泣いて

「…………」


「それに、上には上がいるぜ? 俺の首を見てみ?」


 死神さんの首を見てみると、蝶のような蟹みたいな黒茶色なあざがあった。


「手型みたいですが」


「おう、手だからな」


「え……?」


「「死んでくれ」と言われて、母親に首を絞められたんだ」


「…………」


「いやっ何故泣く!? ここ笑うとこ!」


「なんか、すいません……。母に言われたくらいで、死のうとするなんて。私ちっぽけだなと思って」


「……うん、そういうとこ。お前優しい奴だから死んでほしくなくて。天寿を全うしてほしくて来たんだぜー?」


どうも」


「それにな、お前の気持ちがわかるだけじゃない。お前の事もよーく知っているぜー?」


 死神さんはポケットから手帳を取り出した。


みや流日るび、ピー歳」


「ピー歳って何ですか」


「誕生日早いから歳を取るの、もう嫌なんだろ? だから、プライバシーに配慮したわけ」


「それはどうも」


「続けるぜ? 高校時代、クラスに友達ができずスキー合宿を休む。唯一できた友達、漫画同好会の奴らが、スキーに自分が来ていない事を心配していたと、後で担任から聞き、家に帰ってこっそり泣く。可愛いとこあんじゃん」


「……うるさいです」


「社会人になると、最初の職場の店長に差別をされる。店長は痩せていて可愛い子が風邪を引くと、「大丈夫? 無理しないでね」と心配そうに言うが。自分がなると「体調管理がなっていない」と、怒った」


「まぁ、事実ですし。男性って痩せてる子が好きじゃないですか」


「え? 俺ぽちゃ専だけど?」


「……はい?」


「まぁ、そんなこんなあり、行く職場行く職場、色々言われ、働きたくないでござるが発動する」


「……だって、生きた心地しなかったんです」


「わかる、わかるぜー? そして、起きちまった、『死んでくれ事件』。この森を見つけたら俺と出会うと」


「……本当によく知っていますね」


「俺、この地区担当だからなー」

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