

〈何か楽しそう〉

〈男性を付与!?〉

〈生えるってこと!?〉

〈弾性だろ〉

〈この流れで弾性が男性に聞こえるやつ病院行った方がいいよ〉

〈つまり男性を付与してないサンちゃんはやはり女の子ってわけ!〉


「性転換能力じゃないです。どうでもいい話は捨て置くとして、足以外にも弾性付与できるのかな?」


しゃがんで地面に手を着けて念じる。

力を込めると沈んでいくような感覚があった。

そしてすぐに反発。


「おお!跳ねた!手でもいける!」


〈これマジでゴムゴムじゃね?〉

〈敵の攻撃も跳ね返せたらクソ強くないか?〉

〈まさかの物理攻撃無効スキル?〉

〈流石にないだろ。レベル5で覚えていいスキルじゃない〉

〈よしじゃあちょっと魔物に殴られに行こうぜ!〉


「2層の魔物だと怖いから1層に戻っていい?」


〈どーぞ〉

〈危なくない?〉

〈1層ならゴブリンとスライムしかいないしイケるイケる〉


もし攻撃を跳ね返せなかったら、2層の魔物だとワンチャン死ねる気がする。

1層なら…どうだろう、やっぱ危ないかな?


「あ、先に荷物で実験しよ。背中のリュックを投げて…バウンド!」


落下してきたリュックに伸ばした左腕が接触。

その瞬間にスキルを発動!

だが、リュックは左腕を痛打してそのまま地面に落ちた。


「…痛いっぴ…」


『バウンド』の効果は発動しなかった。

その後念のためもう一度試したが同様の結果になった。


〈ダメみたいですね〉

〈自分の動きにしか適用されないのか〉

〈ゴム人間にはなれんかあ〉

〈この能力使い道あんのか?〉

〈とりあえず大ジャンプできるようになったな〉

〈地形によっては活躍しそう〉

〈高いとこから落ちた時にバウンドで衝撃緩和とかできないか?〉

〈あー、落下ダメ回避か。移動、防御用のスキルなのかな?〉


「大ジャンプはできそう。大ジャンプの衝撃を緩和できるかどうかで落下ダメージ回避説も検証できそう。ただ失敗したら足の骨が折れそう」


可能かどうか、それにこの能力は任意発動だから発動のタイミングが遅れても骨折するだろう。


〈事故った時に備えて地上への階段近くで試す?〉


「そうですね。今から1層に戻って、地上への階段付近まで行くので、リスナーの皆さんは能力の使い道とかSPの配分とか考えといてください」


〈わかった〜〉

〈そういえばステ振り忘れてた〉

〈6ptか…どうしようね〉

〈まず運に6ポイント入れます〉

〈終わりじゃねーか〉

〈まずって何だよ〉


「(運に振るのは)ないです」




『バウンド』を使ってビヨンビヨン跳ねながら1層へ戻り、地上への階段付近までやってきた。

移動中に色々な案が出たが使えそうなのは以下の4つくらいだった。


・大ジャンプ

・落下ダメ回避

・弾力で止まった状態からトップスピードを出す

・全力疾走中に弾力で無理矢理方向転換


「じゃあまず大ジャンプから行きます」


まずは軽めにジャンプして、『バウンド』の力で徐々に高さを上げていく。

数回の施行で2メートル以上跳ぶことができた。


(着地時に…バウンド!)


着地の瞬間にスキルを発動すると、足が沈む感覚があり、また痛みは全くなかった。


「バウンド解除!」


跳ぶ前に『バウンド』を解除したところ、反発も消えたのか飛び上がることもなかった。


「落下ダメージ無効もいけました!」


〈おお〜〉

〈割と使い道ありそうだな〉


次は「弾力で止まった状態からトップスピードが出せるか」の検証をしたが、失敗した。

これは静止した状態からでは大して反発が生まれないからだと思われる。


〈1回ジャンプしたらいけんじゃね?〉


「やってみようか。せーの、うおわああ!」


小ジャンプからのスーパーダッシュは成功。


「ついでに方向転換!」


トップスピードから急に足を突っ張ってみる。

弾力を感じた後、私の身体は思いっきり後ろに飛んでいった。


「うおおおおおおおおうげっ!?」


そして地面に背中を思いっきりぶつけた。


「いったあ〜〜!!」


方向転換もできたが、もう少し練習が必要なようであった。

その後15分くらい『バウンド』の練習をして、ある程度制御できるようになったところで今日の配信は終了。

未発見スキルを引いたこともあって、チャンネル登録者数は結構伸びていた。



【現在のチャンネル登録者数:165人】

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